昨今、重大事故や不適切な車両管理の発覚などにより安全運転管理者の重要性が日に日に増しています。
本記事では、安全運転管理者を選任する必要がある対象企業から安全運転管理者の届け出方法、罰則までをわかりやすく解説します。

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安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、企業における安全運転を確保する責任者である事業主の代務者として、酒気帯び確認や運行管理、安全運転指導など、安全運転の確保に必要な業務を行う人のことです。
一定台数以上の自家用車(白ナンバー)を使用する事業所は、資格を有する安全運転管理者および副安全運転管理者を選任しなければなりませんが、安全運転管理者には誰でも任命できるわけではありません。任命には資格要件があり、任命したらその日から15日内に公安委員会へ届出を提出することが義務付けられています。
安全運転管理者が必要な理由
民法第715条では、従業員(ドライバー)が業務中に交通事故を起こした場合、損害を与えた従業員だけでなく、使用者である企業も賠償責任を負うことになると記されています。つまり、従業員の安全運転意識を向上させるなど、交通事故防止に取り組むことは、企業にとって重要な業務の一つであるとも言えるのです。それを実行する責任者として、車両を業務で利用する企業には安全運転管理者を置くことが義務づけられています。
安全運転管理者の役割は、安全運転の実現と事故防止のために車両と従業員(ドライバー)の管理を行うことです。無免許運転や社会的な問題にもなっている飲酒運転は、管理者による運転前後の確認で未然に防ぐことができます。安全運転管理者による点呼とアルコールチェック、そして免許証の有効期限(※)を確認することで、少しでも事故のリスクを軽減しましょう。
※注 2017年3月12日より準中型免許が施行されたことにより、運転できる車両が異なります。
運行管理者との違い
運行管理者とは、トラック、バス、タクシーなど、事業用自動車(緑ナンバー)の安全な運行を管理する責任者のことで、選任する場合は、自動車運送事業の種別に応じた種類の資格証書が必要です。
参考記事: 公益財団法人運行管理者試験センター「運行管理者とは」
安全運転管理者の選任が必要となる企業
安全運転管理者は、「乗車定員11人以上の自動車は1台以上、その他の自動車を5台以上使用している事業所(自動車使用の本拠地)」ごとに選任する必要があります。なお、自動二輪車1台は0.5台として計算し、50cc以下の原動機付自転車は含みません。

副安全運転管理者が必要となるケース
使用する自動車の台数が20台以上になった場合、20台以上40台未満は1人、以下20台ごとに1人ずつ安全運転管理者を補助する者として副安全運転管理者の選任が必要です。副安全運転管理者の業務内容は、基本的に安全運転管理者の業務と同じです。副安全運転管理者の選任には、副安全運転点管理者として経験を積むことで次の安全運転管理者を育てるという意図も含まれます。

安全運転管理者の選任が必要ない・対象外となるケース
安全運転管理者の選任が必要ないケース | 具体例 |
---|---|
事業所ごとの自動車数が5台未満 | 事業所(本社や支店)ごとに使用する自動車の台数が5台未満である場合。例:本社で3台、支店で2台。 |
通勤のみ使用するマイカー | 従業員のマイカーを通勤のみに使用する場合。 業務には使用されないため、台数の算定に含まれない。 |
運行管理者を配置済み | 運送業をはじめ、緑ナンバーで運行管理者が既に配置されている場合、白ナンバーが5台以上でも安全運転管理者の専任の必要はありません。 |
50cc以下の原動機付自転車 | 50cc以下の原動機付自転車は台数の算定に含まれないため、選任が不要。 |
ナンバーのついていない特殊車両 | ナンバーのついていない特殊車両(農耕用トラクター、フォークリフト、ショベルローダー等)については台数に算定に含まれません。 |
※ナンバーのついた小型特殊車両、大型特殊車両については台数計上させるため、5台以上保有している場合は選任が必要
※乗車定員11人以上の自動車がないことを想定
安全運転管理者の資格要件
安全運転管理者の選任は、次の資格要件を満たす人を任命しなくてはなりません。
- 年齢が20歳以上(副安全運転管理者を選任する場合は30歳以上)
- 運転管理の実務経験が2年以上
- 過去2年以内に安全運転管理者の解任命令を受けていないこと
- 過去2年以内に、ひき逃げや酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、妨害運転など、一定の違反行為をしていない、および下命・容認をしていないこと
出典:道路交通法施行規則第九条の九(安全運転管理者等の要件)

