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【解説/テンプレ付】自動車事業に欠かせない日常点検表

お客様の荷物を運ぶ運送トラック、乗客を目的地まで安全に輸送するバス・タクシー…いずれの運輸事業者も、安全は何よりも優先しなければならないものです。そのためにも、毎日のスムーズな運行と事故防止のために欠かせないのが車両の日常点検です。この記事では、日常点検の重要性と車両ごとの違う日常点検のフォームや使い方について詳しく解説します。

2002年6月、横浜市で発生した大型トラックから脱落したタイヤが、親子3人に直撃して死傷、三菱ふそうの7人が逮捕されるという事件が発生しました。これは、点検の不備ではなく、ハブの構造的欠陥によることが原因の事故でしたが、その事実を隠していたことが一番の問題となりました。大型車のタイヤが万が一外れてしまったら、非常に危険な事故につながります。ついつい気を緩めて日常点検を怠り、ホイールナットの緩みに気付かずに運行してしまったら…タイヤの脱落を招いた場合には、取り返しのつかないことになりかねません。

トラックやバス、タクシーなどは乗客の大切な荷物や命を預かって移動するため、こうした事件に遭遇すると社会的な影響が計り知れないものとなります。改めて日常点検の重要性を再認識し、違和感に早めに気付くことで思わぬ重大事故を回避してください。

【解説/テンプレ付】自動車事業に欠かせない日常点検表

旅客車貨物車共通の日常点検とは

日常点検整備は道路運送車両法第47条の2において、「自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない」と定められています。つまり、1日1回、その日の運行開始前に必ず点検しなければなりません。そして、点検表等の記録は自動車の登録番号ごと1台1台保管し、1年間の保管が義務付けられています。点検表の様式は、登録番号ごとにまとまってあれば、1日1枚でも1か月通して1枚でも構わず、様式やフォームも特に決まったものはありません。

日常点検を実施しないと…

「昨日、何も問題なく走行できたから今日は点検しなくても大丈夫だろう」と、そのまま運行してしまうのは非常に危険です。道路運送車両法第47条の2に定められていますが、日常点検整備が未実施の場合は法令違反となり、行政処分を受けることになります。

車両法第47の2 違反(日常点検の未実施)

1台の車両の1月の未実施回数初違反再違反
未実施回数6回未満警告3日車×違反車両数
未実施回数6回以上15回未満3日車×違反車両数6日車×違反車両数
未実施回数15回以上5日車×違反車両数10日車×違反車両数

違反の「日車」は、その日数分の営業停止(車両停止処分)を意味します。たとえば未実施回数8回で未実施対象台数が3台の場合で初違反の場合、3日車×3で9日車になります。この期間内は、運輸局職員によってナンバープレートが外されますので絶対に使用することができません。そうなると使用できないことによる収益減、運行できなかったことによる信用の損失につながり、その日運行できなかった損失以上の損失が待っています。

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運輸事業に使用する自動車の定期点検サイクル

トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車の点検サイクルは、一般の自家用車より短く、車検も初度登録から1年ごとに実施します。通常の自家用乗用車は初度登録から3年後に初回車検、以降は2年ごとの車検です。また、事業用自動車は公共性が高く、社会的影響も大きいことから、3カ月ごとの定期点検が義務付けられています。

定期点検が未実施の場合に受ける処分

日常点検同様、定期点検が未実施の場合も行政処分の対象となります。道路運送車両法第48条に「点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない」定められており、定期点検の未実施は法令違反になります。

車両法第48条違反(定期点検等の未実施 (注1)(注3) )

1台の車両の1年間の未実施回数初違反再違反
未実施1回警告5日車×違反車両数
未実施2回5日車×違反車両数10日車×違反車両数
未実施3回以上10日車×違反車両数20日車×違反車両数
(注1) 12月点検整備を除く。ただし、自動車検査証の有効期間が初回2年の自動車にあっては、初回の12月点検整備を含
める。
(注3)「全ての車両について定期点検整備が全て未実施」に該当する場合を除く。

もし、すべての車両で定期点検整備が未実施だった場合、局長通達5の事業停止処分関係の(1)により、事前に本省自動車局安全政策課及び貨物課に連絡のうえ、事業停止処分になる可能性が高くなります。

違反にあたる点検未実施が3回以上で10台、初違反の場合は、10日車×10台で100日車の車両停止処分です。自動車の大きさにより点検費用は異なりますが、点検費用が1回2万円であれば、3回分で6万円、10台分なら60万円の点検費用がかかります。60万円分の点検費用がもったいないと判断して点検を受けず、結果として違反が100日車の車両停止処分を受けることになれば、10日間10台の自動車が使えない分の営業損失と、顧客からの信用損失で今後の会社の存続に多大な影響を与えます。点検しなかった代償は、相当大きなものになるのです。なお、定期点検の記録は、1年間保存しなければなりません。

引用:国土交通省.「【別表】(貨物)違反事項ごとの行政処分等の基準」.https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/data/transmittal_k110.pdf (参照 2022-04-14)

国土交通省.「国自安第74号 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準の細部取扱いについて」. 令和元年,10月31日. https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/data/transmittal_k102.pdf (参照 2022-04-14)

