2017年上半期トラック事故とその傾向
国土交通省は平成30年まで、交通事故による死者数半減、交通事故件数半減、飲酒運転ゼロを目標とした「事業用自動車総合安全プラン2009」を策定し、官民一体となって目標達成に向けた各種交通事故防止対策に取り組んでいます。
2017年度の前半の事故件数と事故の原因、そして2017年上半期の事故の傾向からはどのような対策を行うべきかも見ていきましょう。
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2017年前半期における交通事故の実態
2017年1〜6月における死亡交通事故件数は119件でした。事故を発生地域別で見ると、東京都、愛知県、三重県がそれぞれ8件、次いで大阪府が7件、北海道が6件と続きます。道路区別では高速道路以外の一般道路での事故が98件と最も多く82.4%を、車両区分では大型トラックが72件、中型トラックが34件、準中型トラックが9件。
最も死亡事故が多発した時間帯は14時〜16時で15件。次いで2時〜4時の深夜帯、10時〜12時の午前中がそれぞれ14件でした。また、22時〜6時の深夜早朝の時間帯は全体の3割を占めています。道路の見通しの悪さや疲労や眠気なども相まって、事故率が高まる時間となるのかもしれません。危険認知速度別では60㎞/h以下が29件で最多、次いで50㎞/h以下が19件とさほどスピードが上がっている状態ではないようですが…こうした事故の原因はどこにあるのでしょうか?
運送業界における交通事故の主な原因
年齢層別で死亡事故のデータを見ていくと、45-49歳が最も多く24件(20.2%)、次いで「50-54歳」21件(17.6%)、「40-44歳」18件(15.1%)と続いている。トータルして40代が42件(35.3%)、60歳以上は17件(14.3%)でした。こうして見てみると、トラックドライバーの年齢層が全体的に高いことがなんとなくわかるのではないでしょうか。
総務省の労働力調査によれば、道路貨物運送業で「10〜20歳代」の占める割合が2005年の44.0%から10年後の2015年には29.1%と激減し、逆に「60歳代」は9.6%から15.1%に増えています。物流業界の人手不足という問題から、国土交通省はトラック産業の活性化対策として若年労働者雇用拡大を促す一方で高齢者を活用する対策も打ち出しているのです。
また「道路運送法及び貨物自動車運送事業法の改正」の改正により、2017年1月から事業用自動車(バス、 タクシー、トラック)の各事業者は「ドライバーが疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で運転することを防止するため、必要な医学的知見に基づく措置を講じる」ことを義務づけられました。国土交通省は自動車事故報告規則第2条により「運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなったもの」を健康起因事故として報告することを求めています。
この法案改正の背景には、ドライバーの健康状態に起因する事故の発生の増加が挙げられます。運送業界においては、ドライバー不足による長時間労働や高齢のドライバー問題が特に指摘されていますが、こうした事故防止のためには日頃からドライバーの健康を維持し健康起因による事故を発生させないこと、健康の変化や運転状況での異変に迅速に気づくことが事業者にとって重要なことと言えるでしょう。
健康起因事故の要因として一番多いのは脳血管疾患が全体の 23%、次に心疾患が全体の 21%を占めるが、 ドライバーが死亡したケースでは、脳血管疾患・心疾患で全体の約 8 割を占めています。
ドライバーは不規則な勤務体系や恒常的な人手不足を背景とした長時間労働などにより、運動不足や 生活習慣が不規則になりがちです。このような生活習慣は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を招きやすく、脳血管疾患や心疾患の発症につながることもなりかねません。
これから年末年始に向け運送業界は繁忙期に向かいます。ますます過密化するスケジュールに対して、どんな対策を行えばいいでしょうか。
事故を防いで自己を守れ。ドライバーの心得
近年の事故の原因と傾向により、日本トラック協会が声を大にして提唱しているドライバーの心得です。改めて見直してみましょう。
・スマホ操作によるわき見運転は全面禁止へ
トラック追突による死亡事故の原因がわき見や居眠り運転によるもの。中でもながらスマホは非常に危険。メッセージは音声が出るタイプに、またはハンズフリーに設定し、乗務中はスマホの操作はしないようにしましょう。「少しぐらい大丈夫だろう」その過信が事故の元になります。
・渋滞を見据えた安全運転を行いましょう
高速では役7割が追突事故。停車中の車に追突してしまった!なんてことも。運行管理者とドライバーが連携し、事前に渋滞を避けるルートで余裕を持った運行を。
・適度な緊張感を持ち、自己管理の徹底を!
