トラックや重機、商用車の売買はどう変化した?トラック王国が見た、コロナ禍における業界の動向
この半年間、「コロナ」という文字を見ない日はないと言ってもいいほど、私たちの生活に大きな影響を及ぼした新型コロナ。物流業界では、売り上げと稼働が急増した業種と、輸送量が一気に減った業種とが二極化するなど、明暗が大きく分かれました。
今回はトラックや重機など、商用車をメインに中古車売買を手がける中古車販売サイト「トラック王国」を運営するNentrysの西田さまに、コロナ前後における中古車売買の変化についてインタビューを実施。トラック王国がコロナ禍で立ち会った、業界の動向や運送業の課題とは…?
[インタビューイー]
ネントリーズ株式会社 ICTソリューション部 部長 西田慎次様
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中央集約型でクオリティを維持する
まず、トラック王国の事業内容について教えてください。
トラック王国は、中古トラックやクレーンなどの商用車をメインに買取と販売を行っている企業です。
買取(仕入れ)はエンドユーザーや事業者オークション、協力店から委託を受けてトラック王国のWebサイトに掲載するという、3つの方法で行っています。
お客様はどのような理由で中古トラックを売却されるのでしょうか?
一番多いのは、古くなったからという理由です。あとは、資金繰りが厳しくなってきたタイミングや、比較的新しくても車両入れ替えのために売却したいというケースもあり、売却理由は多岐に渡ります。
購入については、トラックだと運送会社などの物流系がもっとも多く、重機であれば建設業、旅館やホテルであれば送迎用バス。また、パッカー車というゴミの収集車を購入される自治体もいらっしゃいます。商用車は「仕事で使う車両」ですので、非常に広い業種のお客様よりお引き合いを頂戴しております
中古車売買はマーケットも大きく、競合他社も多数いますが、他社と差別化できるトラック王国の強みについて教えていただけますか。
弊社では現在、5カ所の展示場と1カ所の出張所を構えています。展示場では販売している車両を展示して、お客様からのお問い合わせや相談に関しては、すべて東京のオフィスで対応しています。東京で受けた売買の要望を展示場や出張所と連携して業務する“中央集約型”なので、意思決定や対応のクオリティを一定レベルで担保できる。それが他社にはない特徴ですね。判断をそれぞれの支店に任せてしまうと、意思決定の基準にバラ付きが出てしまいますが、中央集約型だとクオリティにばらつきがでることはありません。
また、お客様より頂戴したクレームや対応事例も中央でケースとして溜め、対策を展開できるのでアップデートの精度と速度も強みと考えています。
コロナ禍における中古トラック市場
コロナの影響で中古トラックの売買市場ではどのような変化がございましたか?
業界によって濃淡が色濃く出ています。ホテル・旅館など、バスを利用する観光系は購入がビタっと止まり、「資金を作るために売りたい」という売却の問い合わせが増えました。一方で、ステイホームによってネットショッピングが増加したことから、物流関係、とくに運送系の車両は増車の希望が増加。
中古車業界では業者オークションの成約率が一気に落ちました。一時はそれこそリーマンショック以上のインパクトがありましたが、現在はコロナ前くらいに戻りつつあります。今回のコロナによって、動きが大きく鈍化している業界と活発な業界で、二極化が強く出ています
観光系のバスの売れ行きがストップしていますが、バスの価格は下がりましたか?
先にお伝えしておきますが、弊社は小さなマイクロバスを中心に取り扱っているため、大型観光バスの取り扱いはほんの一部です。
そもそもバスは相場が動きやすく、仕様によってニーズが細分化されるため、相場が動きやすいという特徴があります。そうした傾向もあり、コロナ禍は全体的に相場が荒れました。ただ、中古バスの売値は下がっていません。単純に安くしてしまうと赤字になりますから、下止まりの状態です。
他にコロナの影響を受けていることは?
