新型コロナウイルスが自動車業界に及ぼす影響とは?
2月25日、日経平均株価の値下がり幅は一時1000円を超えたことがニュースになりました。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各地で経済失速への懸念が高まっています。自動車業界にはどのような影響が考えられるでしょうか。
3分でわかるSmartDrive Fleet
SmartDrive Fleet導入実績
SmartDrive Fleet は、アルコールチェック記録をはじめ「安全運転管理・法令遵守・DX」3つの観点から業務で車両を利用する企業の様々な課題をワンストップで解決できるクラウド型車両管理サービスです。簡潔にサービス概要をご紹介しています。
「予想を超えた株価の下落」
25日の東京株式市場での日経平均株価の値下がりを受け、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)の中西会長は、「新型コロナウイルスの感染拡大に対し、株式相場が敏感であることを再認識した。世界的に予想を超えた下げ幅だが、落ち着いて事態を注視するよりほかない。感染拡大による企業収益の悪化は懸念されるが、今年の春季労使交渉における直接的な影響はほとんどないだろう。春季労使交渉の課題は、働き手のやる気を引き出す処遇づくりだ」と今後の対策について述べました。
新型コロナウイルスによる影響は想定以上に大きく、中国生産拠点の稼働を一部ストップ、国内外の観光客減少などにより商品の供給も鈍化。さらには旅館、食品製造企業の倒産が続くなど、すでに日本経済への影響が深刻化しています。中国は、生産拠点でもあり、世界でもっとも大きなマーケットでもあるため、日本だけでなく海外へも大きな影響を与えているのです。
生産がスムーズにいかない〜自動車業界への影響
中国市場において、自動車メーカーは生産と販売に注力してきました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大により、次のような影響が見込まれています。
生産:
新型コロナウイルスが発生した武漢、湖北省は、自動車部品生産の主要な拠点です。そのため、自動車業界は感染拡大長期化による移動制限、操業ストップなどで生産体制を縮小せざるを得なくなっています。2月28日時点では、各自動車メーカーとも徐々に工場の操業を再開しつつあるものの、従業員の出勤状況や部品の調達具合により、通常通りの本格稼働が可能となるのがいつかは見通しがついていないとのこと。日系の自動車メーカーは、中国から調達している部品の他国での代替生産の検討を始めていますが、金型が必要な部品や、生産ラインに認証が必要になるような保安部品は代替生産が難しいため、一時的にサプライチェーンが停止する可能性も。
神奈川県横浜市に本社を置く大手自動車部品メーカーのヨロズは、生産停止が長期化する場合に備え、メキシコで代替生産する検討を始めています。在庫がない、生産ができない…。収束の目処がつかないままでは、このような生産体制への影響が長期化することが予想されます。
また、国内だけでなく、海外でも同様の影響が。休業期間をのばしている中国の自動車部品、組立工場に対し2月6日、フィアット・クライスラー・モーターズ(以下、フィアット)が、中国の部品供給業者が操業を再開できない場合、2〜4週間で欧州の工場1箇所の生産を止める可能性があると警告しました。
国営新華社通信によると、習近平国家主席は「企業再開を積極的に推し進める」ように指示し、中国企業連合会の最新の調査では、製造業大手の97%が業務を再開していますが、移動制限や自宅待機によって従業員の職場復帰率は66%ほど。物流停滞やサプライチェーン(部品供給網)の混乱、コスト上昇、さらに、経営基盤の弱い中小企業については資金繰りの悪化も課題になっています。
生産体制が通常通りに戻らなければ、供給不足などによって在庫が確保できず、収益を大きく左右することになりかねないかもしれません。
販売:
中国自動車工業協会(CAAM)の付炳锋副会長は、2020年上半期の自動車販売台数は前年同期比10%以上落ち込むことを予想しており、3月までに新型コロナウイルスの感染が抑制されれば、通年の販売台数は5%程度の減少に抑えられる(2019年の自動車販売台数は約2,577万台、5%は約129万台に相当)としています(「オートモーティブ・ニュース・チャイナ」2月17日)。2019年の中国での新車販売台数が155万台と過去最高を記録したホンダですが、武漢にある3工場の生産が停止したことで、販売面での影響も。ホンダの幹部は「新型肺炎問題が長引いた時の影響をどう抑えるかが課題だ」と話しています。
「すでに影響が出ている」と回答した企業は66%弱
東京商工リサーチが2月20日に発表した「新型コロナウイルスに関するアンケート」の調査結果でも、すでに各業界での影響が伺えます。国内企業(1万2,348社)に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、66.4%(8,207社)が「すでに影響が出ている」「今後影響が出る可能性がある」と回答しました。
産業別で見ると、「すでに出ている」と回答したのは卸売業、運輸業、製造業がそれぞれ3割近くに上ります。「今後出る可能性がある」と答えたのは製造業が51.7%ともっとも多く、卸売業も47.3%と続きました。東京商工リサーチは、世界的なサプライチェーンを築く製造業や、価格競争等で国境をまたいで商品を輸入する卸売業への影響が色濃く出たと分析しています。また、宿泊業や旅行業が含まれるサービス業他は38.3%、観光バスの運行会社が含まれる運輸業は43.4%でした。「新型コロナウイルスの今後の影響について、どのような懸念を持っているか」という問いについては、「中国の消費減速、景気低迷」が5,834社と最も多く、中国の景気が国内企業の受注や業績に影響を与えることを示す結果となりました。
また、2月13日、未来調達研究所が日本企業(回答者1万2966人)へ新型コロナウィルスに関する緊急アンケートを実施、サプライチェーン・物流・調達関連従業者の実務実態について調査をしています。「新型コロナウイルスの生産・物流・調達への影響は?」という問いに対し、支障なしはわずか12%でした。部品調達の難航、道路閉鎖による物流の遮断、トラックドライバー不足、エアー便集中による取り合い、一時サプライヤーの有する金型を代替国に輸出できないなど、多くの問題が浮き上がっています。この状況は自動車業界も含め、各業界に大きな影響を与えているようです。
企業はどう対応すべきか
世界経済に損失をもたらし続ける新型コロナウイルス。
2月13日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、日本政策金融公庫などに総額5,000億円の緊急貸付・保証枠を設けることを決め、14日に閣議決定しました。また、金融機関に資金繰りへの影響を受けている企業からの返済緩和の要請に対し、柔軟な対応を要請しています。事態の終息が見えない今、企業は政府や自治体との連携、代替生産が可能な体制を整えるなど、見直すべきなのかもしれません。