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新型コロナウイルスの感染拡大によって国内外の物流はどう変化したのか

未だ衰えを見せることがなく、日本、そして世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。飲食業界、旅行業界などをはじめ、多くの業界が大きな打撃をうけ、そして長引く状況に疲弊しています。そんな中、人々が生活する上で欠かせない物流はどのような状況をむかえているのでしょうか。

本記事では国内外、両方の物流に焦点を当てて解説します。

新型コロナウイルスの感染拡大によって国内外の物流はどう変化したのか

コロナ禍における物流 国内編

日本国内の物流関連企業は、コロナを機に二極化を見せているようです。

活況を見せた宅配業

2020年、コロナの感染が広がり始めた頃、ネットでデマが広がり、マスクやペーパー類、消毒用のアルコールスプレーなど、必要な物資が手に入らない状況が発生。欲しい時に欲しいものを運んでくれる物流・配送業者は、人々の生活に欠かせないエッセンシャルワーカーとしてその重要性が改めて理解され、コロナの感染拡大が続く現在においてもその需要は高まりを見せています。

緊急事態宣言の発令によって外出自粛が言い渡されたことで、ネットショッピングの利用者が急増し、EC市場が活況に。宅配大手のヤマトホールディングスが1月7日に発表した2020年4月〜12月期の累計小口貨物の取り扱い実績は、前年同期比15%増加となる、15億9,922万個ほどになりました。運送業界では人手不足が叫ばれてはいるものの、在宅消費が増加したことでユーザーの元へ直接荷物をお届けするB2Cの観点では売り上げが増加しました。

B2B向けの物流は勢いが止まる…?

相反して、食品類をスーパーへ配送したり、生活雑貨や衣類をデパートに届けたり、輸入品を輸送する大型トラックによるB2Bの配送については、時短営業や休店などによって成長が鈍化。2019年10月の消費増税によって荷動きが悪化していたタイミングでコロナが直撃したため、倉庫は回転率が下がり、全国的に空きが不足した状態に。しかし、2020年後半より、少しずつ回復を見せています。

注目すべきは「B2B向けコールドチェーン」「メディカル物流」

コールドチェーンとは、食品などを冷蔵・冷凍した状態で配送する物流方法のひとつです。鮮度が重要視される野菜・肉・魚などの生鮮商品をはじめ、高度な品質管理が求められる医薬品、化学品など、コロナによる“巣ごもり”需要とワクチン開発の関係により需要が増加し、今後も右肩上がりになると考えられるでしょう。

コロナによって浮き彫りになった物流業界の課題

EC市場の拡大とともに物流業界では慢性的な人手不足による労働環境の悪化が課題になっていました。とくに昨今では細かな時間や送付先住所の指定などでラストワンマイルの配送が複雑化し、ますますドライバーへの負担が大きくなっています。迅速かつ、物流を滞らせないためにも早急な改善策が必要とされていた中、コロナが直撃。「届けるべきモノが増えているのにドライバーが足りない」という課題がさらに強く押し出されました。

他業界と比べ、物流業界は今までIT化、システム化の遅れをとっていましたが、人手不足を補いスムーズな配送を実現するには、ハンコが不要な伝票の電子化、対面を避けたオペレーション、リモートでの指示出しなど、業務の一部をシステム化し、効率をあげることが必須となっています。

事務作業による負担軽減

RPA、車両管理システムなど、ITシステムを活用した事務的な作業の自動化とペーパーレス

走行ルートの可視化によるオペレーション改善

動態管理システムなど、テレマティクスの活用によるスムーズなオペレーション実現、安全と品質管理の両立  

物流オペレーションのサポート

ロボティクスなどの導入で人的な作業を軽減

ラストワンマイルの改善

荷主と配送ドライバーのマッチングプラットフォームを有効活用し、再配達など無駄を減らす

ITツールや先進技術の導入によるDXをいち早く進めることが、人手不足の改善策となり、成長のカギになることは明らかだと言えるでしょう。

コロナ禍における物流 国外編

2020年は、コロナウイルスの蔓延によって国内のみならず、海外では厳しい入国制限がかかり

大幅に移動が制限されました。ボーダーレス社会が一変、各々が国単位でコロナに立ち向かうためにさまざまな防止策を発令し、ワクチン開発などに力を注ぎ始めました。年々、活況を見せていたインバウンド需要も激減し、外から内へ、視点が変わったように感じる方も少なくはないかもしれません。

WTOは2020年第2四半期(4月〜6月)の世界貿易量は前期比で14%減、金額では21%減隣、世界金融危機下の2009年第1四半期(1〜3月)の落ち込み(同10.2%減)を大幅に超える水準になったと発表。2020年4月前後は工場が一時的に稼働を止めるなど、製造業にも大きな影響がありました。それからおよそ1年。未だ人の動きはわずかなものの、物流は再び動き始めています。

日本海事センターによると、2020年10月のアジア18カ国・地域発米国向けの往航コンテナ貨物輸送量は前年同月比から23%増の193.6万TEU(twenty-foot equivalent unit:20フィートで換算したコンテナ個数を指す単位)と、過去最高を更新しました。これは全長20フィート(およそ6m)の小型コンテナに換算すると194万個にもなります。生活必需品などの需要、そして同時期は米国でのクリスマス商戦向けの商品が中国や香港などで大量に買い付け、出荷されることで荷動きを一気に押し上げました。

また、アジアとヨーロッパ間の欧州航路については中国発着の荷動きが拡大し、日本海事センターがCTS統計をもとにまとめたコンテナ貨物輸送量は、前年同月比8%増の146.1万TEUとなり、2020年9月単月で過去最高を記録。物流は少しずつ、活発さを取り戻そうとしているようです。

まとめ:コロナを機に変わる物流

移動ができなくなったことで大きな影響を受けた物流業界。人々の移動距離が縮小したことでJR西日本は新幹線を活用した荷物輸送を事業化したり、巣ごもり需要でフードデリバリーの新規事業者が続々と参入したりするなど、新たなサービスが生まれました。また、国内外の市場回復を受け、自動車をはじめとする製造業が持ち直しを見せています。

しかし、コロナのような世界的危機が再び訪れても対応できるような体制を作るためには、人手不足を補い、スムーズな物流システムを実現するITの力が欠かせません。今後さらなる発展を遂げるためには、早急なデジタル化が必須だと言えるでしょう。

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