トラック王国のサイトは中古車売買のプラットフォームとして運営していますので、他社(協力店様)で取り扱っているクルマも中にはありますが、買取は基本的に即金でお支払いをしています。そうした強みを活かし、新たなサービスを始めました。
それが売却したい車両を掲載し、買取先が見つかるまでお客様が利用できるサービスです。問い合わせを受けて商談が進んだら、そのあとは全て私たちが対応し、契約が完了次第、売却いただくのです。これがお客様から大変好評でして。
たとえば、私が現在乗っているトラックを売却前提でトラック王国に掲載し、契約が確定した段階でトラックを売る、ということでしょうか?
そうです。そのトラックは契約が確定する寸前までご利用いただけます。
それは非常に便利ですね。
もっと前から始めたいと考えていましたが、懸念材料が多くてなかなか実現までいかなかったんです。しかしコロナの影響で買取事業の勢いが弱まったため、社員で思案を重ね、リスクの少ない方法で実施にまでこぎつけました。
社内では一般の方から委託を受けるので、「一般委託サービス」と呼んでいます。現在は、売却する方に買取か委託かを選んでいただいています。たとえば、「今の相場だと150万円ほどだけど、できれば200万円で売りたい」という場合、トラック王国に200万で掲載をして、購入希望者が出たら連絡するという流れです。2通りの選択ができるので、お客様からの反応は非常に良いですね。
一般委託の買取は少なからずともリスクがあるので、私たちのように販売事業も展開していないとトラブルの際にお客様同士でもめてしまう。そこをプロである私たちが間に入り、話を進めることでスムーズな交渉が可能になるのです。中古車の販売事業社でも、このような一般委託を精力的に展開している企業はほとんど見かけませんね。
ちなみに、どのようなリスクがあるのでしょうか?
売れそうなタイミングで車が事故に遭遇したとか、使用中に擦ってキズがついてしまったとかですね。
そのようなリスクにどう対応されているのでしょう?
このサービスは売主と買主が直接、交渉するのではなく、私たちが介在することで品質を担保できることが強み。ですので、事故やキズによって取引そのものが0になる可能性はありますが、トラック王国で所有する在庫から別の車を提案するなど、別の形でフォローができるんです。ここも私たちの大きな強みですね。
たしかに、間に御社のような企業が入ってないとトラブルが多発しますね。
そうですね。とくに車両は名義変更や事故歴など、情報も多く手続きも煩雑です。しかし、私たちは買取・売買経験が豊富にございますから、お客様の懸念点も難なく解消することができます。
在庫を多く抱えていらっしゃるので、希望に近い車種が提案できるのも強いですよね。
そうなんです。弊社および協力店様の豊富な在庫から、「ご希望に近いこちらの車種ではいかがでしょうか」と提案もできますし、希望を引き出して新たな提案も可能です。
トラックの進化
数年前と比べて、乗用車は自動ブレーキや運転サポートの技術が進歩していると、ニュースやテレビCMを見ていても感じます。トラックや商用車はどのように進化しているのでしょうか?
そうですね、乗用車同様、トラックや商用車も大きく進化を遂げています。
トラックは大手4社が政府と連携して自動運転や併走運転の取り組みを進めています。たとえば、有人トラックの間に無人トラックを挟んだ隊列走行の実証実験を行ったり、事故削減を目的とした機能の開発を進めたり。重機では、コマツはスマートコンストラクションという取り組みを進めています。これはドローンを飛ばして現場の地形の3Dマップを作り、そのデータを重機と連携して、労働力不足や安全な操作など現場の負担を軽くするというもの。たとえば、現場経験が少ない方でも、レバーを押すだけでコンピューターが穴を掘る角度を調整してくれるとか。
トラック王国では、そうした先進的な商用車も扱われているのでしょうか?