日常点検のチェック項目と点検時のポイント

 トラックバスタクシー
エンジンルーム キャビンを倒すリヤのエンジンルームを開けるボンネットを開ける
エンジンオイルエンジンオイルの量、汚れの確認 タクシーのLPG車は汚れが見えないので注意(LPGはオイルが汚れないため量を守り定期交換を守る)
ベルト類張り具合、損傷が無いか確認(ファン、エアコン、パワステ等)
冷却水冷却水の量が適当であること
エンジン始動エンジンのかかり具合、ふけ上がり具合、異音が無いか確認(バスはメインスイッチを引いてから始動すること)エンジンルームをのぞき込み、各種オイルの漏れの確認
ブレーキペダルの踏み代が適当で効き具合か十分であることブレーキ液量が適当であること(バス、トラックのオイルブレーキ車を除く)
エアブレーキ車空気圧力の上がり具合が正常であることペダルを戻した時の排気音が正常であることなし
駐車ブレーキ効き具合、引き代(ノッチ式)が適当であること
灯火類ヘッドライト(Lo,Hi)、フォグランプ、ウインカー、尾灯、ストップランプ、車幅灯、後退灯 点灯具合、点滅具合の確認
サイドマーカー等路肩灯、方向幕等行燈等
計器類燃料、油圧、水温、回転計、速度計、運行前後の積算距離計の確認、不要な警告灯が点灯していないかどうかも確認
ワイパーブレード、ゴムの状態、掃け具合、ウインドウウォッシャー液量と噴射状態
タイヤの状態空気圧が適当であるか、摩耗、異物、損傷はないかの確認
ホイールナットの緩み、ディスクホイールの取付状態確認 
スペアタイヤ空気圧、取付状態の確認(トラック、バス)
エアタンクぎょう水の確認(凍結の可能性あるため冬季禁止)なし
その他パワーゲートやウイング、その他装備類の作動確認など室内灯、氏名札灯、ワンマン機器、運賃表、車内ミラーの照射状態、整理券、カードリーダーの状態、後車ボタン、ドアの作動確認、車いす用スロープの確認など料金メーター、ドアレバー、自動ドアの作動確認など

・ホイールナットの緩み

トラック、バスのホイールナットの緩み確認や空気圧を確認するには、点検ハンマーを使用します。ホイールナットの下に片手の指を添えて、ナットの締まる方向に点検ハンマーで叩いて緩んでいないかを確認しましょう。緩んでいると鈍い音と共にナットの振動が指に伝わりますのですぐに気づくはず。

ただし、JIS規格とISO規格で違いがあるため、締まる方向には注意をしてください。ネジは右に回して締まるのが通常ですが、トラック、バスのJIS規格の場合には、右タイヤは締まる方向は右ですが、左タイヤは進行方向の左に締まる逆ネジです。近年(2010年以降目安)では、ISO規格が主流となり、どちらのタイヤも締まる方向は右になっています。

・空気圧

空気圧の確認は音で行いましょう。タイヤのトレッド面(路面接地面)を強めに叩くと「ポンポン」と音がしますが、空気圧が低い、パンクしている場合は、「ボフッ」と鈍い音がします。タイヤのサイド部分を叩く方もみかけますがこれは危険です。タイヤサイド部分はもっとも弱い部分ですので叩かないようにしましょう。

新入社員への研修の際には、点検ハンマーで正常空気圧のタイヤをポンポン叩くのみではなく、故意にタイヤ空気圧を低くして、空気圧正常時の音と、空気圧低下時の音を聴き比べて、実際の点検時に違和感に気付けるようにしてあげてください。タクシーの場合には、エアゲージ等で指定空気圧であることを確認しましょう。

今日から使える「日常点検表」テンプレート

日常点検表はとくに決まったフォームがないため、点検項目が漏れていなければ各社オリジナルのものを利用して構いません。日常点検表に必ず記載しなければならない項目は、道路運送車両法47条の2にある通り以下7つです。

自動車の走行距離
・灯火装置の点灯、点滅具合
・制動装置の作動
・点検した年月日
・運転者名(点検者名)
・自動車の登録番号
・自動車の車検有効期間(車検切れ運行を防ぐため記載が望ましい)
・整備管理者の㊞を押印する箇所

ここからはいますぐ使える日常点検表のテンプレートをいくつかご紹介します。各トラック協会、バス協会等にてテンプレートが用意されていますので、これをベースに自社で使いやすいフォームにカスタマイズするなどしてご利用ください。

貨物輸送 トラック用

群馬県トラック協会 「点検関係 エクセルダウンロード 1日用
長野県トラック協会 「各種帳票類 エクセルダウンロード 1か月用
北海道トラック協会 「1日用&1カ月用

旅客輸送 バス用

広島県バス協会 「帳簿運行管理・整備管理関係 エクセルダウンロード 1カ月用

SDMGオリジナル「日常点検表 エクセルシート

旅客輸送 タクシー用

NPO法人日本福祉タクシー協会 「帳票-6種類の中参照

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筆者紹介

株式会社スマートドライブ
編集部

株式会社スマートドライブ編集部です。安全運転・車両管理・法令遵守についてわかりやすく解説します。株式会社スマートドライブは、2013年の創業以来、「移動の進化を後押しする」をコーポレートビジョンに掲げ、移動にまつわるモビリティサービスを提供しています。SmartDrive Fleetは、1,300社以上への導入実績があり、車両に関わる業務の改善や安全運転の推進などに役立てられています。また、東京証券取引所グロース市場に上場しています。 SmartDrive Fleetは情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度「ISMS認証(ISO/IEC 27001:2013)」を取得しています。

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