運送業や建設業は必見!? 特殊車両通行許可制度について
頻発する豪雨や震災などの自然災害発生時に被災地域の物流確保や早期復旧を支援するためや、物流トラックの人手不足解消にも特殊車両が多く必要とされています。
また、道路は誰もが利用する公共のものであるため、狭い道路に大型車を通行させる場合は申請のうえ、許可をもらわなくてはなりません。しかし、国の制度として、法令遵守の観点から年々取り締まりが厳しくなっており、そう簡単には許可を取得できないようです。
この記事では、運行管理者でなくとも知っておきたい特殊車両通行許可制度について、詳しく解説をします。
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目次
カンタンではない特殊車両通行許可の申請問題
公道の走行が可能な車は、道路の保全や事故を防ぐことを目的として大きさや重さの上限が決められています。そのため、大規模工事や物流などで上限を超えた特殊車両を走行させる場合、道路管理者からの通行許可が必要となります。
昨今、オリンピック開催に伴う大規模工事や物流ドライバー不足による車両の大型化の需要が拡大していることから、特殊車両通行許可の申請が急増しています。そしてこの需要拡大によって特車通行許可制度の許可件数は2013年の約26万件から2017年は約37万件へ5年で1.4倍も増加し、審査日数も約23日から約50日へと2.2倍も増加しているのです。
国土交通省は2019年3月までに現行2年間の許可期間を基本は3年に延長し、優良事業者は4年に延長する方針を固める等対策を打っていますが、「審査が追いつかず対応しきれない」「諸外国と比べて基準が厳しく硬直化しているため、生産性の高い新車両や新技術の活用が進まない」などの理由から、現在は上記のように審査期間の長期化が問題になっています。
実際に許可が認められるまではおよそ2~3ヵ月、そこで申請書に不備が見つかった場合、そこからさらに3ヵ月かかり、結果として約半年かかる場合もあるといいます。こうした審査期間の長期化は、急な輸送需要に対応できないだけでなく、円滑な輸送を妨げる要因にもなっているのです。
そのため、許可が下りるまで待っていると仕事にならない、すべてのルートで許可を得るのが難しいなど、違法とは理解しながら許可無しで運行している事業者も少なくありません。事業者側としては、トレーラーなど特殊車両を納車したら早急に運行させたいでしょうが、ここで違反をしてしまうと厳しい処置だけでなく、社名が公表されるなど社会的な影響も強く受けてしまうため、事業継続に影響を及ぼしかねないのです。
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特殊車両通行許可制度と申請方法
特殊車両とは、車両の構造が特殊な車両、あるいは輸送する貨物が特殊な車両を指します。具体的には、幅・長さ・高さ・総重量のいずれかが一般的制限値を超えたり、橋、高架の道路、トンネル等で総重量または高さが制限値を超えたりする車両のことです。
近年、車も運搬される貨物も大型化して重量も重くなっています。これらの車両によって道路がこわされる事故が増えたため、道路法第47条の2第1項にてこの制度が定められました。
道路法に基づく一般的制限値
幅 | 2.5m以下 |
長さ | 12.0m以下 |
高さ | 高速・指定道路:25.0その他の道路:23.8m以下 |
総重量 | 高速・指定道路:25.0tその他の道路:20.0t |
軸重 | 10.0t |
隣接軸重 | 18t: 隣り合う車軸の軸距が1.8m未満19t: 隣り合う車軸の軸距が1.3m未満、かつ隣り合う車軸の軸重が9.5t以下20t: 隣り合う車軸の軸距が1.8m以上 |
輪荷重 | 5.0t |
最小回転半径 | 12.0m |
上記の一般的制限値で一つでも超えているものがあれば、特殊車両通行許可が必要です。また、重さは荷物を積んだ状態での重さですので注意してください。さまざまな形の車両がありますが、一般的には次のような車種が該当するとされています。
・車両の構造が特殊な車両
車両の構造が特殊なため一般的制限値のいずれかが超える車両。たとえば、トラッククレーン等自走式建設機械、トレーラ連結車の特例5車種(バン型、タンク型、幌枠型、コンテナ用、自動車の運搬用)のほか、あおり型、スタンション型、船底型の追加3車種のこと。
・貨物が特殊な車両
分割不可能のため、一般的制限値のいずれかを超える建設機械、大型発電機、電車の車体、電柱などの貨物のこと。
申請方法
上記の一般制限値を超える車両で道路を走行するときは、車両の諸元と積載物の内容、通行経路、通行の日時などを所定の書類に記入し、道路管理者に特殊車両通行許可の申請を行います。申請は必ずしも運送業者が行わなくてはならないという決まりはなく、荷主(発注者)が申請することも可能です。申請する場所は国道事務所や地方自治体の道路管理者など、走行する道路によって異なります。申請の際は国道事務所(または河川国道事務所)に問い合わせて確認をしてください。
申請の手段はインターネット経由のオンライン申請、CD-ROMの申請、手書きでの申請、3つの手段がありますが、個別審査がない場合は許可証発行までの期間が短縮されることや手続きの簡素化を考え、オンライン申請がベストです。
申請に必要な書類
申請は次の書類を作成して提出します。
・特殊車両通行許可申請書 一部
・車両に関する説明書 二部
・通行経路表 二部
・経路図 二部+申請車両数
・自動車検査症の写し 一部
・包括申請(※)の場合は車両内訳書 二部+申請車両数