このようなハイテクなクルマはまだ中古車市場には現れていませんね。先進技術が搭載された車両は大手運送会社で導入されるケースが多く、そうした企業は大抵、ディーラーと直接お取引されていますし。私たちは中小企業を対象としているため、自動運転やドローンを利用している企業はまだいらっしゃいませんし、商用車の中古市場にこうしたテクノロジーの波がやってくるのはまだ先のことでしょうね。
ネット通販の普及拡大で個人向けの荷物が増え、配送業、物流業では人手不足を中心とした「物流クライシス」が社会問題になっています。この課題に対して、何か取り組まれていることはございますか?
トラック王国のサイトを商用車のプラットフォームにしていこうと考えています。物流業や建設業には、人手不足や空車とのマッチングなど、課題が山積しています。そうした課題をトラック王国のサイトで解決できるようにしたいのです。人材や求荷求車のマッチングなど、“つなげる”ことをテーマにソリューションを展開していきたいと思っています。すでにテストマーケティングが始まっている段階ですので、今後にご期待ください!
トラックの売買を通じて物流会社様とのお付き合いもありますので、御社はマーケットの状況もお詳しいですし、今まで培ってきたネットワークも活用できます。そのため、スムーズに事業が立ちあがりそうです。
今は、トラックの売買がメイン事業ですが、お客様からの声から集まった悩みごとを解決すべく、プラットフォーム化に向けた事業展開を推進しています。つねにアンテナを立てて、潜在化している需要や要望などを拾い上げながら挑戦を続けていきたいですね。
日頃から運送業の方々の声を直接聞けるというのは御社の強みですね。
そうですね。5カ所の展示場を経営していてよかったと感じています。
中古商用車のプラットフォームを進化させるには、コラボが必須
現在は、物流や建設を支えるトラックの中古車の売買というビジネスにフォーカスされていますが、今後どのような展開をお考えですか?
国内外で大きく2つの展開を考えています。
国内では、今から3〜5年の時間軸でプラットフォームビジネスを構築し、様々な課題を解決できるサービスを生み出していきたいと考えています。最初はテストマーケティングから始め、1つの事業として成立するように調整していければと。
海外では、すでに実店舗を構えている東アフリカのタンザニアから規模を拡大していくこと。中古車の取引自体は全世界を見ても成長していますが、パイプが細いのが難点です。そのため、タンザニアで深く、太く、サービスを根付かせ、販売を切り口にパイプを太くしていければと思います。
すでにアフリカで中古車販売を行っている企業が持つ流通チャネルを利用せず、ゼロから開拓されるということですか?
そうですね。中古の乗用車は海外のマーケットへすでに参入している企業が多くいますが、商用車であればまだ参入の余地があるんじゃないかと思っていて。最終的に目指すのは、「トラック王国に行けば、国内外問わずに商用車に関する悩み事を全て解決できる」ことです。
非常に壮大な目標ですが、御社なら実現できそうですね。最後になりますが、スマートドライブとのコラボレーションの可能性について伺えますか?
今後、私たちがプラットフォームビジネスを拡張していくうえで、協業やコラボレーションは欠かせないことです。私たちが独自に開発することもあるでしょうが、OEMやなにかのパッケージなど、積極的に触手を伸ばしていきたいと考えています。スマートドライブとのコラボで「SmartDrive for トラック王国」というサービスが立ち上がるかもしれないし、トラック王国に寄せられる困りごとが車両管理であれば、SmartDrive Fleetを紹介することもできるでしょう。または、御社が悩み事を解決するためのフロントマンになるとか。可能性が大きく広がっていきそうです。
最後に、読者に向けて一言お願いします。
中古商用車の売買に関しては、必ずご安心をいただける取引をさせていただきます。もし、売買に関する困りごとがあればトラック王国を思い出していただければ幸いです。あわせて、商用車にまつわる全ての課題を解決したいと思っていますので、困りごとがあればお気軽に相談くださいませ。
「世界中で働く人々の 笑顔 と 未来 を繋げよう」
このビジョンを掲げ、これからも挑戦を続けるNentrysにどうかご期待ください。