アルコールチェックのタイミングはいつ?直行直帰の場合はどうする?シーン別に解説
「お酒を飲んだら運転しない・運転させない」。ごく当たり前のことではありますが、それでも一向に飲酒運転による事故が後を絶ちません。万が一、自社のドライバーが飲酒運転をして危険な事故を起こしてしまうと、莫大な被害が出るだけでなく、企業として社会的な信用も失うことになります。確実かつ適切にアルコールチェックを行うことは、飲酒運転根絶だけでなく、従業員や企業を守ることでもあるのです。
本記事では、アルコールチェックを実施する適切なタイミングとその重要性について解説します。
3分でわかるSmartDrive Fleet Basic クラウド型アルコールチェック機能
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目次
アルコールチェックは義務である
2022年4月1日に施行された改正道路交通法で、安全運転管理者によるアルコールチェックの業務が白ナンバー事業者にも義務化されました。改正以前は、タクシーやトラックなど、人やモノを有償で運ぶ“緑ナンバー”にのみ、毎日、運転前後に2回のアルコールチェックが義務付けられていましたが、2021年6月に千葉県八街市で起きた飲酒運転トラックによる死傷事故をきっかけに、飲酒運転事故の厳罰化が進み、これまで対象外だった白ナンバー車両にもアルコールチェックの義務が拡大されました。ドライバーを雇っていた企業は安全運転管理者も選任しておらず、アルコールチェックを実施しないなど、適切な運用体制が取られていませんでした。
運転前後におけるアルコールチェックの実施と数値の記録・保存は、安全運転管理者の業務として道路交通法施行規則第9条の10にも定められており、業務を怠った場合、業務違反となります。企業として飲酒事故を確実に防止するために必ず実施しましょう。
関連記事:【2024年最新版】アルコールチェック義務化を徹底解説!対象者は?安全運転管理者の対応は?
アルコールチェックを行うべきタイミング
アルコールチェックは、道路交通法施行規則第9条の10第6号で「運転しようとする運転者および運転を終了した運転者」に対して実施することになっています。ここに述べられている「運転」とは、一連業務としての運転のことを指すため、配送業務などで業務中に何度も乗降を繰り返す場合はその都度行う必要はありません。基本的に運転を含む業務(事務作業など)の開始時間や出勤時間、業務終了後や退勤時に実施しましょう。
運転前にアルコールチェックを実施する目的は、ドライバーが酒気帯びおよび酒酔い運転でないことを確認し、安全を守るためです。運転後のチェックは、業務中に飲酒を行わなかったことを確認するために実施します。
たとえば、8時から16時の勤務時間で業務を行う場合、午前の営業周りを12時に終え、一旦事務所に戻り、昼の休憩を取ったのち、13時から16時まで再び営業へ出向き帰社した場合、8時前と16時すぎの計2回実施します。
飲酒後はどのくらい間を空けるべき?
前日にたくさん飲酒をしたり、遅くまで飲酒をしていたりした場合は、翌朝にもアルコールが残っている場合もあるため、朝早くから運転をする場合は飲酒を控える、または飲酒量を減らすなど工夫しましょう。
一般的に、体重60kgの人がビールの中瓶1本(500ml)を飲酒した場合、アルコールが体内から抜けるまで3〜4時間ほどかかると言われています。ただし、年齢や体質、遺伝子タイプによってアルコールが抜ける時間は異なりますので、自分のアルコール分解時間を把握して飲酒をしましょう。
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具体的なアルコールチェックのタイミングの疑問と事例
出勤後に業務で運転する場合
出勤後に業務で運転する必要が出た場合、運転前後に必ずアルコールチェックを実施しなくてはなりません。安全運転管理者は、アルコール検知器を用いて、アルコールチェックを実施しましょう。
自宅から直行直帰をする場合
自宅から社用車を利用し、直接業務先に向かったり、業務先から帰宅したりする場合もアルコールチェックは必ず行います。対面での確認は困難ですが、ビデオ通話などのオンラインツールを活用し、改ざんができないよう、結果をその場で確認しましょう。対面時と同じように顔色や応答の様子も含めて確認してください。
出張先から業務で運転する場合
出張先で業務上、車を運転する場合も必ず運転前後のアルコールチェックを行います。出張先に営業所があれば、現地の管理者がアルコールチェックを実施し、本社の安全運転管理者に報告します。
マイカーを利用する場合
