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第三のアルコール検知器「NDIR方式」とは?従来方式との違いを解説

現在国内のアルコール検知器市場は、半導体方式(半導体式ガスセンサー)と燃料電池方式(電気化学式センサー)の二方式の製品が大半を占めています。しかし今、第三の方式として「NDIR方式」がひそかな注目を集めているのをご存知でしょうか。本記事では、NDIR方式に詳しい旭化成エレクトロニクスのガスセンサー事業推進プロジェクトの皆さまに解説をいただきながら、NDIR方式のアルコール検知器の可能性について紐解いていきます。

第三のアルコール検知器「NDIR方式」とは?従来方式との違いを解説

2022年10月から開始とされていたアルコール検知器の使用義務化は「当面の間延期」とされていました。しかしその後「2023年12月1日より施行予定」として同年6月9日にパブリックコメントの募集が開始されています。

詳しくは【速報】アルコールチェック検知器の使用義務化が2023年12月1日に施行予定! -パブリックコメント募集開始-を御覧ください。

はじめに:アルコール検知器が注目されている理由・背景

道路交通法改正(道路交通法施行規則の改正)により、2022年4月1日より安全運転管理者の業務として、白ナンバー車両のアルコール検査が追加されました。その背景の一つとして、2021年6月に千葉県の八街市で小学生の列に飲酒運転をしていた白ナンバートラックが突っ込み、児童5人が死傷する忌々しい事故があります。これまで事業者におけるアルコールチェック義務は2011年からスタートしていますが、その義務の対象は有償で人や物を運ぶ事業者(タクシーやトラックなどの緑ナンバー)でしたが、八街市の事故をきっかけに、白ナンバー(自家用車)を5台以上もしくは定員11人以上の車を1台以上使う事業所に対しても、運転前の点呼・アルコールチェックを義務化する改正道路交通法施行規則の改正が2022年4月より順次施行されたのです。

さらに今後、運転の前後に運転者に対してアルコール検知器を使用した酒気帯びの確認(正常に機能するアルコール検知器を常備)が義務化されることとなり、多くの企業が対策に迫られています。検知器の需要が高まる中、世界的な半導体不足も解消の糸口が見えず、現在も品不足が続いています。

一般的なアルコール検知方式「半導体式」「燃料電池式」とは

現在、国内市場のアルコール検知器の多くが「半導体式」「燃料電池式」の検知方式を採用しています。まずはその二方式の特徴を紹介します。

詳しくは、目的によって使い分ける!アルコールチェッカーのタイプについてまとめてみたをご覧ください。

小型で利便性の高い「半導体式」

比較的安価に手に入れることができるアルコール検知器の多くは、「半導体式」を採用しています。半導体式は、センサー内に組み込まれている金属酸化物半導体に、呼気中に含まれている酸素が接触した時に生じる抵抗値の変化によって、ガス濃度を測定する仕組みになっています。センサー自体が小型で、アルコール濃度を測定する原理も、微量の電気を流して変動値を測定するだけと至って単純なため、測定時間が短く端末も安いのが特徴です。

ただし、キシリトールなどアルコール以外の物質にも反応する可能性があるため、周囲の状況に左右されやすいことがデメリットとなります。

緑ナンバー向けに多く採用されている「燃料電池式」

半導体式に比べて検知精度に優れているのが「燃料電池式」です。呼気中に含まれているアルコールガスを文字通り燃料として電気を発生させ、その値を測定することでアルコールの有無を判断しています。アルコールガスがないと全く反応しないため、アルコール以外のガスに反応しにくく、周囲の状況にあまり影響されないのが特徴です。

ただし、検知原理がやや複雑なため、半導体式ガスセンサーよりセンサーの反応時間が遅く、測定結果が出るまでやや時間がかかってしまうこと、そして販売価格が若干ながら高価でメンテンナンスにもコストを要するのがデメリットです。

「NDIR方式」とは?CO2センサーとしての実績多数

これらの2つの方式に対し、今回紹介するのが「NDIR方式」です。ここからは、NDIR方式に詳しい、旭化成エレクトロニクスのガスセンサー事業推進プロジェクトの皆さまに詳細を伺いながら、解説します。

