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主にトラックに搭載されている「デジタコ」や「アナタコ」って一体何?

トラックやバス、タクシーなどの乗り物に「デジタコ搭載車」というステッカーが貼ってあるのを見たことはありませんか?基本的に、営業車両とみなされるものには、タコグラフ(運転記録計)が装着されており、最近のものはデジタル化されているためデジタルタコグラフ、通称「デジタコ」と呼ばれています。

今回は「デジタコ」をテーマに、その特徴やアナタコ(アナログの運転記録計)と比べたときのメリット・デメリットについて紹介していきます。

主にトラックに搭載されている「デジタコ」や「アナタコ」って一体何?

令和6年度版 トラック事業者向け通信型デジタルタコグラフ導入メリットと補助金活用ガイドブック

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タコグラフ(運行記録計とは)とは

タコグラフとは、運行時間や速度の変化などをグラフ化し、その車両の稼働状況を把握するため自動車に搭載した「運行記録用計器」のことです。道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準においては、運行記録計という名称で、装着を義務づけた車両の種類、型式認定を受けた機器を使用する旨が規定されています。

国土交通省は度重なる交通事故を削減するため、大型車と並び事故率の高い、車両総重量7~8トン(最大積載量4~5トン)の事業用貨物自動車に、タコグラフ(運行記録計)の装備を義務付けました。このタコグラフのデータを元として、スピード違反や交通事故の原因を把握するためです。

アナタコとデジタコ、ドラレコの違い

日本には1959年にドイツからタコグラフが伝えられ、数十年間をかけて路線バスや路線トラックに少しずつ普及し、1962年にタコグラフ装着義務対象車が指定されるようになりました。そして、1998年からデジタコ(デジタルタコグラフの略称)の実用化が進み、国土交通省より型式認定対象になっています。

アナタコとは

アナタコ(アナログ式タコグラフの略称)は、円形になっているチャート紙に走行距離や速度、時間、運転状況を記録するものです。線の動きがチャート紙上に表示され、それを元にその車両の運行情報を確認します。アナタコはチャート紙に記録されるのが線のみであるため、線の動きを頼りに、遠回りしたのか、荷積みや荷下ろしの時間だったかもしれないなど、管理者自身が分析をして読みとらなくてはなりません。装着すれば簡単に利用できるものの、記録された情報を読み解くには、慣れていない限り、分析作業に時間がかかってしまうことも。つまり、記録はできたとしても、「いつ・何をしていたか」、チャート紙を一目見るだけでは把握が困難だということです。

アナタコのメリットはドライバーへの束縛性が低く、デジタコより安価に導入できる点ですが、データを読んで活用するには専門的な知識が必要です。

アナタコとデジタコの違い

デジタコはその名の通り、タコグラフをデジタル化したもので、正式名称を「デジタル式運行記録計」と言います。記録紙を使用するアナタコに対し、デジタコには媒体としてSDカードなどが使用され、デジタルデータとして保存されるようになりました。この記録方法がアナタコとデジタコの大きな違いです。

デジタコに挿入したメモリーカードを読み取り、解析することで、ドライバーが法定速度や休憩時間を遵守しているかが簡単に確認できるため、安全管理や労務管理に活用することができます。さらに、製品によってはGPSによる位置情報からリアルタイムで警告を出したり、運転の評価が行えたりする機能も備えているため、事故の防止や燃費向上、安全運転への啓蒙など、多様な使い方ができるのもデジタコの特徴です。

速度・時間・距離に加え、急加速や急減速、ドアの開閉、アイドリング情報なども取得し、さらにはETCと連携することで一般道と高速道の速度やエンジン回転数の制限も行えるデジタコは、大きく進化したアナタコだと言えるでしょう。

デジタコとドラレコの違い

デジタコとドラレコは、本来の使用目的が異なる製品です。ドラレコは車載に取り付ける映像記録装置であり、運転中や事故前後の様子を記録することを目的としており、デジタコは速度や走行距離など、運行情報を記録する目的で提供されています。しかし、最近ではドラレコ搭載型のデジタコ、ドラレコと接続して使うタイプのデジタコも展開されるなど、多様な製品がラインナップしています。自社の目的と用途に応じてどのタイプがベストかを検討しましょう。