通勤目的で運転をする場合、自宅でアルコールチェックを行い、報告する必要はありません。ただし、マイカーを業務で使用する場合は、必ず運転前後でアルコールチェックを実施しましょう。
アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックの手順と注意点
1. 測定前の準備
口内に残留物等があると、アルコールチェッカーが正しく測定できない場合があります。そのため、しっかりうがいをして口内を洗浄しましょう。喫煙後やニオイが残りやすいメントール系の食べ物や飲み物を食べた後は特に入念なうがいがおすすめです。ただし、歯磨き粉やマウスウォッシュの中にはアルコール成分が含まれるものもあるため注意してください。
2. 正しく測定する
アルコールチェッカーを使用したアルコールチェックは、運転前と運転後の2回、実施することが定められています。原則として、対面でアルコールチェッカーを使用したアルコールチェックを行うことに加え、安全運転管理者は目視などでドライバーの顔色や呼気のにおい、声の調子などを確認しましょう。
また、直行直帰や出張などで対面での確認が困難なときは、スマホやタブレット、業務用の無線などを利用してドライバーと対話しながら確認作業を行ったり、カメラやモニターなどで顔色や声の調子、アルコールチェッカーの計測結果を確認したりします。
引用元:警視庁HP - 道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について
アルコールチェッカーは、センサーに息を吹きかけ、その際に出た呼気内のアルコール濃度を検知する仕組みになっています。測定器へ息を吹きかけても、吹き込んだ量が少なかったり、吹きかけ方が誤ったりした場合、アルコールチェッカーが正しく反応しない場合があります。正確な数値を測るには、持続的にしっかりと息を吹きかけることが大事です。
3. 測定結果の記録方法:測定結果の記録と報告の方法
アルコールチェックを実施したら、必ず測定結果を記録します。また、このとき、万が一アルコールが検出された場合は、実施したドライバーが安全運転管理者に報告をして、必要な対応などについて指示を受けたり、安全運転管理者がドライバーに対して運転中止の指示を行ったりするなど、安全を守るために必要な対応を確実に取ることが求められます。当たり前のことですが、アルコールが検出された場合、該当のドライバーに運転をさせてはいけません。
確認者がいない場合のチェック
白ナンバー車両におけるアルコールチェックの確認は、原則として安全運転管理者が行います。ただし、勤務時間外など、やむを得ない理由により、安全運転管理者によるアルコールチェックが実施できない場合、副安全運転管理者が設置されていれば副安全運転管理者、または安全運転管理者の業務を補助する人が代理で実施します。補助者は、安全運転管理者などの資格を持っていないとしても確認に立ち会うことができます。
目視とアルコール検知器を用いたチェックが基本ですが、直行直帰などで目の前に確認する人がいない場合は、アルコール検知器を所持させ、必ず、運転前後にアルコールチェックを行い、安全運転管理者に報告するようにします。
不正防止に!アルコールチェックアプリを活用する
アルコールチェックアプリは、アルコール検知器と連動することで、アルコールチェックの計測結果をそのまま自動で記録したり、クラウド上に保存したりするアプリのことです。結果の改ざんなど不正を防止するために、このようなアプリを利用したり、ビデオ通話で結果を報告したりするなど、正しく計測を行いましょう。
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アルコールチェックの運用ルール
アルコールチェックの運用において重要なポイントは次の3点です。
- 運転前と運転後の2回、酒気帯びの有無についてアルコール検知器を用いて確認する。
- アルコールチェックの計測結果を記録し、その記録を1年間保存する。
- アルコール検知器は故障や電気切れなどを防ぎ、常時、有効に保持できるように管理する。
緑ナンバー事業者におけるアルコールチェックは運行管理者が行いますが、白ナンバー事業者におけるアルコールチェックの実施と記録、保管は、安全運転管理者が行います。必ず安全運転管理者や副安全運転管理者を選任して実施しましょう。また、直行直帰や出張など、遠隔地で業務を行うドライバーには、携帯用のアルコール検知器を持参させ、運転前後に必ずアルコールチェックを実施するように周知させることも重要です。
企業におけるアルコールチェックの運用
