安全運転のポイントと最新の運転サポート技術
クルマを運転する方は誰もが「事故を起こさない」ことを心がけているはずです。しかしながら、交通事故で亡くなる人の数はここ数年にわたって毎年4,000人を超えており、軽傷を含めた事故を合わせるとその数はさらに膨れ上がります。
自動車教習所では安全運転のマナーに関する様々な授業を受けると思いますが、残念ながらマナー違反をする人が後を絶たないのが現状です。また、先にも述べた年間による交通事故死亡者数の「4,000」という数字の中に、65歳以上の高齢者による死亡事故が半数を占めており、少子高齢化の影響も含めて社会問題となっています。
こうした理由も含め、近年ではカーナビやドライブレコーダーなどに安全運転をサポートする機能が搭載されるなど、最新テクノロジーにより交通事故を回避する技術が進化。各メーカーが開発に力を入れ、しのぎを削っている状態です。
ではそもそも「安全運転を行う」ということは、一体どういうことなのでしょうか?
基本的なことを含め、こちらでは安全運転のポイントと、各種デバイス機器による最新の運転サポート技術をご紹介させていただきます。
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目次
安全運転のポイントとは
安全に運転を行うには気を付けておきたいポイントがいくつかあります。「自分を事故から守る」という観点から考えた、運転スキルや秘訣のようなものですが、大まかに分けると以下の5点となります。
- 車間距離に注意して接触事故を避ける
- 自車の存在を周囲にアピールする
- 他車とのコミュニケーションを図る
- 精神をコントロールして正常な状態に保つ
- 事故に繋がらないように準備・整備をしておく
これらを意識するだけでも、交通事故を招く確率が減るはずです。では、各ポイントを詳しくご説明します。
1 . 車間距離に注意して接触事故を避ける
当然の話ですが、クルマ同士が接触しなければ事故は起こりません。また道路を利用する歩行者と自車の距離が離れていれば、衝突事故を避けることができます。「車間距離を取る」という心がけは、一見シンプルですが非常に大切な運転技術の一つです。
時々ノロノロ運転をしている前方車両にギリギリまで近付き、「煽る」という行為で迷惑をかけるドライバーがいますが、悲惨な事故を招くため絶対にやるべきではありません。慌てふためいた前方ドライバーが、急ブレーキを踏んで接触事故を引き起こし、その影響により玉突き事故へと発展することもあり得ます。
赤信号による停車時や駐車中の場合を除き、再び車両を発進させる時は素早く周囲の対象物(歩行者やバイク、車など)から離れて、接触事故を避ける運転を心がけておきましょう。
2. 自車の存在を周囲にアピールする
他のクルマや歩行者などが、自分の運転している車両を見失って接触事故を招くケースもあります。例えば深夜の走行中に、ヘッドライト(前照灯)を点灯せずに運転していたら、あなたの存在は闇に紛れて周囲に気付かれなくなり、突然歩行者が道路を横断して飛び出してくるかもしれません。
また、大型車両の死角に入って自分の存在を目立たなくすると、車線変更をしたバイクや対向車に追突される可能性も考えられます。このように、自車の存在を周囲に積極的にアピールすることや、自分の走行位置を知らせることは、とても大切な運転技術の一つなのです。
他にもクルマのボディーカラーが暖色系のものや、搭載されているランプの形状が大型の車種を選んで、ある程度「目立とう」とすることで事故を避けることもできます。初心者や高齢者のドライバーであれば、それぞれの運転標識(初心者マークなど)を目立つ場所に張り付ける工夫も必要となります。
3. 他車とのコミュニケーションを図る
自車の存在を周囲にアピールすることと同様に、自分の車がこれから行う動作を周りに伝えることは、交通事故を避ける最も大切なルールとなります。
車線変更によるウィンカーの方向指示、停車時のブレーキランプ点灯、大きな音を出すクラクションなど、いずれも他車とのコミュニケーションを図る上で重要な機能。これら装置の整備を怠って故障を招いた場合、思わぬ事故を引き起こす可能性があるため、日頃から点検をしておくことが必要です。
また、面倒だからと車線変更時や右折・左折時にウィンカーを出さない人もいますが、大事故に繋がるため絶対にやめましょう。こうした基本的なルールが守れない人は、他の車両とのコミュニケーションを拒否した状態にあり、トラブルの原因にもなり兼ねません。
他にも、不正改造によるランプ類の灯光色変更や、窓ガラスの着色フィルムを濃い色のものにするなど、これらは違法性の高い車となるため、場合によっては警察に注意を受ける可能性すらあります。他車との健全なコミュニケーションを図ることは、事故を避けるための基本となるので、しっかりと心がけましょう。
4. 体調や精神状態をコントロールして正常な状態に保つ
寝不足により判断力が低下している場合は、運転を避けたり仮眠を取るなどの対策をして、体調を整えることが大切です。また、マナー違反や荒い運転をする他の車両に対して、必要以上にイライラしたりせず、常に気持ちを落ち着けて運転することを心がけましょう。
