東南アジアで注目を集める車両管理サービス
「クラウドサービス」「スマートフォン」「テレマティクス」などここ十数年ほどの間に続々と誕生した、新たなテクノロジー。
これらはまさに今この瞬間もあらゆる業界に変化を引き起こしており、車の管理についても例外ではありません。ほんの数年前までは固定の車載デバイスを取り付け車を管理することが一般的でした。
現時点ではまだそれが主流ではありますが、テクノロジーを活用したより安価で多機能な車両管理サービスも登場してきおり、「車両管理のあり方」にも影響を与えています。そしてこれは何もアメリカや日本に限った話ではありません。
これまでも車両管理や物流業界に起こっている変化については何度か扱ってきましたが、今回は成長著しい東南アジアにおいて生まれてきている車両管理サービスを紹介します。
3分でわかるSmartDrive Fleet
SmartDrive Fleet導入実績
SmartDrive Fleet は、アルコールチェック記録をはじめ「安全運転管理・法令遵守・DX」3つの観点から業務で車両を利用する企業の様々な課題をワンストップで解決できるクラウド型車両管理サービスです。簡潔にサービス概要をご紹介しています。
目次
Verizonが24億ドルで買収したFleetmatics
東南アジア各国の車両管理サービスを紹介する前に、少しだけ昨今の市場動向について触れておきます。
何と言っても外せないのが約1年前の2016年8月、大手通信会社のVerizonがアイルランドのダブリンに拠点を置いていたFleetmaticsを24億ドルで買収したというニュース。当時VerizonはYahooをはじめ積極的にITベンチャーやスタートアップ企業を買収していました。子会社であるVerizon Telematicsでテレマティクス関連の事業を行っていたこともあり、買収後の事業シナジーが見込まれて、またエンタープライズ向けのサービス拡充を狙って、Fleetmaticsの買収に至ったとされています。
Fleetmaticsが提供しているのは、企業が自社で抱える社用車やドライバーの動向をオンライン上で簡単に管理できるという典型的な車両管理サービス。2004年に設立された比較的新しいベンチャー企業ですが、TechCrunchによると2016年8月時点で3万7000社の顧客、73万7000台の登録車両を抱えるほどに成長していたといいます。
2016年9月末の段階では顧客数は約4万2000社に、登録車両は82万6000台になっているとこのこと。買収金額の大きさもさることながら、顧客数や登録車両の数と成長率をみても、車両管理サービスのインパクトの大きさがわかっていただけるのではないでしょうか。(ちなみにFleetmaticsは現在アイルランドやアメリカのほか、イギリスやオーストラリアにも拠点を設けグローバル展開へ本腰を入れています)
東南アジア各国でも注目を集め始めた車両管理サービス
このようにアメリカやヨーロッパではこのような車両管理サービスがすでに普及し始めており、日本でも徐々にこの波は訪れています。(興味がある方は、【目的別】社用車を徹底管理する車両管理システム21選などの記事も合わせてご覧ください)
そして今後成長が見込まれる東南アジア各国においても、車両管理サービスを提供するベンチャー企業も複数生まれ注目を集め始めているのです。特に東南アジアの中でも経済成長が著しいエリアでは、それに伴い車両台数・物流量ともに増加しています。
その反面交通ルールの面が十分に整備されていないこともあり、増加傾向にある交通事故が大きな問題となっています。その解決策として、車両管理サービスへの期待も高まっているのです。
インドネシア – Digitalinstincts Teknologi
2008年に設立されたDigitalinstincts Teknologiは車両管理サービスを含むIoT事業を営むインドネシア発のベンチャー企業です。
主力サービスの「Traxia Roadtek」は特に物流の効率化を図る車両管理サービス。トラックの配送ルート最適化や各車両・ドライバーの動態管理、配送状況の分析・レポーティングなどの機能を備えており、単なる管理ツールではなく、取得したデータから現状の課題やより効率的な配送方法を発見できる分析ツールといえるでしょう。
