物流業界もシェアリングサービスが常識になる?
前回は物流業界におけるラストワンマイルの問題について触れましたが、最近では新たな物流のプラットフォームが次々と誕生しています。人や時間、場所や自動車の空き時間を貸し出すシェアリングエコノミー。そのサービスが物流業界でも広まりつつあるようです。
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一般的になってきたシェアリングサービス
荷物はこんなにあるのにドライバーの数が追いつかない。再配達が多すぎて通常の荷物と合わせると人手が全然追いつかない…。
国土交通省もドライバーだけでなくみんなで課題に向き合うべく「COOL CHOICEできるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」など、次々と施策を打ち出し再配達防止の対策を推し進めていますが、様々な要因と悪循環によって解決までの道のりが長いとされているラストワンマイル。
その対応策の一つとして昨今増えているサービスが物流におけるマッチングプラットフォーム。最近では空き時間の車を使って移動したい人とドライバーを繋げるUberのライドシェアサービスを筆頭に、空いている駐車場と駐車場を探しているドライバーをマッチングさせるakippaなど、私たちの生活に身近なところでシェアリングサービスは浸透してきました。
そして物流業界でもパソコンやスマホで受けたスポット配送の依頼を、中小の運送会社と直接マッチングさせるサービスが相次いで登場しています。
次々と飛び出す物流業界のマッチング
DoCoMAP
2017年9月、富士運輸、トラボックス、イーソーコ、NTTドコモの4社が集結し、全国で空車情報を共有する物流情報プラットフォームサービス、docomap JAPANを11月1日より開始すると発表しま
空車情報の共有にフォーカスし、トラック運送会社、倉庫管理会社、荷主の配送に関わるプレイヤーがサービスを利用できるプラットフォームを構築、富士運輸が設立した株式会社ドコマップジャパンがサービスの窓口を担います。
現在、運送業界における平均空車回送率はなんと30%にものぼると言われています。この場合、ドライバーの労働時間・車両費・燃料代・高速代全てが損失の対象になっているのです。ドライバー不足が激化する中、特に注目されているのは中長距離トラックが荷物を届けた後、空のまま戻らねばならない空車。これを解消し、うまく活用すれば大幅な効率アップにつながるのでは——。
そこで空車情報を共有して空車の回送率を低減しよう、というのがこのサービス。GPS機能を備えた車両位置情報管理システムDoCoMAPをトラックに装着しGoogle Maps上にリアルタイムで空車車両を見える化して公開。運送業同士で車両の手配を行い、需要と供給のバランスの適正化をはかります。
同様のサービスはすでに国内でもちらほらと提供されています。
PickGo
物流版Uberと言われている、荷主とドライバーをマッチングするサービスPickGoは、サービスの開始から1年で案件数15倍、配送車両登録数2,000台を突破し、9月1日に数社から3.4億円を調達して話題になりました。CBcloud株式会社が提供しているこのサービスは、軽貨物を取り扱うドライバーは「個人事業主」が多いということに着目し、軽貨物ドライバーと荷主を「マッチング」させることでラストワンマイル問題を解決するべく生まれたサービス。同サービスに登録されたドライバーが、荷主が登録した仕事をピックアップしていくシステムで、マッチングスピードも15分以内、効率のよい配送によってドライバーの給与水準も塗り替えているのだそう。
今まで荷物を届けて終わりだったところ、Uberのように各ドライバーに評価の声が残る機能で感謝の声がもらえたドライバーはモチベーションも自然と上がるのだとか。2017年8月からは個人向けにもサービスを展開し、ソファやデスクなどの少し大きめの荷物の配達や荷物の少ない単身の引越しといった需要を見込んでいます。
ハコベル
2015年7月からすでにシェアリングサービスとしてスタートしている、ラクスル株式会社が提供のハコベル-hacobell-。PickGoに近いサービス形態ですが、こちらは運送会社と荷主をマッチングするシステム。主にBtoB向けで、利用する車種によって金額が変わりますが配送会社の空き時間を利用しているため価格は定額、安価。バイク便の大型版といったイメージで、マッチングから最短1時間で配送が完了する、早い・安い・安心を実現しています。
ハコベルはさらに数カ所から最大300ヶ所程度に及ぶ配送先への配送ルートの組み立てにおいて、最も経済的な最適ルートを簡単に作成できる独自のシステムを開発、このシステムを元にして経済的に最適なルートを試算するコンサルティングサービスを無料で開始しました。現在はハコベルの利用者のみこのサービスを提供しているとのこと。
このサービスは集荷・配送先の住所、荷量、積み下ろしの作業時間がわかれば、それらの情報をもとに経済的に最適なルートと必要な車両台数、配送の所要時間を簡単に試算できるというもの。同サービスの利用をした実証実験では、配送ルート作成などの業務にかかる時間が1日3時間から10分に短縮され、生産性が18倍向上した事例もあるそう。
iGOQ
SBSロジコム株式会社も同社の新たな事業として、物流シェアリングプラットフォームiGOQ(イゴーク)を10月末から開始予定。競合サービスの多くが「契約が成立すれば手数料を徴収する」というモデルであることに対し、利用運送業としてSBSグループが契約に責任を負うビジネスモデルとすること、さらには荷主にとってニーズに適合する車両があれば「即座に発注」することが可能な点などで差別化をはかっています。
もっと身近な人が配達員になる…?
どんどん広がりを見せる物流業界のシェアリングサービスですが、さらにこんな形態も…。
DIAq
バイク便大手のセルートが開発した配送アプリDIAq(ダイヤク)は、いますぐ荷物を届けたい人が、近くにいるドライバーやライダー、メッセンジャーを探して配達を依頼するスマートフォンのアプリ。
先ほど紹介したマッチングサービスとの違いは、ドライバー登録可能者の幅が広く、軽ワゴン車や中型以上のバイク(排気量125cc超)を使う従来の軽貨物運送業者に加えて、自転車や125cc以下の原付バイクを持つ一般の人も登録可能であること。配達経験がない学生から主婦までもがドライバーとして登録でき、隙間時間を利用して配達業務を行うことができます。まわりにいる身近な人が配達員になっていた、なんてこともありそうですね。
今後、物流業界のラストワンマイルを解決していくには、配送会社やドライバーだけではなく個人との連携もが大きな力なっていくかもしれません。