デジタコの装着は法律にも定められた“義務”である

2014年(平成26年)12月1日、国土交通省は『貨物自動車運送事業輸送安全規則』を改正し、それまで「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラック」にタコグラフの装着を義務付けていたのに加えて、「車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラック」についても装着をするよう義務化を定めました。(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条の6、第9条の1

装着義務の対象を中型トラックにまで広げた理由は、この数年の間に運送業において中型車も長距離配送に使用されるようになり、運転時間が増えると同時に交通事故の発生件数が増加傾向にあったためです。交通事故を少しでも軽減するために、国土交通省は総重量3.5トン以上のすべてのトラックにデジタコの装着を義務付けていた欧州に習い、装着義務の対象を拡大することを決定しました。

運行管理計の未装着や不備、故障があった場合

なお、装着するタコグラフはデジタル式とアナログ式のどちらでも問題ありませんが、近年はデジタコが主流になりつつあり、アナタコを装着するトラックの数が今後さらに減っていくことが予想されます。また、義務付けられているにもかかわらず、タコグラフを装着していなかった場合、次のような違反に該当します。

道路運送車両保安基準第48条の2の2

前項各号に掲げる自動車に備える運行記録計は、二十四時間以上の継続した時間内における当該自動車の瞬間速度及び二時刻間の走行距離を自動的に記録することができ、かつ、平坦な舗装路面での走行時において、著しい誤差がないものとして、記録性能、精度等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

出典:道路運送車両の保安基準 | e-Gov法令検索

道路交通法第63条の2

自動車の使用者その他自動車の装置の装備について責任を有する者又は運転者は、道路運送車両法第三章又はこれに基づく命令の規定により運行記録計を備えなければならないこととされている自動車で、これらの規定により定められた運行記録計を備えていないか、又は当該運行記録計についての調整がされていないためこれらの規定により定められた事項を記録することができないものを運転させ、又は運転してはならない。

出典:道路交通法 | e-Gov法令検索

デジタコは装着しているが故障している、SDカードが挿入されていないといった場合、行政処分は受けませんが、運行記録計不備の違反行為となり、大型車は6,000円、普通車は4,000円の反則金が発生します。

安全規則第9条(運行記録計による記録)

一般貨物自動車運送事業者等は、次に掲げる事業用自動車に係る運転者の乗務について、当該事業用自動車の瞬間速度、運行距離及び運行時間を運行記録計により記録し、かつ、その記録を1年間保存しなければならない。

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 | e-Gov法令検索

運行記録計を未装着で運転した場合、記録義務違反に問われ、30日間の車両使用停止処分となりますので、注意が必要です。

トラックやバスなど商用車で利用されているデジタコは簡単に使えるのがポイント

トラックやバス、タクシーなどの商用車で使用されるデジタコの使い方は非常に簡単です。ドライバーは車両にメモリーカードを差し込み、業務終了後に剥き取るだけ、またはデバイスなどを設置している場合はボタンを押すだけだったり、そのままエンジンをかけると使用できたりと、非常にシンプルです。誰でも簡単に使えるうえ、必要な情報が確実に記録でき、ドライバーと管理者への負担もありません。

デジタコで記録できるデータ

デジタコで記録ができるのは、法定3要素とされている運転時間・距離・速度のほか、急加速・急減速・急ハンドルといった危険操作の発生箇所と発生回数、アイドリングの時間、荷積みや荷卸しの時間、速度超過など、さまざまなデータを記録することができます。車両の変速機を通過した情報を記録するのに加え、GPSからドアの開閉まで、製品によってはより詳細なデータを取得することができます。

デジタコの普及率は?

