社用車(営業車)を私的利用する場合の注意点
業務用途で使用することが前提の社用車。ただ、それを福利厚生の一環として社員に貸与している会社があります。
社用車(営業車)を業務以外で使用する場合、たとえば事故が起こった際の扱いなどあらかじめて把握しておかないと後々トラブルの原因になることも。そこで今回は社用車(営業車)を私的利用する際のポイントを紹介します。
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目次
社用車とは
社用車とは、会社が業務で使用したり、移動をしたりする際に使用するクルマ全般の総称です。
客先訪問などの外回りに利用したり、役員の送り迎えをしたり、荷物を運搬したり、さまざまな用途・シーンによって車種などが異なります。また、官公庁や地方公共団体が使用する車両は「公用車」と言われています。
社用車に多いのは営業車
社用車の中でも一番多用されているのが営業車です。道路交通法においては、自動車運送事業者が事業に使用するクルマを営業車としていますが、運送事業以外の企業においても、外回りをする際に利用する社用車を営業車とされているため、全体を通して営業車が多いということです。
営業車としてよく利用されているのはおもに次のタイプ。
●荷物を運ぶ用途に多い、ハイエースバンやライトバン
荷物を乗せてサクサク走れるため使い勝手が良いとして選ばれるのがバンタイプ。
●客先への移動に!セダンタイプ
スマートな見た目、低価格であることを理由に移動のアシとして選ばれるのがセダンタイプ。
●役員移動用は乗り心地の良い高級車
社長の移動時には頑丈で安全性能が高く、乗り心地の良いタイプが選ばれるよう。室内が広く、後部座席がゆったりとしたセダンタイプやパワースライドドアが標準装備され、乗降性に優れたミニバンも人気です。
そのほか、商用車・営業車のオススメについてはこちらの記事をご参考ください。
「社用車」は経費として計上できる
10万円以上の価値があり、一年以上使用が可能な資産を購入した場合、固定資産として処理ができます。そのため法人企業や個人事業主が事業で使用することを目的に法人名義でクルマを購入した場合、固定資産として経費に計上できるのです。購入の際にかかった費用は、「減価償却費(車の法定耐用年数によって、分割して計上する)」として、毎年、経費に上げることができますし、リースの場合はリース費用を計上し、ローンで支払う場合は減価償却費と利息を計上できます。
クルマ本体以外にも、社用車であればガソリン代、自動車保険料、自動車税、自動車税環境性能割、車庫証明、ETC料金、車検費用、付属品などにかかった料金も経費計上が可能です。
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社用車は利用する際のルールを決めて運用する
社有車は、あくまで業務の中で使用するという目的のもと、会社が保有・管理するものです。労働基準法では、次に該当する場合、就業規則を設け、提出するよう定められています。ガソリン代や駐車場代なども基本的に会社が支払うコストであるため、長く安全に使用できるよう、きちんとマナーやルールを設け、正しく運用しましょう。
第九章 就業規則(作成及び届け出の義務)第八十九条
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
六
安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項十
全各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
社用車を業務で日常的に使用するのであれば、必ず社内規定に利用に関するルールを記載し、周知徹底させましょう。
私的利用自体は違法?
