目的によって使い分ける!アルコールチェッカーのタイプについてまとめてみた
道交法改正を受け、アルコールチェッカーを新たに購入しようと考えている企業や事業者も多いはず。しかしアルコールチェッカーは安価なものから精密な結果が表示されるなものまで、様々なタイプの商品が販売されており、その中から業種や事業規模・目的などに合ったものを選ぶのは容易ではありません。
この記事では、アルコールチェッカーのタイプとそれぞれのメリット・デメリットについてまとめました。購入の際に、ぜひご一読ください。
目次
2022年10月から開始とされていたアルコール検知器の使用義務化は「当面の間延期」とされていました。しかしその後「2023年12月1日より施行予定」として同年6月9日にパブリックコメントの募集が開始されています。
詳しくは【速報】アルコールチェック検知器の使用義務化が2023年12月1日に施行予定! -パブリックコメント募集開始-を御覧ください。
「検知方式」の違いとそれぞれのメリット・デメリット
過去に飲酒検査を経験したことがある方はご存知だと思いますが、アルコールチェッカーには、呼気中のアルコールに反応し体内のアルコール濃度を測定する、センサーが内蔵されています。このセンサーには大きく「半導体式ガスセンサー」と「電気化学式センサー」の2種類があり、それぞれアルコール濃度を感知する原理が異なります。
安価で手軽!「半導体式ガスセンサー」
半導体式ガスセンサーは、センサー内に組み込まれている金属酸化物半導体に、呼気中に含まれている酸素が接触した時に生じる抵抗値の変化によって、ガス濃度を測定するセンサーです。金属酸化物半導体は、酸素に触れると酸化しその濃度に応じ抵抗値が下がり、電気が流れやすくなる性質を持っていますが、呼気にアルコールが混ざって酸素濃度が薄くなると、その分抵抗値の低下が鈍化し電気が流れにくくなります。
つまり、同じ電圧で電気を金属酸化物半導体に流したのに、その後測定された電流が低かった場合、アルコールを含むガスの影響によって、呼気中の酸素濃度が薄くなった「=体にアルコールが残っている」と判定されるわけです。半導体式ガスセンサーは、センサーが小型でアルコール濃度を測定する原理も、微量の電気を流して変動値を測定するだけと至って単純なため、測定時間が短く端末も安いのが利点。
ただし、虫歯予防で有名なガムや歯磨き粉などに含まれていることがあるキシリトールや、持病の治療に飲んでいる薬品など、アルコール以外の物質にも反応する可能性があるため、周囲の状況に左右されやすいのがデメリットです。
検知精度に優れる「電気化学式センサー」
一方、燃料電池式と呼ばれることもある電気化学式センサーは、呼気中に含まれているアルコールガスを文字通り燃料として電気を発生させ、その値を測定することでアルコールの有無を判断しています。
電気の発生量が多いほど呼気中のアルコール濃度が高いと判定されますが、ガス欠の自動車が全く動かないように、燃料であるアルコールガスがないと全く反応しないため、アルコール以外のガスに反応しにくく、周囲の状況にあまり影響されないのがメリット。ただ、検知原理がやや複雑なため、半導体式ガスセンサーよりセンサーの反応時間が遅く、測定結果が出るまでやや時間がかかってしまうこと、そして販売価格が若干ながら高価でメンテンナンスにもコストを要するのがデメリットです。
ダブルセンサー式は両者のいいとこ取り?
上記した2つのタイプのメリットを持つハイブリット版と言えるのが、ダブルセンサー式(半導体センサー+電気化学式センサー)です。最新式であるものの仕組みは非常にシンプルで、予備検査と言える半導体式センサーで何らかの異常があるか速やかに判断した後、電気化学式センサーで「精密検査」をする仕組みになっているため、予備検査で異常なしと判定された場合はそこで検査終了。
短い測定時間で正確な結果を得られると話題になっていますが、2つのセンサーを有しているため、販売価格がどうしても高くなってしまうのが弱点です。
チェッカーを選ぶ上で前提となるアルコールチェック義務化については、以下記事にて詳しく学べます。
【2024年最新版】アルコールチェック義務化を徹底解説!対象者は?安全運転管理者の対応は?