体調や精神状態が安定しないで車を運転すると、思わぬ事故に繋がる可能性があるため、これらをコントロールすることはドライバーにとって大切な運転姿勢となります。特に、知り合いや家族を一緒に乗せて運転している場合、その命を預かるドライバーの責任はとても重いものです。交通事故の原因を生み出すのは、常にドライバーだということを忘れないで運転を心がけてください。
5 . 事故に繋がらないように準備・整備をしておく
先にも述べた、ウィンカーやブレーキランプの故障点検は言うまでもなく、雨の日による慎重なドライビングや、冬の季節での路面凍結によるタイヤ交換など、運転する前の事前準備は非常に大切な要素となります。また、シートベルトの装着、ミラーの位置の調整、ガラスの曇り具合なども冷静に確認することも重要です。
運転中においても交通状況は常に変化しているため、万が一のために様々な対策を頭の中で練っておくことも必要となります。突然の子供の飛び出しなどにも十分注意したり、フラフラ運転をする車両から離れたりするなど、危険を避けるための感性を日頃から磨くこともドライバーにとっては不可欠です。
カーナビの安全運転サポート機能とその仕組み
現代のカーナビでは様々な機能が搭載されており、音声で周囲の道路状況を知らせてくれるなど、安全運転によるサポートをしてくれることもあります。言うまでもなく、カーナビには位置情報が記録されているため、現在走行している道路の制限速度や、分岐点の情報、先々の渋滞状況などを教えてくれるため非常に便利です。
また、近年では対向車の位置や歩行者の位置まで知らせてくれる機能を搭載したものまであり、赤信号での停車時や、右折・左折時における周囲の状況なども伝えてくれるため、混雑した交差点での大事故を回避することが可能となりました。カーナビはインターネットにも接続できるため、今後は歩行者が所持するスマホなどと連携して、お互いが位置を確認し合う機能も充実するかもしれません。
現在、カーナビの人気メーカーは、「Pioneer」、「Panasonic」、「ALPINE」などがあり、価格も安いもので5万円以下の商品も販売中のため、気軽に購入することができます。性能が良いものだとスマホにデータを転送する機能まであるので、走行ルートや燃費などを調べて、安全運転やエコドライブを日頃から意識することができます。
ドライブレコーダーによる安全運転支援機能
安全運転のポイントの中に、「車間距離に注意して接触事故を避ける」という項目がありましたが、車内に搭載したドライブレコーダーに「前方衝突警報」機能が搭載されている製品も存在します。
走行中に前の車両との距離を計測し、近付き過ぎるとアラームなどで知らせてくれる便利な機能です。ドライブレコーダーは、衝突時の事故状況を記録するために役に立ちますが、近年ではこうしたセンサー機能を充実させ、安全運転を支援する目的のものが増えつつあります。他にも、カメラから自動的に道の標識を確認して、制限速度を知らせてくれる機能が搭載したものなど、ドライブレコーダーといってもその特徴は商品ごとに様々です。
現在、ドライブレコーダーの人気メーカーでは、「KENWOOD」、「PAPAGO」、「YUPITERU」などがあり、価格も一昔前とは違って2万円を切るものがほとんどなので、気軽に車載することが可能となりました。
携帯アプリによる安全運転支援
携帯アプリにも安全運転を支援するものがあります。スマホのほとんどはカメラが搭載されているため、先にも述べたドライブレコーダーの原理と同じく、前方車両との車間距離を計測するアプリも存在します。
また、スマホにはGPSの機能が搭載されているため、カーナビと同じ機能を持つアプリも充実しています。中には燃費を計測する機能や、走行データを記録して安全でエコロジーな運転ができているか判断するアプリなどもあるため、事故を避けることはもちろんのこと、ゲーム感覚でドライビングを楽しめるアプリまであります。
死亡事故を避けるための自動車の最新技術
自動車メーカーによる衝突安全の研究では、様々な方向から事故が起こる原因を追究して、日夜開発に励んでいます。「衝突事故が起こってからは遅い」と考えるのが常識ですが、それでも被害を最小限に抑えることが、技術者の命題であり使命の一つとなっています。
こうした研究は、道路における事故状況の調査から始まり、生体力学や物理構造などの研究を通して、より最適なボディ形状の開発・設計に繋げています。近年では衝突時に衝撃を吸収するボディの開発が行われ、被害を受けた側の人間が助かりやすくなるような構造が主流になりつつあります。
また、衝突時にはシートベルトの拘束に加えて、エアバッグが展開するなど乗員を事故から守る機能も充実。こうした取り組みと最新技術の影響もあってか、2010年以降は交通事故による死亡者が減少している傾向にあります。
とはいえ、事故の基本的な原因はドライバー側にあるため、安全運転に対する意識を高めておく必要があることは言うまでもありません。
まとめ
ここ数年、毎年の交通事故件数は減少傾向にあります。これから自動運転技術などが発達すれば「交通事故ゼロ」に限りなく近い世界も夢ではなくなるのかもしれません。
デバイスやアプリ開発の技術者にとって、交通事故ゼロの社会を作り上げることは、至上命題であり到達点となる理想世界でもあります。しかしながら、決して絵空事の話ではなく、現実に叶えることができる理想なのです。
最新テクノロジー開発に関わる技術者のアイディアにより、今後何千何万という人命が救われる世界がすぐそこまできているのかもしれませんね。
参考文献:社団法人自動車技術会「自動車工学ー基礎ー」