貨物軽自動車安全管理者とは?わかりやすく罰則や講習について解説
2024年4月26日に成立した「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(改正物流法)」にもとづき、2025年4月1日より、軽貨物運送事業の安全管理者制度が創設されます。
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目次
貨物軽自動車安全管理者とは
貨物軽自動車安全管理者とは、貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するために設けられた制度のことです。昨今、EC市場の拡大による宅配便の取扱個数が増加しており、荷物を届ける手段のひとつとして、軽自動車を使用した運送の需要が高まっています。しかし一方では、保有台数1万台あたりの事業用軽自動車による死亡事故・重要事故の件数が右肩上がりで増加しているため、安全対策を目的として2024年5月15日に「流通業務の総合化および効率化の促進に関する法律および貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」が公布され、貨物自動車運送事業輸送安全規則などの改正が行われました。
2025年4月1日よりスタートする新制度の概要
2024年10月1日に公布された新制度の導入により、5つの項目が義務化されます。
貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講
貨物軽自動車運送事業者(バイク便事業者は除く)は、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、講習を受講しなくてはなりません。また、貨物軽自動車安全管理者を選任したら、運輸支局等を通じて国土交通大臣への届出を行います。
業務記録の作成・保存
毎日の業務開始・終了地点や業務に従事した距離等の記録を作成し、その記録を1年間保存しなくてはなりません。
事故記録の作成・保存
事故が発生した場合、その概要と原因、再発防止対策などを記録・作成し、3年間保存しなくてはなりません。
国土交通大臣への事故報告
死傷者を生じるなど、一定規模以上の事故が発生した場合、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ報告しなくてはなりません。
特定の運転者への指導・監督及び適性診断
過去に死者または重傷者を生じた交通事故を起こした運転者、初任運転者、高齢運転者など特定の運転者に対し特別な指導を行い、適性診断を受診させなければいけません。また、運転者の氏名、当該運転者に対する指導や適性診断の受診状況などを記載した貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置く必要があります。
貨物軽自動車安全管理者制度はいつから施行される?
2024年10月1日に公布された貨物軽自動車安全管理者制度は、11月1日から講習機関に係る登録が施行され、新制度は2025年4月1日よりスタートする見込みです。既存の軽貨物運送事業者に対する規制に対して下記の猶予期間が設けられています。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任:施行後2年
- 特定運転者への指導および適性診断の受診:3年
貨物軽自動車安全管理者の選任基準
貨物軽自動車安全管理者の選任は、次の基準を満たす必要があります。
- 営業所ごとに選任する。
- 選任前に貨物軽自動車安全管理者講習を受講していること。
- 選任後も2年ごとに貨物軽自動車安全管理者定期講習を受講すること。
- 講習は国土交通大臣の登録を受けた講習機関で受講すること。
- 貨物軽自動車運送事業以外の貨物自動車運送事業も行っている場合、現に運行管理者として選任されている人は除外されます。
- 選任したときは、以下の項目について運輸支局等に届出を提出すること。
・貨物軽自動車運送事業者の氏名または名称
・貨物軽自動車安全管理者の氏名および生年月日
・貨物軽自動車安全管理者の選任年月日および講習修了年月日 - 既存事業者(2025年3月末までに経営届出を行った事業者)は、2027年3月までに選任しなくてはなりません。
- 新規事業者(2025年4月以降に経営届出を行った事業者)は、速やかに選任しなくてはなりません。
貨物軽自動車安全管理者の選任が必要ないケース
以下のような場合、貨物軽自動車安全管理者の選任が必要ないケースも考えられます。確認が必要な場合は、国土交通省が設置する問い合わせ窓口へ連絡をしてください。
個人事業主の場合
1人で事業を運営している個人事業主の場合、当面は本人が安全管理者を兼ねるため、別途、安全管理者を選任する必要はありません。
その他の考えられるケース
- 貨物軽自動車運送事業を営んでいない場合
- 軽自動車ではなく、普通自動車のみで運送事業を行っている場合
- 自家用車として軽自動車を使用している場合(事業用ではない)
これらのケースは法改正の詳細が明らかになるにつれ、変更される可能性があります。安全管理は重要な課題であるため、現時点において選任義務がなくとも、安全運転に対する意識を高く維持することが重要です。
貨物軽自動車安全管理者の業務内容
貨物軽自動車安全管理者の主な業務内容は以下の通りです。
安全運転管理
ドライバーへの安全運転指導と監督
ドライバーに対して指導と監督を毎年実施し、①実施した日時・場所、②実施内容、③実施した人と指導を受けた人の氏名を記録し、3年間保存します。
実施内容例は、今後公開予定のマニュアルをご参照ください。
※なお、一人で事業を行っている場合は、指導監督マニュアルを理解することをはじめとして、自ら必要な知識を習得する必要があります。
交通事故防止のための取り組み実施
過去の事故をもとにした予防策や危険予知トレーニング、ドライバーの運転を把握し、定期的な安全運転指導や安全運転の啓蒙活動を行いましょう。
業務の記録
その日に行った業務について、次の6つの項目を記録し、1年間保存します。
- ドライバーの氏名
- 車両番号(ナンバープレート)
