荷物を運搬する運送トラックをはじめ、営業や送迎など、さまざまなシーンで事業用の車両が使用されていますが、企業が業務で車両を使う際は、運転日報の作成と保存が義務付けられています。
本記事では、緑ナンバー・黒ナンバー・白ナンバー、それぞれにおける運転日報の作成方法や記載項目、保存期間、関連する法令などをわかりやすく解説します。

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運転日報とは?
運転日報とは、運転者の氏名や運転日時、走行距離などを記録した書類のことを言います。トラック運送などで貨物を運送する事業やバス・タクシーなどで人を運ぶ事業を営む企業(緑ナンバー)では「貨物自動車運送事業輸送安全規則」または「旅客自動車運送事業運輸規則」により、そして一定数の社用車(白ナンバー)を保有する企業では「道路交通法施行規則」により、運転日報の記録と保管が義務付けられています。
運転日報の作成は義務?罰則はあるの?
運転日報作成の要否は、社用車の用途や所有台数で異なります。自社が義務の対象か否かを確認するには、まず社用車のナンバープレートを確認すると良いでしょう。そもそも、クルマのナンバープレートの色は用途や種別を識別することを目的に、次のように分けられています。
緑ナンバー:「有償」で荷物や人を目的地に運ぶ事業用自動車のこと。トラック・バス・タクシーなど。
黒ナンバー:「有償」で荷物を目的地に運ぶ事業用の軽自動車。
白ナンバー:「無償」で自社の荷物や人を運ぶ自家用自動車のこと。営業車や送迎車、自社の荷物を自社の車で運ぶ際に使用する車など。
運転日報の作成が義務となる対象企業
運転日報の作成が義務付けられている対象企業は次のとおりです。
緑ナンバーの自動車を使用する運送事業者:
貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者など、有償で貨物や旅客を運ぶ事業者は、運転日報の作成が義務付けられています。
軽自動車運送事業者:
2025年4月以降、軽自動車で配送を行う黒ナンバー貨物軽自動車運送事業者も、運転日報の作成が義務付けられています。
一定台数以上の白ナンバー自動車を使用する事業者:
乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用している事業者は、安全運転管理のために運転日報の作成が必要です。
運転日報に関する法令を対象車両ごとに紹介
緑ナンバー:貨物自動車運送事業輸送安全規則/旅客自動車運送事業運輸規則
有償で荷物を運ぶために使用される貨物車(配送トラックやバン)については、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条において、そして利用客を運送する旅客自動車(バス・タクシー・ハイヤーなど)は、旅客自動車運送事業運輸規則第25条において、運転日報(業務記録)の記録と保存が義務付けられています。
黒ナンバー:貨物自動車運送事業輸送安全規則
貨物軽自動車の黒ナンバーも緑ナンバーと同様、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条において、運転日報の記録と保存が義務付けられています。昨今の貨物軽自動車運送事業者による重大事故増加を踏まえ、2025年4月1日より、黒ナンバーにも貨物軽自動車安全運転管理者の選任と講習受講、運転日報の作成と保存などが義務付けられました。
関連記事:国土交通省「貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されました」
白ナンバー:道路交通法施行規則
警察庁が所管している道路交通法施行規則第9条の8では、「乗車定員11人以上の自動車を1台以上、または自家用自動車を5台以上使用している(※)」事業者に対して、安全運転管理者の選任が義務付けており、安全運転管理者の重要な業務の一つとして、運転日報の備え付けと記録が定められています。
※原動機付自転車を除く自動二輪車においては、1台につき0.5台として計算します。
違反した場合の罰則
貨物自動車運送事業輸送安全規則や旅客自動車運送事業運輸規則、道路交通法施行規則において、運転日報の作成をしない、または記録の保存をしなかった場合の罰則は設けられていません。しかし、緑ナンバー事業者の場合は運行管理者、白ナンバー事業者の場合は安全運転管理者の業務の一つとして法令で定められていますので、必ず作成と保存を行いましょう。