出典:公益財団法人 日本自動車輸送技術協会 デジタル式運行記録計等の使用実態調査報告(概要)

2021年11月、公益財団法人 日本自動車輸送技術協会が発表した「デジタル式運行記録計等の使用実態調査報告(概要)」によると、デジタコの導入率はトラック事業所が87%、バス事業所が90.3%(アンケートはトラック499事業所、バス501事業所、回収率52.6%)と、多くの事業所で導入されていることがわかります。

導入理由については、トラック、バスともに「事故を減少する」が最多で、安全運転への意識向上、事故減少のために導入するケースが多く、次いで燃費の節約、運行データを業務処理に活用し、業務の効率化を行う、ドライバーの時間管理を適正化するなどが上位を占めていました。

導入の効果としては、事業用トラックの安全運転管理推進において、デジタコで取得したデータをもとに安全運転指導を行ったり、点呼時や研修時に活用したりすることで、9割のドライバーの安全運転意識が向上したとされています。

デジタコのメリット・デメリット

メリット1:より多くの情報が記録できる

デジタコは「GPSによる位置情報」や「エンジン回転数の変化」「急加速・急減速」「ドアの開閉」といった、アナタコでは集められないさまざまな情報を記録することができます。
これにより事業者はより細かいデータ解析ができるので、ドライバーに適切な安全運転指導を行うことが可能となります。

メリット2:業務の効率化が図れる

アナタコを使用するトラックのドライバーは、今まで日報を手書きで作成しなければなりませんでしたが、デジタコはその日の運行データを基に自動で業務日報を作成してくれます。
ドライバーはそれを印刷するだけで日報が完成となるので、労働時間の短縮にもつながります。

メリット3:誰でも簡単に使える

アナタコで使用する「チャート紙」を解析するにはある程度の経験や勘が必要になりますが、デジタコのデータは情報解析が容易なため、誰でも運転日報や各種管理帳票を簡単に作成できるようになります。また、そのまま情報を出力できるというものも。

メリット4:ドライバーの意識が高まる

運行データがアナタコ以上に正確に記録されることもあってか、デジタコを導入した事業者からは「ドライバーが急ブレーキや急発進、アイドリングなどを少しずつ注意するようになってきた」という声が上がっています。

メリット5:データの改ざんができない

アナタコでは、チャート紙に記載された記録を改ざんすることが不可能ではない点が問題視されていました。しかし、デジタコはデジタルデータで記録が保存され、修正した場合はその記録も残るため、不正がすぐに発覚します。このように、正確な記録が残せる点もデジタコの大きなメリットだと言えるでしょう。

デメリット1:導入コストが高い

あくまで目安となりますが、アナタコが初期費用に5~7万円(+紙代100枚につき約1,000円)ほどかかるのに対し、デジタコの導入価格は20〜30万円程度と倍以上の差があります。導入コストをおさえたい場合はアナタコの方が優位だと言えるでしょう。

デメリット2:取り付けに手間がかかる

デジタコは、専用の車載器を車内に直接、設置するため、取り付け作業を行わなくてはなりません。専門の業者へ依頼する際は別途、取り付け工賃が必要になるほか、リース契約やレンタカーでは取り付けができない場合も。購入して即座に使用できるわけでないため、利用を開始する前に設置を完了させる必要があります。

デメリット3:ドライバーに監視の印象を与える

また、デジタコを装着すると、休憩時間なども含め、運行に関するあらゆるデータが記録されます。そのために、ドライバーに「つねに行動を監視されている」と思わせ、ストレスやプレッシャーを与えてしまうことも。会社として正しい労務記録を取得すること、ドライバーの負担を軽減する目的でもあることなど、「なぜ、デジタコを利用するのか」、ドライバーへ丁寧に説明することでこれらの不安や不満は解消され、スムーズに導入しやすくなります。

まだまだ進化するデジタコ。将来は「スマートタコグラフ」が標準装備になる?

