介護車両の事故を減らすにはどうすればいいのか?車両管理システムを活用した事故削減の取り組み方法を紹介
2020年6月に佐賀県でデイサービスの送迎時に死亡事故が発生ました。2019年11月にも富山県で2件の死亡事故が発生しており、介護車両の送迎中の交通事故は実は頻繁に起きています。もし送迎中に事故を起こしてしまうと、介護事業所はどのような事態に陥ってしまうのでしょうか。また、体の弱ったお年寄りの方々を預かる送迎車は、普段から安全運転に気をつけるべきですが、具体的にはどのような対策を立てるべきか。本記事では、介護車両が事故を起こしてしまった際に起きうる事態と合わせて、安全運転に取り組む方法についても紹介します。
テレマティクスサービスを活用した事故削減への取り組み
テレマティクスを活用して危険運転50%削減に成功した事例を元に、事故削減への取り組み方法を 「導入」・「運用」・「組織の制度設計」などフェーズに沿ってご紹介します。
目次
介護車両事故により発生する3つの責任
介護車両が事故を起こしてしまった場合、事故時の相手方車両や歩行者だけではなく、乗車している利用者(同乗者)に対しても責任が発生する場合があります。送迎車両の利用者は高齢者でかつ身体を上手く動かせない方が多いため、事故発生時に自分で受け身を取るなどの対応ができない等、よりケガをする可能性が高いのです。ここでは事故により発生する3つの責任を解説します。
運転手の刑事責任
運転中の事故において運転手に過失があると判断された場合、過失運転致死傷罪が適用されることがあります。もちろん、過失がない場合には問われませんが、特段な事情がない限り過失があると判断される場合が多いです。また、事故によって複数の死亡者が出てしまった場合などは、現行犯逮捕となり執行猶予がつかないケースもあります。
事業者の民事賠償責任
介護車両が利用者に対して人身事故を起こしてしまうと、「契約上の責任」により介護事業者側に民事賠償責任を求められる可能性があります。介護事業者は利用者と利用契約を結んでいるはずですので、送迎の不注意による死傷は、利用契約の違反が問われことがあります。
介護事業所への行政処分
事業者は事故によって行政処分を受ける可能性があります。行政処分には「勧告」「命令」「指定の効力一部停止」「指定取消」といった4つの段階があります。事業者が提出する事故報告書と行政による調査や監査の結果によって、どのような処分になるか決定します。
また、逮捕者が出た場合には新聞やテレビなどの報道機関により、容疑者名や事業所名が報道されることもあるでしょう。そうすると、行政処分の内容によらず、介護事業者としての評判が大きく損なわれることになります。
送迎業務における課題
送迎中に重大な事故を起こしてしまうと、費用面だけでなく、行政処分やドライバー自身の精神的な負担など、介護事業者にとって良いことは一つもありません。しかし、実は介護事業者、送迎車両ならではの課題も存在しています。
慢性的な人材不足
公益社団法人介護労働安定センターによる2019年の調査によると、介護事業者の65.3%が「従業員が不足している」と感じているといいます。そのような中、送迎業務は第一種免許があれば、誰でも行うことができる業務です。ですので人材が不足している施設では、入社したばかりの新人職員や、お客様を乗せて運転した経験のない職員が送迎を担当している場合も多くなります。また、最近では年齢制限のない送迎ドライバーの求人も多く出稿されており、いわゆる「高齢ドライバー」による送迎車両の運転も増えています。このようなドライバーに対して、十分な研修や教育を行っている施設も存在しますが、慢性的な人不足から教育が行き届かず、適切な運転能力がないまま業務を任せているケースも少なくないのです。
送迎に特化した講習や教育の不足
そもそも、介護車両は車いすの乗車が可能であったり等、通常の自動車の扱いとは異なる操作、運転が必要となります。しかしながら介護車両での送迎に特化した講習はとても少なく、受講の義務もありません。そのため、正しい知識のないまま自己流での送迎が日常的となり、身体の不自由な利用者を送迎するのに適していない運転となっている可能性も高くなります。
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クラウド車両管理システムを活用した安全運転への取り組み
このような状況の中、介護事業者はどのようにして交通事故を防ぐ取り組みを行えばいいのでしょうか?対策の一つとして、システム活用を進める事業者が増えています。ここではクラウド車両管理システムが提供する様々な機能によって、どのよう取り組みを加速させることができるのかを紹介します。
運転診断
これまで安全運転かどうかの指標の多くは、ドライバー個人の感覚に委ねられており、施設管理者が送迎車両の安全面について把握するのは難しい状況でした。クラウド車両管理システムにおいては、IoTデバイスを活用することによって、安全運転の度合いを図ることができます。
SmartDrive Fleetで活用されているSmartDriveデバイスは、シガーソケットに挿すだけで急加速・急減速・急ハンドルといったヒヤリハット動作を検知し、その位置も地図上で簡単に把握が可能。他にも走行ごとに算出される運転スコアによって、客観的な指標を元にドライバーと施設管理者とで有効なコミュニケーションを取る事ができます。
オプションレポートによる可視化
各車両はひと月にどれくらい走行しているのか、急操作の回数は減っているのか、ヒヤリハットが良く起きる場所はどこか…。このような情報が取得できるのも、クラウド車両管理システムのメリットです。SmartDrive Fleetでは、自動で蓄積される走行データを元に、スコア遷移やヒヤリハットマップ、車両の稼働率といった情報を簡単に見える化することが出来ます。特に、複数台の車両を管理している事業者においては、安全運転推進だけではなく、車両の稼働率を上げて有効活用することにより、コスト削減に繋げることも出来るようになるでしょう。
リアルタイムな位置把握によるドライバーの負荷軽減
送迎ルートは、効率的なスケジュールになるように、送迎場所や利用者の状態を考えた上で組まれています。しかし同時に、急な依頼や時間変更といったイレギュラー対応も日常的に発生します。当初の送迎スケジュールがしっかり組まれていたとしても、変更発生時にドライバーへの連絡がうまくいかなければ、利用者を乗せることが出来なかったり、施設への到着が遅れてしまうこともあるでしょう。
また、到着が遅れると、同乗の利用者全員の利用時間を減らすといった申請業務も必要になってしまうため、ドライバーは常に送迎時間、ルートを気にしながら走行しています。そんな時に施設から「今どこにいますか?」といった電話がかかってきたらどうでしょうか。運転中に電話を取ることは無いにせよ、電話がかかってくること自体がドライバーの注意を削いでしまうことになり、事故を誘発しかねません。
SmartDrive Fleetでは、10秒に1回という頻度で現在位置をどこからでも把握できるため、このような不要な電話でドライバーに負担をかけることが無くなります。また、送迎中にトラブルが発生し、ドライバーから施設へ電話をする際にも、「どこでトラブルが発生しているのか」を施設側で的確に把握できるため、すぐに施設から応援にかけつけるといったことも可能となります。
介護事業所による車両管理システムの活用事例
送迎車両を運転する高齢ドライバー自身の提案により、安全運転の状況を客観的に把握するために車両管理システムを活用。ドライバーと利用者の双方が安心して乗車できる施設送迎を実現しています。
民間救急・介護タクシーにSmartDrive Fleetを活用。走行履歴や運転診断を活用して、ドライバーの安全運転への意識が変わったことを実感。さらに、民間救急という緊急性の高い車両のリアルタイムな位置情報の把握をすることで、正確な到着時間の見込みを連絡するといったサービスの充実化につなげています。