運転日報の作成と保存を怠ってしまうと、運行管理者や安全運転管理者の業務が行われていないとみなされ、是正措置を受ける可能性があります。それでも従わない場合、解任が命じられることや、50万円以下の罰金が科せられることがあるため注意が必要です。
運転日報の記載項目とその書き方
緑・黒ナンバーの場合
配送トラックなど貨物自動車用運送事業の場合は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条にて、バスやタクシーなど旅客自動車運送事業に関しては、旅客自動車運送事業運輸規則第25条において次の項目が必要記載事項と記されています。
貨物自動車用運送事業の場合
・運転者の氏名
・自動車登録番号(ナンバーなど識別できる情報)
・乗務を開始および終了した地点や日時、おもな経過地点、走行距離
・業務を交替した場合は、交替した地点と日時
・休憩や睡眠をとった場合は、その地点と日時
・車両総重量が8t以上または最大積載量が5t以上の事業用自動車の運行業務を行った場合、貨物の積載状況
・荷主の都合により集貨・配達地点で待機をした場合、その集貨地点や日時など
・集貨・配達地点で荷役作業や附帯業務を行った場合、その内容や日時、集貨地点、荷主による確認の有無
・道路交通法および自動車事故報告規則に規定される事故や著しい運行の遅延、その他異常な状態が発生した場合は概要と原因
・運行経路など、運行に関する指示内容
旅客自動車運送事業の場合
・運転者の氏名
・自動車登録番号(ナンバーなど識別できる情報)
・乗務を開始および終了した地点や日時、おもな経過地点、走行距離
・業務を交替した場合は、その地点と日時
・休憩や仮眠をとった場合は、その地点と日時
・指定された施設で睡眠をとった場合は、施設名と所在地
・事故や著しい遅延、異常が発生した場合は、その概要と原因
・乗車定員11人以上の車両に車掌が乗務した場合は、その車掌の氏名
・車掌が業務を交替した場合は、交替ごとの地点と日時
白ナンバーの場合
道路交通法施行規則第9条の10第8号では、下記4点が運転日報への記載必須項目となっています。
・運転者の氏名
・運転した日時と運転を終了した日時
・運転した距離
・自動車の運転の状況を把握するため必要な事項
指定のフォーマットはありませんが、業務内容や訪問先、顧客とのやり取り、給油情報や点検状況、そのほか注意事項や気づいたことなどを記入することで、業務改善や労働管理にも役立てることができるため、必要に応じてフォーマットを作成しましょう。
必須項目を記載できれば紙でもエクセルシートでもアプリでも問題ありません。インターネット上ではダウンロードをしてすぐに使用できる無料のテンプレートがいくつか提供されていますので、自社が管理しやすいものを選択して使用しましょう。
Excelの運転日報テンプレートのイメージ

上記、アルコールチェック記録欄付き運転日報のダウンロードはこちら
また、「【テンプレート付き】運転日報とは?書き方や無料Excelテンプレートを紹介!」の記事でもいくつかテンプレートをご紹介していますので、ぜひご活用ください。
運転日報の活用方法
運転日報は単なる業務記録として保存するだけではなく、活用することで業務改善や業務効率アップに役立てることができます。
燃費の把握と改善
走行距離や走行区間と併せて、給油したポイントや給油量を記録しておくと、おおよその燃費が把握できるようになり、ガソリン代の節約に向けた改善策の検討、エコドライブの実現による環境負荷の軽減などが期待できます。車両の状態や消耗品の交換時期を把握するためにも有効活用しましょう。
ドライバーと車両の稼働状況把握
1日あたりの走行距離、運転時間、休憩や荷待ち時間などの情報から、ドライバーが無理な労働をしていないか、無駄な配車がないかということを判断できるようになります。また、データを週ごと、月ごとにレポート化すれば、長時間労働の是正や車両台数の最適化など、労務管理や車両管理の適正化を行うことが可能です。
車両不具合の早期発見
日々、車両を使用する場合は日常点検が欠かせません。運転日報に各項目の記録を残しておくことで、抜け漏れなく点検を行い、いち早く不具合に気づくことができます。特にタイヤの亀裂や損傷、摩耗状況やブレーキペダルとパーキングブレーキレバーの引きしろは安全を守るためにも非常に重要な項目です。エンジンルームやクルマの周り、クルマの中まで、確実に点検したことがわかるように項目を追加しましょう、
関連記事:【チェックシート付き】車の法定点検と日常点検。車検との違いは?総務・管理者なら知っておくべきポイントまとめ
運転日報の保存期間
白ナンバーの場合