アナタコを進化させて開発デジタコですが、国土交通省は将来的にデジタコをさらに高機能化した「スマートタコグラフ」(仮称)という次世代型運行記録計を普及させようと計画しています。スマートタコグラフには、デジタコの機能に「ドライブレコーダーとの連携」「IC運転免許証の認証」「遠隔地でのリアルタイム運行管理・支援」「健康診断や適性診断のデータの一元管理やフォローアップ」など、多くの機能が追加されるといいます。そして将来的には、ドライバーの体調変化などをセンサーで察知して警報を出したり、自動ブレーキを作動させて最悪の事態を回避したりするなど、より安全な運行管理を実現できるサービスが期待されます。

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最新事情1:ドラレコを共同輸送のマッチングサービスと連携

2022年6月、日本パレットレンタル(JRP)とトランストロンが提携し、両社の製品・サービスを連携させる取り組みを発表。トランストロンが提供するデジタコから収集されたトラックの発着地点、年間出荷便数などのデータをデジタコ連携のAPIで抽出し、JPRの共同マッチングサービスである「TranOpt」に取り込み、共同輸送の機会を作ろうとしています。AIによって荷主企業をマッチングさせ、実車率や積載率の向上、そしてCO2NO削減などへの貢献が可能に。

最新事情2:タイヤの空気圧と温度をモニタリングするシステムを連携

2022年7月25日、ブリヂストンタイヤソリューションジャパンが9月20日より、国内の輸送事業者位向けてタイヤの空気圧と温度を遠隔モニタリングするデジタルソリューションツール「タイヤマティクス」を活用した「リアルタイムモニタリング」の提供を開始すると発表しました。

リアルモニタリングは、タイヤマティクスを使用してTPMSから計測した空気圧と温度のデータをデジタコのネットワークを介してサーバに送り、ブリヂストンのタイヤ情報管理ツールでタイヤの状態をリアルタイムにモニタリングできるという仕組み。タイヤの点検精度向上、そしてタイヤが原因の運航トラブル防止ができるようになります。

最新事情3:動体管理とアルコールチェッカーとの連携も!

GPSで取得できるデータを活用した社用車の車両管理システムや動態管理システムはいくつか提供されていますが、株式会社スマートドライブの「SmartDrive Fleet」もそのひとつです。シガーソケットに挿し込むだけ利用開でき、アナタコと併用することでさらに高度な車両管理と安全運転を実現します。

GPSリアルタイム動態管理を含め、ドライバーの勤怠管理や運転日報の自動作成、リアルタイム動態管理機能から運転日報を自動で作成する機能、ドライバーの運転特性を把握して事故削減をサポートする運転診断機能を備えています。さらに、今年度より義務化されたアルコールチェック機能も追加されました。

最近では新型コロナウイルスや円安の影響でガソリン代をはじめとする維持費も向上しています。動体管理と運転診断を活用して、余剰車を特定して車両台数の最適化を実現したり、安全運転とエコドライブを推進したりすることで、コスト削減へとつなげることも可能です。データをもとに、より高度な安全運転管理、そして運行管理を実現したい場合、こうしたシステムを活用するのも一つの手です。

まとめ

ドライバーの安全を守り、トラックの運行を効率的に管理してくれるデジタコ。車両に関する正確なデータを取得できるようになると、走行ルートの改善や運用ルールの見直し、残業時間の短縮など、多くの課題を改善できるようになります。国土交通省では、自動車運送事業者に対する「デジタル式運行記録計及び映像記録型ドライブレコーダーの導入支援を実施しています。デジタコの導入を検討する際は、助成金対象機種(全日本トラック協会)」に登録済みで、「運行管理の高度化に関する支援(LEVO)」の対応機器)の形式となっているデジタコ、スマタコから対象とされる機種を選択することで、導入コストを大幅に抑えることも可能です。これを機に、安全運転を実現しつつ、さらには企業の成長も後押ししてくれるデジタコやシステムを取り入れてみませんか。

筆者紹介

株式会社スマートドライブ
編集部

株式会社スマートドライブ編集部です。安全運転・車両管理・法令遵守についてわかりやすく解説します。株式会社スマートドライブは、2013年の創業以来、「移動の進化を後押しする」をコーポレートビジョンに掲げ、移動にまつわるモビリティサービスを提供しています。SmartDrive Fleetは、1,300社以上への導入実績があり、車両に関わる業務の改善や安全運転の推進などに役立てられています。また、東京証券取引所グロース市場に上場しています。 SmartDrive Fleetは情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度「ISMS認証(ISO/IEC 27001:2013)」を取得しています。

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