※包括申請とは、申請車両台数が2台以上の申請をいいます。ただし、車種、通行経路、積載貨物および通行期間が同じものでなければなりません。片道ごとに二つの申請とする場合は、積車状態(往路)と空車状態(復路)でそれぞれ審査され通行条件が付されます。この場合、両方の許可証を車両に携帯しなければなりません。
オンライン申請は電子申請のため車両携行書類以外は出力する必要はありませんが、作成内容を確認するときなどを考慮し、すべての申請書類を出力することをオススメします。
申請時に必要な手数料
申請時には手数料が必要です。この手数料は、関係する道路管理者への協議等の経費で実費を勘案して決められています。その額は、国の機関の窓口では200円(1経路)、県の窓口では、条令によって多少異なる場合があります。1経路は片道のみですので、往復で2経路、という計算になります。
たとえば、6つのルートを往復申請する場合、申請経路数は12経路として扱われます。手数料は次のように計算します。
【申請車両台数が4台のとき】
4台×(12経路)×200円=9,600円
審査にかかる期間
審査は走行する道路や車両によって内容が異なるので、道路情報便覧を基に重量、幅、高さ、走行する道路の状況などについて実施されます。
標準の処理期間は新規申請及び変更申請の場合が3週間以内、更新申請の場合は2週間以内とされています。しかし前述しましたように、現在は申請が増えているためこの期間内で完了することはほぼありません。
中にはインターネットで混雑状況が把握できる機関もありますので、全国の国道事務所などの混雑状況を把握して混雑の少ない国道事務所などに申請を行うことが、許可取得への近道になる場合もあるようです。
許可を取らずに走行すると…重い罰則を受ける
特殊車両通行許可制度による違反行為
違反行為には、無許可で運行する、許可を得ていない経路を運行する、許可を受けた限度以上の荷物を積んで運行する、などがあります。違反を繰り返し行うと、行政指導で国道事務所に呼び出されたり、国土交通省のホームページで社名と指導内容が公表されたり、せっかく取得できた特殊車両通行許可の取り消しが行われます。
また、特殊車両の運行許可がなかったり、許可条件に反して特殊な車両を通行させたりしたドライバー、または道路監理員の命令に違反したドライバーには、罰則が定められています。この罰則は、違反したドライバーだけでなく、事業者にも同じように科されるものです。国土交通省のサイトでは罰則を次のように記されています。
- 車両の通行が禁止または制限されている場合、これに違反して通行させた者、許可条件に違反した者は
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金(道路法第103条第4項) - 道路管理者または道路監理員の通行の中止などの命令に違反した者
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金 (道路法第103条第5項) - 車両の幅、長さ、高さ、重さ、最小回転半径などで制限を超える車両を道路管理者の許可なく通行させた者、または許可条件に違反して通行させた者は
100万円以下の罰金 (道路法第104条第1項) - 特殊な車両を通行させるとき、許可証を備え付けていなかった者は
100万円以下の罰金(道路法第104条第2項) - 車両の幅等、個別的に制限されている道路に車両を通行させて、通行の中止、総重量の軽減、徐行などの道路管理者の命令を受けながら、それに違反した者は
50万円以下の罰金(道路法第105条) - 法人の代表又は法人若しくは人の代理人、使用人その他従業者が、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または事業主に対しても同様の罰金を科する(道路法第107条)
上記6にも記載がありますが、取り締まりを受けたのはドライバーだから事業者側は関係ない、という意見は当然ながら通用しません。罰則条項には両罰規定が設けられているので、特種車両通行許可を受けずに走行すると、ドライバーと事業者側どちらにも罰則規則が適用されてしまうのです。
違反が続けば、上記のような行政的な罰則だけでなく、事業者は様々なデメリットを受けることになります。それは単なる罰則だけではなく、社会的な信頼性を失うということです。
ドライバーと企業、どちらにも知識と意識づけを
特殊車両通行許可制度について説明しましたが、許可を取得したら終わりではなく、事業者や運行管理者は日々の運行管理の中でドライバーに対してしっかりとその知識の伝達や指導を行っていく必要があります。万が一、申請したルートをドライバーが認識していなかったら取締の対象になってしまうかもしれませんし、大きな事故につながる可能性も0ではありません。そして事業者や運行管理者はその責任を負わなくてはならないのです。
より高度な車両管理を行うためには、「SmartDrive Fleet」のような走行データを自動取得できるツールを活用し、申請ルートと実際の走行データをつけあわせて確認やアドバイスをするなどして、日々、ドライバーへ働きかけることが大事です。そうすればドライバーも制度について理解を深めるので、未然にルール違反を防ぐことができます。
SmartDrive Fleetでは走行データだけでなくドライバーの運転の癖も可視化することができます。ですので、ルール違反を未然に防止するだけでなく、危険運転を防止するための安全運転対策にも役立ちますので、結果として交通事故への処理費用の削減や車両保険料の削減といったプラスの効果も大いに期待することができるのです。ドライバーと事業者、両者の安全と安心、そして企業の成長を考えて、ぜひご検討のうえ、ご活用ください。
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