利便性の高い「モバイル型」か、ごまかしの効かない「据置型」か
前項では、検知方式の違いについて整理しましたが、アルコールチェッカーはその他にも、サイズ感や検査の場所によって、持ち運び可能な「モバイル型」と事務所や営業所に設置して使う「据置型」に分けられます。
モバイル型アルコールチェッカーの特徴とおすすめのケース
モバイル型アルコールチェッカーは、片手にすっぽりと収まる程度の大きさで軽量なため持ち運びしやすく、時間や場所を問わず手軽に飲酒検査できるうえ、比較的安価な商品が多いのも特徴です。そのため、プライベートはもちろん、事務所の外へ営業に出かけることが多い渉外担当者や、長距離・遠距離ドライバーのこまめなアルコールチェックにピッタリですし、検査対象者が多くたくさんの端末を導入しなければならないケースにおすすめです。
ただし、管理者の目が届かない場所で検査する場合、なりすましなどの不正検査が行われてしまう可能性は否定できません。とはいえ現在では、スマホと連動し画像や動画などで本人確認しながら、リアルタイムで飲酒検査できる、不正防止機能付きのモバイル型アルコールチェッカーも、各メーカーからリリースされています。
据置型アルコールチェッカーの特徴とおすすめのケース
据置型アルコールチェッカーは、サイズ・重量・電源確保の問題で持ち運びは難しいですが、必然的に管理者や上司・同僚の目が届く場所で検査するため、不正を防げるというメリットがあります。
検査の精度的にもモバイル型より優れているモノが多いため、すでにアルコールチェックが義務化されている運送業者などでは導入が進んでおり、ドライバーが必ず出発前・到着後に事務所を出入りする業者なら、各事務所に1台ずつ設置すれば事足ります。ただし、地元密着型の企業で社用車の台数が多く、同時刻に出発・到着することが多い場合、据置型1台だけだと長い検査待ち時間が発生し、業務に支障が出かねません。
とはいえ、据置型を複数台導入するとコストがかさんでしまうので、精度の高いモバイル型数台と併用するスタイルの方が、効率よく経済的になるケースもあります。
白ナンバーに関してのチェッカー選択には以下記事もご活用ください。
白ナンバーのアルコールチェックには携帯型の検知器をおススメする理由
検査結果の「記録方式」も重要なポイント
アルコールチェックは飲酒運転を防ぐため、毎日欠かさず実施すべきですので、その日・その時に飲酒していないことを確認できるのはもちろん、日常の検査結果を記録・保存し、それをもとに「飲酒したら運転しない」ことを、徹底的に習慣付けることが大切です。
2022年4月を予定している法改正(※)後は、検査結果の記録保存も義務化されるため、企業の経営者や安全運転管理者は、確認した記録を点呼記録簿や運転日誌などの書面、またはデジタルデータとして「1年間」保存しなければなりません。
※道路交通法施行規則の改正・・・有償で荷物や人を運ぶ「緑ナンバー(黒ナンバー)」だけでなく、「白ナンバー(黄ナンバー)」であっても乗用車なら5台以上、定員11名以上の車両なら1台以上保有している事業所は施行の対象となる。
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記録機能なし&本体保存タイプ
最近は少なくなりましたが、検査のたびに1回きりの検査結果を表示するだけで、記録・保存機能がない端末も存在します。もし、そのまま使い続ける場合は検査結果を毎回、手書きやPC入力で管理しましょう。また、内蔵されたメモリーチップやSDカードに、検査結果を保存・記録できる「本体保存タイプ」もありますが、保存可能件数に限りがあるため、上書きされないうちに、PCなどに転送・保存することが必要です。
プリントアウトタイプ
アルコールチェッカー本体に、レジスターのような検査結果のプリントアウト機能が付いているタイプで、サイズの関係上、据置型がほとんど。最近ではやや画像は粗目ですが、顔写真を検査結果と一緒にプリントアウトできる機種もあります。別途作成した点呼記録簿や、運行日誌などに添付して管理する形になりますが、年数が経過すると劣化して印字が薄くなったり、読み取れなくなったりする可能性もあるため管理には注意が必要です。
専用ソフトor パソコン接続タイプ
近年、モバイル型・据置型ともに増えてきているのが、付属・別売りされている専用ソフトやUSBなどを用い、アルコールチェッカーとPCを連動させ、PC上で氏名・日時・検査結果などを保存・管理するタイプです。
手書き保存より転記ミスが起きにくいですし、本体保存タイプより圧倒的に保存可能件数が多いうえ、検索・並び変え機能を活用することで、検査データの整理・分析が容易になります。
クラウド保存タイプ
モバイル型アルコールチェッカーの進化版で、Bluetoothでスマートフォンと連携し、遠隔地で実施した飲酒検査の測定結果はもちろん、日時・場所・氏名・顔写真をクラウド上に保存するタイプです。なりすまし検査などの不正防止に効果を発揮しますし、管理者側は検査結果をリアルタイムで確認できるほか、必要に応じて検査データをダウンロード可能なため、アルコールチェックと記録・保存の義務化が迫る現在、徐々にシェアを伸ばしています。
まとめ
まもなくアルコールチェック義務の対象事業者が拡大されますが、企業としては、飲酒運転とそれに起因する痛ましい事故の撲滅のため、アルコールチェッカーは欠かすことのできない重要なツールです。アルコールチェッカーには様々なタイプが存在し、サイズ感や性能・価格帯も異なります。業種や事業規模、そして目的に合ったアルコールチェッカーを適切に選ぶことこそ、忌まわしい飲酒事故ゼロへの第一歩なるのではないでしょうか。