- 業務開始と終了、休憩の日時
- 業務開始と終了、休憩した地点
- 業務に従事した距離
- おもな経過地点
記録と報告
交通事故発生時の記録作成
事故を起こしたドライバーなどの氏名、発生日時、発生場所、事故の概要、原因、再発防止対策を記録し、3年間保存します。
一定規模以上の事故について国へ報告
死傷者を生じるなど、重大な事故が発生した場合、30日以内に所定の様式で下記の項目を記載し、運輸支局などを通じて国土交通大臣に報告します。
- 自動車の使用者の氏名や名称
- 事故の発生日時
- 事故の発生場所
- 事故当時の状況
- 事故当時の処置
- 事故の原因
- 再発防止対策
国土交通大臣への事故報告の様式(提出先:営業所所在地の運輸支局)
安全運転教育と適性診断
以下の運転者に対して特別な指導を行い、国土交通大臣に認定された適性診断を受診させます。
- 初任運転者(過去に一度も特別な指導・適性診断を受けていない者)
- 高齢者(65歳以上の者)
- 死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした者
また、運転者の氏名、当該運転者に対する指導、当該運転者の適性診断の受診状況等を記載した貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、これを営業所に備え置きます。
関連リンク:適性診断認定機関一覧
法令遵守と知識向上
安全な運行に必要な法令知識の習得と更新をするために講習を受講する
貨物軽自動車運送事業者は、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で、貨物軽自動車安全管理者に選任しようとしている人には貨物軽自動車安全管理者講習を、貨物軽自動車安全管理者には2年ごとに貨物軽自動車安全管理者定期講習を受講させます。
点呼と運転時間の遵守
点呼と運転者の勤務時間遵守
乗務前に行った点呼で、ドライバーや事業用自動車に何らか問題が確認された場合は、運行させてはいけません。また、点呼の内容は日々点呼記録簿に記録したうえで1年間保存します。
法令で定められている確認事項 | 確認方法例 | 実施のタイミング |
ドライバーの酒気帯びの有無 | アルコール検知器を用いて、酒気帯びの有無を確認。また、顔色や声など目視でもドライバーの状態を確認します。 | 乗務前乗務後 |
ドライバーの疾病、疲労、睡眠不足、その他の理由により安全な運転ができないおそれの有無 | 体温や血圧、顔色、呼気の匂い、声の調子などで確認します | 乗務前 |
業務に関する事業用自動車、道路、運行の状況 | 気になる点がなかったかを確認します | 乗務後 |
車両の日常点検の実施、または確認 | 走行距離や運行時の状況などから判断した適切な時期に、エンジンルーム内、ライト、タイヤ、運転席周りを確認します | 乗務前 |
※一人で事業を行っている場合は、自分で確認を行います。また、家族と同居している場合は自身の体調を客観的にみてもらうことも重要です。
勤務時間の遵守
安全な運行を実現するために次の内容を守りましょう。
- 1年・1ヶ月の拘束時間:1年は3,300時間以内、1ヶ月284時間以内にしましょう。
- 1日の拘束時間:13時間以内(上限は15時間、14時間を超えるのは週に2回までが目安です)
- 1日の休息時間:継続11時間以上与えることを基本とし、9時間を下回らないようにします。
- 運転時間:2日平均で1日9時間以内、2週間平均で1週44時間以内
- 連続運転時間:4時間以内
貨物軽自動車安全管理者の罰則
現時点において、貨物軽自動車安全管理者の選任に関する具体的な罰則は設けられていません。
貨物軽自動車安全管理者講習とは
前述したように、2025年4月1日より、貨物軽自動車運送事業者(バイク便事業者を除く)は、営業所ごとに貨物軽自動車安全管理者を選任し、講習を受講することが義務付けられます。
貨物軽自動車安全管理者の選任時に貨物軽自動車安全管理者講習を受講し、その後2年ごとに貨物軽自動車安全管理者定期講習を受講しましょう。既存の事業者には、施行後2年の猶予期間が設けられています。また、特定の運転者(新規雇用者、65歳以上の高齢者、重大事故を起こした者)に対しても、指導・監督および適性診断の受診が義務付けられ、これについては既存事業者に3年の猶予期間が与えられます。これらの講習制度は、貨物軽自動車運送事業の安全性向上を目的としており受講は必須です。
安全運転管理者や運行管理者との違い
貨物軽自動車安全管理者と安全運転管理者、および運行管理者は、それぞれ対象事業や法的根拠、役割、選任基準が異なり、それぞれの事業形態に応じた安全管理を担当します。
対象事業者
- 貨物軽自動車安全管理者:貨物軽自動車運送事業者
- 安全運転管理者:一定台数以上の自動車を使用する事業所
- 運行管理者:一般貨物自動車運送事業者と特定貨物自動車運送事業者
法的根拠
- 貨物軽自動車安全管理者:貨物自動車運送事業法
- 安全運転管理者:道路交通法
- 運行管理者:貨物自動車運送事業法および道路運送法
主な役割
- 貨物軽自動車安全管理者:貨物軽自動車運送事業の安全管理、運転者指導
- 安全運転管理者:運転者の安全運転教育、運行計画作成
- 運行管理者:乗務割作成、点呼実施、運転者指導
選任基準
- 貨物軽自動車安全管理者:営業所ごとに選任、選任前に貨物軽自動車安全管理者講習を受講していること
- 安全運転管理者:使用自動車台数に応じて選任、一定要件を満たす者
- 運行管理者:事業用自動車台数に応じて選任、運行管理者資格者証の交付を受けている者
監督官庁
- 貨物軽自動車安全管理者:国土交通省
- 安全運転管理者:警察庁
- 運行管理者:国土交通省
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まとめ
貨物軽自動車安全管理者制度は、2024年11月から施行される新たな安全対策です。これにより、運送業界の安全性向上を図り、事故防止に寄与することが期待されています。2025年4月の新制度開始により、2027年3月までに安全管理者を選任しなければなりませんが、安全管理者を選任しない事業者は、事業継続ができなくなるため注意してください。