道路交通法施行規則には運転日報の保存期間について明記されていません。しかし、2022年に義務化されたアルコールチェックの記録においては、保存期間が1年と定められています(参考:第9条の10第7号)。公安委員会へ提出する可能性を考慮し、併せて保存しましょう。
また、労働基準法第109条(記録の保存)においては、労働者名簿、賃金台帳、雇い入れ、解雇、災害補償、そのほか労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならないと記されています。運転日報は乗務時間や休憩時間など、ドライバーの労務管理に関する重要な書類のひとつに該当するため、5年間保存することが望ましいと言えるでしょう。
緑・黒ナンバーの場合
貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条および旅客自動車運送事業運輸規則第25条では、貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者(緑ナンバーの事業者)は、ドライバーごとに運転日報を作成し、その記録を1年間保存することが定められています。白ナンバー同様、労務管理に関する資料になるため、こちらも5年間保存することをおすすめします。
運用の一般的な流れ
ドライバーが運転後に必要事項を記入し管理者へ提出
法令で定められた記載必須項目をもとに、指定のフォーマットへドライバーがその日の業務内容を記入します。用紙で管理をしている場合、誤字脱字や記入漏れ、記入ミス、用紙の紛失などに注意してください。
管理者によるチェック
記入が完了し次第、運転者は管理者へ運転日報を提出します。管理者は内容を確認し、不備等があれば運転者に加筆・修正を依頼します。
不備がなければ指定期間の保存
内容に問題がないことを確認したら、運転日報を保存します。先述しましたが、運転日報は5年間の保存が望ましいです。紙の場合は後から簡単に探せるよう、目次やインデックスを使用し、月ごと、年ごとにファイリングしておくと後日、探すときに便利になります。
運転日報のペーパーレス化で業務効率が格段に上がる
運転日報は法令で義務付けられているため、必ず記録と保存をしなくてはなりませんが、紙で運用している場合、業務後の記入と提出はドライバーにとってかなりの負担です。また、ドライバーが多いと確認や保管場所の確保など、管理の手間も増えてしまいます。
運転日報作成にかかる手間を軽減し、管理の強化を実現するために有効なのが、Excelなどの表管理ソフトや、専用のアプリまたは車両管理システムなどによるペーパーレス化を行うことです。ペーパーレス化はおもに次の3つの方法があります。
●Excelの場合
管理者が運転日報のフォーマットを作成し、ドライバーが入力して提出します。PCやスマホがあればアクセスして入力ができ、データ集計も簡単に行うことが可能です。
●スマホアプリの場合
運転日報やアルコールチェックの記録が行える専用のアプリです。メーターとの連携や、カメラによる撮影で走行距離を自動入力でき、データもクラウド上で管理できますが、機能がシンプルなものが多く、詳細な情報管理や分析は難しくなります。
●車両管理システム
社用車やドライバーなど、車両に関するすべての情報を一元管理するシステムを指します。走行距離をもとにした運転日報の自動作成以外にも、運転診断やリアルタイム位置情報、アルコールチェックや車両予約など、機能が充実しているのがポイントです。ドライバーは日報作成にかかっていた時間を大幅に短縮でき、確認や管理も容易になるため、近年では多くの企業で導入が進んでいます。
スマートドライブが提供している車両管理システム「SmartDrive Fleet」は、シガーソケットに挿すだけの手軽なデバイスや高品質なドライブレコーダーから走行データを自動で収集し、リアルタイム位置情報・走行履歴・運転診断・運転日報・月報・アルコールチェック記録の管理など、多様な機能を搭載した車両管理システムです。

運転日報の機能では、ドライバーはスマホでアプリを立ち上げ、必要な項目やメモ事項を入力するだけ。作成が完了して提出されると、管理者に通知が届き、データがクラウド上にアップされます。また、日報データのCSV出力や日報データをユーザー/車両ごとに月単位でまとめ、月報としてご利用いただくことも可能です。
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まとめ
運転日報は、走行距離だけでなく、日頃は見えない多くの情報を得ることができる貴重な資料の一つです。有効活用することで労務管理や業務効率化、生産性向上に役立てることができますので、車両管理システムなどをうまく活用し、ただの管理から、業務推進のツールとして役立てていきましょう。