カーディーラーが置かれている現状【前編】
カーディーラーとは、新車を販売しているトヨタなどのメーカー直営・提携代理店(サブディーラー)だけではなく、中古車を取り扱っている業者まで含めた総称を言います。流通経路こそ違いますが、クルマを売って利益を上げるというビジネスモデルは共通です。
クルマ社会が発展している日本では、カーディーラーは非常に重要な地位を占めていますが、現在は構造上の問題や少子・高齢化と若年層の車離れなどの影響から、必ずしも順風満帆という訳ではないようです。
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目次
カーディーラーの業界構造
まずは、業界の現状を把握するため、新車・中古車ディーラーそれぞれのビジネスモデルを整理して解説します。
メーカー直営店&サブディーラーの業界構造
新車の販売には、常時新型モデルを在庫しているトヨタで言えば「ネッツ」などの直営店と、顧客の要望に応じその都度メーカーから新車を取り寄せ販売する、整備業者・JA・個人事業主といったサブディーラーがいます。現在、両者を合わせた国内の新車販売台数は約500万台。日本ではクルマの商取引に官公庁の許可などの諸登録が必要で、複数メーカーの新車を多数在庫する販売形態が存在しないため、ほぼすべてを直営店とサブディーラーが売りさばいているのです。
しかし、少子高齢化に伴う生産人口減少や若年層のクルマ離れ、カーシェアリングの普及によって国内新車台数は年々減少すると考えられ、(株)三井住友銀行の独自見解によると2030年には「現状比-30%」、つまり約350万台にまで落ち込むと言います。購入者がいて初めて新車を取り寄せるサブディーラーはともかく、各自動車メーカーおよびメーカーから一定の販売台数を割り当てられている、直営店の運営会社にとっては死活問題ですが、それより深刻なのが新車ディーラーの収益構造です。
新車ディーラーは販売に加え、車検・点検・整備・修理などのアフターサービスを収益源としており、1社平均の売上高では車両販売が約80%を占めているものの、減価を除いた粗利は約50%に留まっています。つまり、多くの新車ディーラーがアフターサービスで経営を安定させているのですが、新車市場の冷え込みの要因である生産人口減少は、アフターサービスを提供するために必要なメカニックの確保・育成も困難にさせているのです。
もちろん、各メーカーもそのことを十分自覚しており、働き方改革の推進による労働環境・条件改善で人材確保に取り組んでいますが、
- HV・EVの普及・・・部品点数の減少に伴う整備収益ダウン
- 高レベル自動運転車の普及・・・交通事故抑制に伴う整備・補修依頼数の減少
などによって、現在約50%を占めるアフターサービスの収益力低下が予想されるほか、追加される新技術に対応可能なメカニックの育成難易度も年々上昇しています。
中古車ディーラーの業界構造
メーカーの指示で販売価格が決まる新車ディーラーと異なり、中古車ディーラーは自らの意思で仕入れて車体(オークションor直接買取)や販売価格を設定できるため、新車より1台当たりの粗利が多く発生します。
しかし、新車市場が将来的に冷え込んでいくことに加え、クルマ自体の寿命が年々伸びている影響から、現在「約260万台」とされている国内の中古車販売台数は、新車販売台数より顕著に減少すると考えられます。その結果、近年廃業を余儀なくされる中古車店も増え、マーケティングやプロモーションに要するコストの削減と、知名度上昇・流通ネットワーク構築を目的にフランチャイズ化し、大手チェーンの傘下になる個人事業主も増えてきました。
また、大手チェーンもさらなる収益率向上を図るため、買取した車体を長期間在庫せず業者間オークションで転売する従来の「薄利多売方式」から、自社で点検・整備し付加価値を付け高品質な中古車を消費者に提供する「直販方式」へと転換し始めています。中古車買取チェーン「ガリバー」を運営する(株)IDOMの例を見ると、同社は採算性の悪い既存店舗を撤退しつつ、
- ガリバー・アウトレット・・・全車保証付きの既存店舗と異なり、車両販売と整備・保証・クリーニングなどのサービスを切り離すことで、リーズナブルなアウトレット価格を提供する販売チャネル。
- ガリバーミニクル・・・軽自動車に特化した販売チャネル、女性ユーザーからの支持を集めており、中古在庫だけでなく未使用車も人気。
- リベラーラ・・・BMW・アウディ・メルセデスを中心とした、輸入車及び高級国産車専門のセレクト中古車店。積極的な買取も行っているため、まだ確立していない国内の中古輸入車市場を引っ張る存在になる可能性もある。
- スナップハウス・・・ファミリーカーを専門に販売だけでなく、メンテナンスやアフターフォローまで行う。キッズルームや授乳室、2時間300円で利用できるフリードリンクスタンドなど、ファミリー層を強く意識した店作りになっている。