旭化成エレクトロニクス社:「NDIR方式というのは、一般的には聞きなれない名称ですが、正式にはNon-Dispersive InfraRedの略称で日本語では「非分散型赤外線吸収法」と訳されています。NDIR方式とは、ガス分子が特定の波長の赤外線を吸収するという特性を利用した方式です。CO2濃度を測るCO2センサーで多く採用実績のある方式で、コロナ禍には室内の換気状況(CO2濃度)を測る役目として、多く活躍しています。

原理を簡単に説明すると、製品(筐体)内に組み込まれているランプ(赤外線光源)から発せられた赤外線が筐体内に充満しているガスを通って赤外線センサーに届きます。アルコール検知器として使用する場合、アルコール検知に適切な光源を使用します。ガスは人が吹きかける息(呼気)となります。呼気にアルコールが含まれている場合は、アルコールが赤外線を吸収するため、光が減退されて、赤外線センサーに到達します。結果的に減退した赤外線量を計測することで、アルコール濃度を計測するという仕組みになります。」

NDIR方式についての詳しい説明はこちらをご覧ください。(CO2センサーの例です)

「NDIR方式」のメリット・デメリット

「半導体式」と「燃料電池式」に比べて、NDIR方式はどのような点が優れているのでしょうか。ここでは一般的な性能比較をもとにメリット・デメリットを上げていきます。

メリット1:反応時間の早さ

反応時間とは、実際に息を吹いて検知するまでの時間を指します。一般的にNDIR方式は、適切な通気構造設計により高速な検知(10秒以内)が可能です。また、呼気中のアルコール成分の有無にかかわらず、短い待ち時間で繰り返し測定が行えます。

メリット2:センサー寿命が長い

半導体式や燃料電池式に比べ、NDIR方式はセンサー寿命が長いとされています。前述の二つの方式はどちらもセンサー素子自体に化学変化を起こすため、例えば強いアルコールに反応した場合などは、寿命がどんどんと短くなってしまいます。それに比べてNDIR方式は、センサー自体に化学反応を起こさないため、センサー寿命を長く保つことができるのです。

メリット3:干渉ガスの影響を受けにくい

干渉ガスとは、本来アルコールで反応すべきところで、違う物質で反応してしまうガスを指します。例えば、半導体式はキシリトールやコーヒーなども”検知”してしまう可能性があるなど、日常の中でも状況に左右されやすいと言われています。NDIR方式では、アルコールに含まれるガス分子が特定の波長の赤外線を吸収するという特徴を利用しているため、同様の干渉は受けにくいとされています。

メリット4:検知精度・再現性が高い

製造工程や実際の作り込みに依存度が高いため、一概に良し悪しを判断することは難しいですが、湿度などの外部の環境要因を補正することができるため、原理的にNDIR方式の精度は高くなります。

さらに、「再現性という観点では、NDIR方式は非常に高いです。ほかの二つの方式は化学物質の変化によって値の精度にバラつきが出てしまうので、連続しての利用には注意が必要ですが、NDIR方式ではセンサー自体に化学変化を行わないという点から、アルコールを検知した後、次に使うまでの復帰も非常に早くなります」(旭化成エレクトロニクス)。

いくつかデメリットも

コストについては、NDIR方式は光学的な素材の価格が高いため、割高となることが予想されます。しかし、「NDIR方式の普及が進めば、競争力を高める余地はあるだろう」という分析も。

また、製品の大きさについても、ほかの二つの方式に比べて大きい傾向があるとされています。精度良く検知するためには筐体内の光の長さ(光路)を保つ必要があるため、大きくなってしまうのです。

NDIR方式のアルコール検知器は導入できる?

ここまで新たな方式として「NDIR方式」のアルコール検知について紹介をしてきましたが、実際にNDIR方式を利用したアルコールチェッカーは存在するのでしょうか。

旭化成エレクトロニクス社によると「欧州の鉄道やバスの運行会社では既に使用実績がある」とのことですが、残念ながら日本ではまだNDIR方式のアルコール検知器は導入・販売されていません。(※2022年7月時点)

しかし足元では、半導体不足の影響もあり、検知器不足が続いています。アルコールチェック義務化開始以降、多くの企業が”機器を揃えること”に注力して来ましたが、今後はより長期的な目線で、機器の選定や体制を整えていくことが、ますます重要視されるでしょう。

今回ご紹介したNDIR方式のような新たな方式も選択肢の一つとして捉えながら、まずは適切にアルコールチェックの運用をしていくことが大切ではないでしょうか。

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