社用車の私的利用は違法ではありません。会社の就業規則や規定に定められたルールが基本となります。
最近では福利厚生の一環として、社用車の私的利用を認めている企業もありますが、万が一の事故に備えて、許可する場合は事故時の責任や処分などに関して、より厳密なルールを策定する必要がありますし、私的利用を認めていないのに無断で使用した際の罰則などについても必ず明記しましょう。
「社内規定を設ける」には
社用車を業務で使用している企業は必ず社内規定を設け、誰がどのように管理するのか、管理者や担当者を決めて運用しましょう。
●運用ルールの策定時に盛り込みたい項目例●
- 社用車を使用する従業員には運転免許証、またはそのコピーの提出(無免許運転の防止)
- その日に運転した従業員は日報を記録し、提出(道路交通法施行規則にもとづく義務)
- 故障やトラブルなど、問題が発生した際の連絡先とフロー
- 業務利用と業務利用外の範囲(業務外で使用した時の罰則なども含む)
- 災害などの緊急時についての運用
- 私用を認める際は、どこからどこまでを私用の範囲とするか、従業員と会社の負担や責任について など
インターネット上でも、無料でダウンロード可能な社用車の運用規定がありますので、たたき台となるものを見つけ、自社に必須の項目を追加したり、内容を変更したりして作成してください。
そもそも、社用車は通勤に利用できるのか
外回りが多い営業スタッフの場合、社用車で直行直帰をした方が負担を軽減できるとのことで通勤時の利用を認めている企業も多くあります。また、最近ではコロナ禍での感染リスクを考慮し、今までは許可していなかったところ、社用車を一人に一台貸与し、直行直帰を認める会社も増えたようです。
通勤時における社用車の利用は法的に禁じられてはいませんので、会社が許可をすれば基本的に使用可能です。通勤途中の事故やトラブルなどのリスクを考慮して許可の有無を検討しましょう。許可する際は交通法規を守ること、飲酒運転は絶対に使用しないことを盛り込んだ社用車使用誓約書などを作成しておくと良いかもしれません。
営業車の私的利用が会社で禁止されている場合
そもそも、就業規則などで営業車の私的利用が禁止されている場合(私的利用が許可されていない場合)、営業車を私的利用すると「業務上横領罪」に問われる可能性があります。「自分は営業だから…」と会社に許可を取らず、安易な気持ちで営業車を私的利用することはNGです。社内で禁止されているにもかかわらず私的利用した結果、懲戒処分などの厳罰な制裁を受けることも考えられますので、十分に注意しましょう。
多くの営業車を抱える企業であれば、余計なトラブルの原因を作らないためにも、営業車の使用ルールを明確にしたうえで、社内に周知徹底するようにしましょう。また、「通勤時の利用OK」など、シーンを限定したうえで利用を認めている企業もありますが、事前に運用ルールやリスクについて洗い出しを行い、マニュアルや規則を作ったうえで実施する方が安全です。
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社用車の私的利用の例
通勤以外に、社用車の私的利用の範囲としてどのようなケースが考えられるでしょうか。ここではいくつか事例をあげますので、「私的利用の範囲」をどこまでに置くのか、そのリスクや注意点について検討してみましょう。
寄り道
●営業スタッフが次の顧客先に向かう途中、コンビニに寄って買い物をし、30分程度、駐車場で休憩をした。
環境庁大気保全局の発表では、アイドリング10分あたりの燃料消費量は0.14ℓ、二酸化炭素排出量は90g。環境保全も考慮すると、私用だけでなく、業務中も駐停車中の無駄なアイドリングはしないことをルールに入れるべきでしょう。
●会社から近い距離なのに遠回りをして客先に向かっていた。
配送ルートを効率化することでコスト削減や業務効率アップにつながります。
●打ち合わせと打ち合わせの合間に時間があったので、時間を潰すために商業施設へ訪れた。
盗難や事故のリスクが高まります。
休日利用
●祭日や休日などに(単身赴任などのケースで考えられるパターンです)単身、または家族などと出かけていた。
●旅行に行く際に使用した。
普段、訪れない道での走行は慣れていないことも多く、事故のリスクが高まります。
引っ越し
●荷物をたくさん詰め込むことができる大型バンの社用車のため、引越しに利用した。
盗難や事故のリスクが高まります。
上記の項目以外に、どのようなシーンで活用できるかを上げ、私用の範囲を決め、注意事項やルールを規定に盛り込みましょう。
社用車の私的利用に関する注意点
社用車の私的利用を認める場合、次の点に注意が必要です。
私的利用時のリスクと責任の範囲