- WOW!タウン・・・「ココロ躍る車選び」をモットーに、社内ソーシャルから2012年に初登場した新感覚の総合中古車販売施設。施設内で快適に過ごしている間に、併設する「FACTORY」で愛車の点検や点検を受けることも可能。
といった専門販売チャネルを次々に新設することで、ビッグモーターに奪われた販売・買取台数NO,1の座を取り戻すべく進化しています。
また、国内市場に限界を感じた中古車ディーラーは海外輸出ルートの構築を早い段階から進めており、日本車人気の高さから低年式・過走行気味の車体は東南アジアやインド、比較的新しく程度の良い車体は、UAEを始めとするアラブでの売れ行きが好調なようです。
カーディーラーの現状から見えてくる課題
自動車メーカー直営店や大手中古車チェーンの場合、働き方改革の推進や販売チャネルの統合・再編など、構造の最適化によってある程度の対応ができますが、中小のサブディーラーや中古車店が人材不足・市場縮小といった大きな流れに逆らうのは困難なことです。
この項では、前者にも共通することではありますが、特に後者が強く意識すべき課題と、現状を打破し収益化を図るため必要なことをまとめました。
課題クリアと収益化に向けてのポイント1「ITシステムによる効率化」
前述したように、新車ディーラーはアフターサービスの方が車両販売より粗利率が良いため、整備部門の人件費・育成費・維持費をカットすることは、経営規模が小さいほど難しくなってきます。そのため、見積書・契約書作成などにITシステムを導入して販売プロセスを効率化させることでコスト・カットを図り、それを整備部門に回す「ビジネス・サイクル」の構造をおすすめします。
サブディーラーの場合は開発・生産・PRに要するコストが発生せず、ユーザーは各メーカー公式HPやカタログの情報だけで、現車をチェックすることなく購入を決めるのがほとんどですから、販売部門はできる限りシェイプアップしたほうが良いでしょう。
一方、中古車ディーラーの場合、現車を見たうえで契約することがほとんどであり、セールスマンの腕次第で利益が大きく左右するため、IT導入によるプロセスの効率化と同時に、販売担当者のスキルアップを目的とした、研修会・勉強会を頻繁に実施しましょう。
アフターサービスのうち、もっとも粗利率が高いのは板金塗装ですが、現在では塗装条件や損傷状況入力と修復箇所の画像UPだけで、自動的に見積書などが作成される「クラウド型板金塗装システム」もリリースされているので、導入を検討してもいいかもしれません。
課題クリアと収益化に向けてのポイント2「大胆な経営方針の変更」
どんなビジネスにも言えることですが、収益向上を図り、あまりに多くの商品・サービスに手を出してしまうと、業務の多様化・原価率向上・ロス増加などによってかえって業績が悪化することも。市場が成長期にあった頃ならともかく、冷え込みが顕著になってきた現在では、時に不採算部門を切り捨てる覚悟も必要であり、サブディーラーは修理・板金などの本業に専念、中古車ディーラーは車種・タイプ特化型に転換することで業務を効率化できます。
また、部門ごとの収益率・稼働率をITの活用によって見える化・分析し、会社の貴重な人的・物的財産を最適配分することも、ディーラー業界を取り巻く現状が厳しい中生き残っていくために業務改善施策といえます。
課題クリアと収益化に向けてのポイント3「所属スタッフの業態管理」
IT活用や経営方針の大胆な変更も必要ですが、企業にとって最も欠かすことができないのは人です。労働環境改善や報酬UPなどの取り組みをしなければ、人材確保はおろか従業員が外部に流出する可能性まであります。
ここで、「ウチは少数で経営している小さいディーラーだから不要だ」と諦めてはなりません。なぜなら現在リリースされている車両管理システムを導入すれば、低コストかつ簡単に保有車両と従業員の動態をマネジメントできるからです。車両管理システムで動態管理を徹底することで、次のように自動車ディーラーは多くのメリットがを得ることができます。
- 外出した従業員の確実な勤怠管理に伴う「労働環境改善」
- 安全運転意識向上による「事故発生リスクの抑制」
- 稼働率の低い車両の処分による「維持・管理コストカット」
- 販売・アフターサービス時に提供する代車の「適切な管理」
また、「車両管理システム全車導入!」というキャッチ・フレーズを掲げるだけで、交通事故撲滅という自動車社会全体の課題へ真剣に取り組んでいることを消費者や取引先企業にアピールできるため、企業イメージ向上という二次的メリットも期待できるのです。
まとめ
今回は、新車・中古車ディーラーそれぞれの現状と課題をあげ、収益化を図るポイントを解説しました。
後編では、規模に関係なく手軽に導入できるうえ、業務効率化・収益UP効果を期待できる具体的な車両管理システムの運用方法について、実際に導入を進めているメーカー系ディーラーの事例を交えながら解説します。
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