アルコールチェックの実施は、従業員の飲酒運転防止を徹底するためのリスク管理であり、企業としての責任でもあります。正しく運用をしないと、万が一の飲酒運転事故が起きることも考えられます。業務の際に飲酒運転事故が発生すると、最悪の場合、事業停止や社会的な信用の喪失、経営が困難に陥ることも考えられます。そうしたリスクに備えるためにも、アルコールチェックを徹底し、飲酒運転のしない・させないを社内で周知徹底しましょう。
アルコールチェックを就業規則に記載する
就業規則は企業の規則やルールを明示するものです。アルコールチェックの実施を追加することで、従業員に周知させることができ、不正なく、確実に実行すべきことという認識が周知されます。
飲酒運転は従業員にとっても企業にとってもリスクでしかありません。基本的な運用ルールや、直行直帰や出張などで想定される運用方法、測定結果の管理方法など、整理をした上で記載をしましょう。また、従業員がアルコールチェックの結果を改ざんしたり、アルコールチェックを拒否したり、万が一の酒気帯びが発覚したりした場合について、どのような罰則を設けるのかも記載しましょう。そうすることで、確実にチェックを行うこと、飲酒運転を絶対にしないという認識をさせることができます。
アルコールチェック運用に関する指示事項の例
- アルコールチェックは必ず運転前後に点呼と合わせて実施し、数値は必ずアプリへ記録すること。
- アルコールチェックの実施前は、喫煙や口腔ケア用品を使用しないこと。
- 直行直帰や出張のため、対面で確認できない場合は、アルコール検知器を持たせ、ビデオ通話で確認すること。
- 測定器は毎週末に点検を行い、正常に使える状態にしておくなど
アルコールチェックの数値の解釈
基準となる数値
道路交通法施行令の第四十四条の三では、「法第百十七上の二の二第一項第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき0.3ミリグラムまたは呼気一リットルにつき0.15ミリグラムとする。」と定められています。
なお、道路交通法第65条においては、取締りの対象となる数値基準を呼気中のアルコール濃度が0.15mg/1ℓ以上を含んだ状態の場合、酒気帯び運転としています。しかし、0.15mg以下であっても、酒酔い運転と判断された場合は罰則の対象になるため注意が必要です。
罰則対象となる基準値
酒気帯び運転には数値の基準が設けられていますが、酒酔い運転はアルコールチェックの数値で判断されません。酒酔い運転とは、アルコールの影響を受けて注意力や判断力が鈍り、正常な運転ができない状態にも関わらず運転することで、主に、次のような症状をみて、酒酔い運転かどうかが判断されます。
- 直線の上をまっすぐ歩けるか
- 警官の質疑応答でしっかり受け答えができるか・ろれつが回っているか
- 視覚や視点から認知能力が機能しているか
違反点数は酒気帯び運転よりも高く、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられるなど、処分が重くなります。
違反点数
違反種別 | 酒酔い運転 | 35点 |
酒気帯び運転 (呼気1ℓ中のアルコール濃度0.25mg以上) | 25点 | |
酒気帯び運転 (呼気1ℓ中のアルコール濃度0.15mgム以上0.25mg未満) | 13点 |
飲酒運転者の罰則
酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
酒気帯び運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
管理者など、運転者以外の責任と処罰内容
車両提供者
運転者が酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
運転者が酒気帯び運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
酒類の提供や車両の同乗者
運転者が酒酔い運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
運転者が酒気帯び運転 | 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
まとめ
アルコールチェックの実施は、ドライバーと企業の信頼を守るために毎日2回、運転前後に欠かさず実施してください。従業員には安全な飲酒習慣を周知させ、自身の安全を守るためにもアルコールチェックを必ず徹底するように、就業規則に分かりやすく指示項目をまとめたり、事業所内にポスターを貼ったりして習慣化するように努めましょう。