前述したように、私的利用の範囲をどこまでと設定するか、その際にどのようなリスクが想定できるか、事故やトラブルが発生したら誰がどのような責任を負うのかを洗い出しましょう。
また、私的利用の際に発生した事故や盗難について、従業員が混乱しないよう、誰がどのように対応するのか、社用車のどこに車検証の写しや保険証券が保管されているのか、緊急時の連絡先はどこか、対応を周知させるために、“もしも”を想定したマニュアルをPDFで渡す、または社用車に積んで置くというのも一つの手です。
社用車通勤に対する交通費
通勤時と業務のみの使用であれば、必要なガソリン代は会社の経費になりますが、私的利用分については会社の規定によります。社用車の利用を認める際に、それぞれどのような費用が発生するのか、あらかじめ考えておかねばなりません。
その例が、駐車場代やガソリン代、そして通勤に関わる交通費です。電車であれば「●●駅から●●駅まで▲▲円、月の定期代は▲▲円」と明確な金額がわかりますが、自宅〜会社間となると、通勤ルートにもよるため把握が難しい場合も。通常、会社が上限を決めて支払うことが多いようですが、点検や車検の費用は会社がどこまで負担をするのか、どのような条件において私的利用を許可するのか、明確な線引きを。
社用車の私的利用中に事故が起きたら?知っておくべき会社の責任
詳細については「社用車での事故、誰が責任を負うのか?-事例と対応方法」の記事をご参照ください。
社用車、営業車の事故の関する責任(法律)について、民法の「使用者責任」と自動車損害賠償保障法の「運行供用者責任」を押さえておく必要があります。
【民法 第七百十五条】
- ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときはこの限りでない。
- 使用者に変わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
- 前二項の規定は、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を防げない。
つまり、使用者責任とは、会社が雇っている従業員(被用者)が、何らかの不法行為を起こして相手に損害を与えた時に、使用者が本人と連帯して責任を負うことを言います。
自動車損害倍賞補償法 第三条
(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償するせきに任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
運行供用者責任とは、自動車の運転によって利益を受けているものが、その自動車が起こした交通事故について責任を負うということです。
社用車で交通事故が発生した場合、ケースによってこの2つの責任が両方発生する、どちらか一方が発生する、またはどちらも発生しない場合もあります。業務中の事故の場合は2つの責任が発生しますが、論点となるのは業務時間外の事故、つまり「私的利用時の事故」かどうかです。従業員が無断で使用に社用車を利用し、会社が利益を得ていない場合は、運行供用者責任は発生しません。
「どのようなケースの場合、会社も責任を問われるのか」。起こり得るケースを洗い出し、あらかじめ整理をしておきましょう。
車両管理の徹底がリスクマネジメントになる
複数の社用車を抱える企業では、車両管理の徹底がリスクマネジメントや生産性向上、コスト削減につながります。
近年では、インターネットやGPSなどを活用して社用車の走行ルートや運転データを自動的に記録できるシステムが多くリリースされています。私的利用に関しては、走行記録に目を通すことで、会社が意図しない使い方をしていないか確認することができます。
それ以外にも、データをもとに走行ルートを最適化することで走行時間の短縮や燃料費の削減を実現できますし、車両の点検や整備といった車両に関するあらゆるデータをクラウド上で管理することで、社用車の状態を誰でも同じように把握・管理したり、ドライバーの運転状態をスコア化して適切な指導が行ったりすることもできます。とくに、社用車を業務時間外でも利用OKとする場合は、なおさらのこと、社員の安全運転に対する意識を向上させる仕組みを構築しておくべきかもしれません。
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最近では、新型コロナウイルス感染防止策のため、自宅から訪問先へ直行直帰するケースも増えているようですが、シガーソケットに挿すだけの脱着可能なデバイスも用意していますので、営業車へそのまま取り付ければ、車両管理と運行管理を同時に行うこともできます。この場合、会社が想定していないかたちでトラブルに巻き込まれる可能性も考えられるため、リスクを最小化するために、明確なルールを設けて運用しましょう。