運転中に眠くなったらすぐ休憩や仮眠をとりましょう。高速道に乗ったら1時間以内に休憩をとって緊張と疲労を緩和させます。もし渋滞で遅延したとしても決して焦らず、管理者に報告をしながら業務を遂行します。事業者側はドライバーの負担とならないように、健康や疲労状態を配慮した余裕のある運行計画を策定しコミュニケーションを取りやすい環境を作りましょう。
・運転中は集中しよう
走行中はしっかりハンドルを握り、スマホや伝票、ルートマップを手にしないこと。運転の妨げにならないよう、転がったり落下しそうな私物(ペットボトルやノート、ペンなど)は固定する、またはカバンなどにしまいましょう。助手席や足元に荷物は置かないようにするのがベストです。
・車内では視界を遮らない環境を作る
助手席下の窓、サイドミラー、アンダーミラーなど死角がないように、それぞれ調整しましょう。目視で外部を適切に確認できる状況がベスト。目線の高さも維持しましょう。
・常に状況の変化を予測しながら走行を
制限速度と安全な走行ができる速度を厳守し、適切な車間距離を保ちましょう。強めのカーブや豪雨や豪雪など、悪天候や見通しの悪い場所では細心の注意を払って走行しましょう。停止時は不意な発信を防ぐべくサイドブレーキを引きます。また、すぐ止まれるように足はブレーキペダルの上に置きましょう。常に危険に備えておくためです。
交通事故を防ぐためにツールを有効活用する
事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会が事業用自動車総合安全プラン2020としてトラック事故削減目標に掲げているのは、①平成32年までに死者数200人以下、②平成32年までに人身事故12,500件以下、③飲酒運転ゼロ。
運送業界の現状を鑑みて、事故の予防として高齢運転者の特徴を踏まえた事故防止対策や適性診断の徹底、及び受診結果に基づく指導、職場環境の整備等をしっかりと行いましょう。長時間労働の負担に加え、運行スケジ ュールを厳守しなければならないという心理的なプレッシャーなどから、ドライバーに精神的な負担がないかも合わせて考えるべきかもしれません。注意喚起も大事なことですが、実際に走行している際の情報はドライバー以外はわからないものです。そこで役立つのがリアルタイムでドライバーの動向を知らせて管理ができるツールやサービス。もちろんデジタコやドラレコは非常に優れたパートナーになります。
東京海上日動火災保険は10月から、トラックドライバーら長時間運転する人の事故を防ぐための新たなサービスを始めました。専用の機器で計測した運転中のドライバーの心拍数や、運転する様子を録画した映像を組み合わせ、ドライバーの疲労や眠気などを分析して問題点を抽出し、運送業者にドライバーの勤務時間やシフトなどを改善するきっかけにするよう促すというサービスです。心拍数を計測する機器は10万円超で提供予定ですが、新規で自動車保険を契約するなどの条件を満たせば無料で受けられるそう。
トラックやタクシーに心拍数を計測する機器を埋め込んだシートを運転席に設置し、運転中のドライバーの心拍数を常時記録、車内外の様子を録画するドライブレコーダーも取り付けて運転動作や表情を録画します。
ドライバーの勤務後に心拍数のデータと映像を回収して東京海上などが解析し、運転手の疲労度や眠気の有無、緊張度合いを割り出し事故につながりそうな場面がなかったかを検証すると言います。運転手の勤務時間や走行ルートの変更など、疲労がたまりにくくなるような対策の検討を促すのが狙い。計測したデータは同業他社の状況とも比較できるため、業界全体の安全対策の底上げにもつながるかもしれません。
もっと手軽に、すぐ始められる安全対策
弊社スマートドライブが開発・提供しているクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」では、GPSによる車両管理から細かな安全運転の支援までを丸ごとサポートするサービス。デジタコ・ドラレコをセットで導入すると数万〜十数万円かかりますが、SmartDrive Fleetのようなクラウドサービスはデバイスも後付けで工事いらず、かつ値段も比較的安価な月額利用料で使えるため導入しやすいという強みがあります。また、情報がリアルタイムであることでタイムリーに各ドライバーに連絡・指示を送れたり、彼らの労働時間なども自動で記録してくれるため抜け漏れ防止や日報を自動化できたりなどのメリットもあります。また、労働時間が過剰になっている(なりそうな)ドライバーがいれば自動でアラートを出してくれたりなど、設定次第で様々な管理業務を自動化できます。
また、安全運転支援においては、「急加速」「急ブレーキ」「急ハンドル」の検知のみだけでなく、各挙動において車体にどのようなGがかかったかをビジュアル化してくれるので、運転スキルを具体的に改善することにも役立ちます。また、普段は問題ないドライバーが急に運転が荒れてきた際には、そのドライバーの体調がすぐれないのではないかなど、深刻な事態になりえる兆候を早期にキャッチして対応するためのサポートもします。こういった働きかけによって、会社全体としての事故削減施策や安全管理の徹底も行っていくことが可能になります。