実はこの会社、2016年10月に双日と資本業務提携を結んでいます。双日の子会社である日商エレクトロニクスでは日本国内でテレマティクスサービスを提供していますから、Digitalinstincts Teknologiと組んでインドネシアにおける車両管理サービス市場を取りにいくのかもしれません。
シンガポール – Raxel Telematics
シンガポールに拠点を置くRaxel Telematicsはテレマティクス保険サービスや車両管理サービスを提供するIoTカンパニーです。収集した走行データを分析する力が特徴で、運送会社や保険会社を顧客に抱えます。
運送会社向けに提供している車両管理サービスでは通常の車両管理機能にくわえ、運転データを元に「ドライバーのスコア」を算出し、報酬を与えるような運転診断機能も備えています。2015年にはシンガポール国内のベンチャーキャピタルからも資金調達を実施しました。
またCARTRACKという企業もシンガポール国内で存在感を発揮している会社です。この会社は個人向け、法人向けそれぞれの車両管理サービスを提供しているのはもちろん、法人向けでもトラックや一般的な社用車用の管理システムに加えて重機向けのシステムも提供しているという豊富なラインナップが特徴。
シンガポールに東南アジアの拠点を設けていることもあって国内でも先駆者のような存在ですが、もともとはアフリカやヨーロッパで事業展開をしており実績のある会社です。
マレーシア – KATSANA
マレーシアで勢いのあるスタートアップの1つ、KATSANA。この会社も法人向けにオンライン上で保有する車やドライバーの状況をリアルタイムでチェックできるツールを提供しています。一見一般的な車両管理サービスに見えるかもしれませんが、面白いのは解決しようとしている根本の課題が日本のサービスなどと全く違うことです。
というのはKATSANAでは個人のドライバー向けにも車両管理サービスを提供しているのですが、その背景には「盗難被害の多さ」という問題があります。なんとマレーシアは世界で6番目に車の盗難が多く、24分ごとに1台の車が失われているとも言われるほど。
この社会問題を解決するために立ち上げられたのがKATSANAです。そのため主要な機能は日本国内で提供されているサービスと大きくは違いませんが、GPSを通じて車の居場所が常に分かること、運転履歴を細かく記録・追跡できることが大きく打ち出されているのが特徴といえるでしょう。
自動車の盗難が減ることは保険会社にとっても大きなメリットがあるため、マレーシア国内でも大きな期待を集める会社となっています。
タイ / ミャンマー – DRVR
ウェブやモバイルアプリから自社が抱える車両の動向をリアルタイムにキャッチできるサービスを展開しているのが、タイに本拠地を構えるDRVRです。こちらの企業も特徴はデータ分析力。センサーデバイスによって取得した運転記録や交通情報などをもとに、DRVR ENGINEで解析し課題を発見します。
以前タイ・バンコクの交通課題と物流の今という記事でも紹介したとおり、タイは交通事故の多さが国の課題になっています。そのため単に車両を効率的に管理・運用することだけでなく、データを活用して交通事故を減らすことも大きな使命となっており、実証実験などにも積極的です。
タイ国内だけでなくミャンマーやカンボジアでもサービスを展開しているDRVRですが、こちらの記事を読んでいてこれらの国ならではの車両管理サービスの需要に驚きました。なんでもタイやミャンマーの物流業界では、トラックのドライバーによる燃料の盗難が問題となっているそうです。
ドライバーがトラックの燃料の一部を盗んでしまうことがよくあるそうで、それを防ぐために車の走行データを管理することにニーズがあるんだとか。日本だと信じられない光景ですよね。
今回紹介したサービスはあくまで一例ですが、今後東南アジアの経済が成長するに従って車両台数や物流量も増えていくでしょうからニーズはさらに高まり新たなサービスも生まれていくのではないでしょうか。合わせて日本の事業者が東南アジアに展開するということもありえるでしょう。