安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者および副安全運転管理者は、安全運転促進と事故予防・削減を目的に、主に次の業務を行います。
1. 運転者の状況把握
車両を運転するドライバーの適正や運転技能、知識、道路交通法などの規定遵守を把握するための措置を講じます。
2. 安全運転確保のための運行計画作成
ドライバーが安心安全に業務を遂行できるように、過労運転を防止しつつ、業務を調整し、適切な休憩が取れるように運行計画を作成します。
3.長距離、夜間運転時の交替要員の配置
長距離および夜間運転を行わせる場合、疲労や睡眠不足で安全な運転ができなくなる恐れがあるため、交替するドライバーを配置します。
4.異常気象時等の安全確保の措置
異常気象や天災などにより、安全な運転が確保できない恐れがあるとき、状況に応じて適切な指示出しを行います。
5. 点呼等による安全運転の指示
ドライバーに対して運転前に点呼を行い、日常点検の実施状況と車両に関する注意事項や報告事項の聞き取り、病気や疲労によって運転できない可能性を確認し、安全な運転を確保するための指示出しを行います。
6. 運転日誌の備え付けと記録の管理
ドライバーが使用する車両に運転日誌を備え付け、ドライバーの情報、運転開始と終了時刻、走行距離、業務内容など、その日に必要な情報を記録します。管理者は日誌を確認し、ドライバーの管理を行います。
7. 運転者に対する安全運転指導
交通安全教育方針にもとづき、ドライバーへ運転技能や遵守すべき交通ルールなどの知識を教育します。
8. 酒気帯びの有無確認に関する記録と保存
1日2回、運転前後にドライバーの酒気帯びの有無を確認し、その結果を記録します。記録したアルコールチェック記録簿は1年間保存して管理します。
9. アルコールチェッカー(アルコール検知器)の使用等
アルコールチェッカーを用いて酒気帯びの有無を正確に測定します。また、アルコールチェッカーは毎日確実に測定できるよう、故障がないかを確認したり、メンテナンスをしたりするなどして有効な状態を維持します。
関連記事:アルコールチェック義務化とは?対象者や罰則、チェック方法まで解説!
各種届出の義務
安全運転管理者と副安全運転管理者を選任したら、「15日以内」に自動車の使用の本拠を管轄する警察署を経由し、公安委員会に届け出ることが義務付けられています。
また、事業規模が縮小し自動車の台数が基準以下になったときや、事業所が移転・閉鎖したとき、あるいは人事異動や退職などに伴い、安全運転管理者等を改任・解任・変更した場合も、同様の日程で届出を行わねばなりません。
参考:【記入例付き】安全運転管理者の届出方法や必要書類の取得方法について解説
法定講習の受講義務
安全運転管理者と副安全運転管理者は、年に一度、公安委員会が行っている法定講習を受講しなくてはなりません。管轄公安委員会から講習受講を促す通知と講習申出書が送付されますので、その内容に従い、毎年一回、受講するようにしましょう。
【講習通知書の見本】
出典:北海道安全運転管理者協会・北海道安全運転管理者事業主会
なお、同講習の代理受講は認められておらず、必ず選任された本人が受講しなくてはなりません。途中退席禁止ですが、月に5~6回程度、さまざまな会場で随時開催されているため、日程調整をして受講しましょう。
【安全運転管理者等講習の概要】
- 所要時間:6時間程度
- 講習手数料:5,100円
- 携行品と必要書類:講習申出書(通知に同封)・管理者証(※)・本人確認書類(運転免許証など)、筆記用具
※近年、安全運転管理者証は各都道府県で廃止の傾向にあります。詳細については事業所の所在地から近い各警察署交通課交通総務係、安全運転管理者連合会などのホームページでご確認ください。
参考記事:安全運転管理者証の廃止について 宮城県警察
関連記事:「安全運転管理者等法定講習とは?2024年(令和6年度)の講習会日程もご案内」
安全運転管理者制度に関する4つの違反と罰則
安全運転管理者制度に関して、下記の違反行為が見受けられた場合、次のような罰則が科せられます。-
- 安全運転管理者を選任しなかった場合「選任義務違反」
対象であるにも関わらず安全運転管理者を未選任だった場合、50万円以下の罰金が科せられます。 - 安全運転管理者を解任しなかった場合「解任命令違反
安全運転管理者に対する公安委員会からの解任命令に従わず職務を続行した場合は、50万円以下の罰金が科せられます。 - 是正措置命令が出ても従わなかった場合「是正措置命令違反」
安全な運転が確保されていないと認められ是正措置を命じられたにも関わらず適切な対応をとらなかった場合、50万円以下の罰金が科せられることになります。 - 安全運転管理者等の選任届と解任届を提出しなかった場合「選任解任届出義務違反」
適切に届出が提出されなかった場合、5万円以下の罰金が科せられます。
関連記事:「安全運転管理者の罰則金は50万円。飲酒運転の事故事例や罰則強化の背景を解説」
安全運転管理者に関するよくある質問
Q.すでに運行管理者がいる場合は?
A.安全運転管理者を選任する必要はありません。しかし、安全運転への取り組みを強化するために、運行管理者の他にも安全運転管理者を選任するのは企業の取り組みとして問題ありません。
Q.リース車両やマイカー、カーシェアの利用にも安全運転管理者が必要?
A.車両の名義に関わらず、業務として使用している場合は、安全運転管理者を選任する義務があります。なお、業務に使用せず通勤のみにマイカーを使用している場合は、安全運転管理者等の選任対象外です。
Q.外部委託することは可能?
A.業務の一部である酒気帯びの有無の確認に関する業務委託は問題なし(※条件あり)とされていますが、安全運転管理者の業務を全面的に外部委託することはできません。
※参照:警察庁-Q&A Q.6
Q.複数の事業所すべてに安全運転管理者が必要?
A.各事業所が乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用している場合は、それぞれに安全運転管理者の選任が必要です。
参考サイト:警視庁ホームページ「安全運転管理者等に関するよくある質問」
まとめ
安全運転管理者は昭和40年に制度化して以降、社会情勢の変化に伴って法改正をされながら、企業や組織が絡む交通事故の削減に大きく貢献してきました。しかし、いまだに痛ましい交通事故は発生し続けています。企業の義務として取り組むことはもちろん、どうすれば効率的かつ効果的に安全運転の促進と事故軽減に寄与できるか、この機会にもう一度自社の安全運転管理体制を見直してみませんか。