【テンプレート付】運行管理者と整備管理者の選任・解任に必要な書類とは
自動車運送事業者は、利用者と社会の信頼を維持するために、日々、安全な輸送を行わなくてはなりません。そのため、道路運送法などの法律にもとづき、乗務員の乗務時間を設定したり、運行管理のための指揮命令系統を明確にしたりする必要があります。安全な運行を行うための中心的な役割を果たすのが運行管理者です。一定台数以上のバス、大型トラックなど事業用自動車を使用する自動車の使用者(事業者)は、使用の本拠(営業所があればその営業所や支店)ごとに自動車の点検や整備、保管場所に関わる事項の処理などを行う整備管理者を選任し、書類を提出することが義務付けられています。
今回は、運行管理者や整備管理者を選任しなければならない条件、選任した後に提出が必須となる書類について解説。ダウンロードをしてそのまま利用できるテンプレートも用意しましたので、ぜひご活用ください。
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目次
運行管理者とは
運行管理者は、道路運送法および貨物自動車運送事業法にもとづき、トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車の運転者の乗務割の作成(勤務予定表・シフト)、休憩・睡眠施設の保守管理、運転者の指導監督、点呼による運転者の健康状態の把握、規制情報などを含めた安全運行の支持など、事業用自動車の安全を確保するための業務を行う人のことを言います。また、運行管理者の選任数とは別に、運行管理補助者をおくこともでき、点呼など運行管理者の業務を一部代行することが可能です。
運行管理者の選任・解任について
選任は、必ず運行管理者資格を保有している者から選任しなければなりません。運行管理者を選任または解任した時は、貨物の場合は届出事由の発生後1週間以内、旅客の場合は届出事由の発生後15日以内に地方運輸支局長に運行管理者選任または解任届出書を提出しなければなりません。なお、運行管理者の選任や解任の届出記載にあたって複数の運行管理者が選任されている場合は、該当届に関わる者だけではなく、すでに選任されている者全員の氏名を記載する必要があります。なお、一般貸切旅客自動車運送事業者は、運行管理補助者を選任した際に補助者の届出も必要です。
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運行管理者の選任数
運行管理者は、事業用自動車の運行の安全確保に関する業務を事業者と共に行う必要があり、安全の確保に関する業務を行うために十分な管理者数が必要です。選任数は営業所や支店の配置車両数、そして貨物・旅客・貸切旅客(貸切バス)など車種に応じて定められています。
運行管理者は他の営業所の運行管理者や運行管理補助者を兼務することはできず、運行管理者が当該営業所に2人以上いるときは、統括運行管理者を選任しなければなりません。
事業用自動車・貨物の必要選任数
事業用貨物自動車の台数(被牽引車を除く)…1台から29台まで (運行車+運行車以外) | 1名 |
営業所ごとの運行管理者の必要選任数は1台以上29台まで (運行車以外) | 1名 |
30台から59台まで (運行車+運行車以外) | 2名 |
60台から89台まで (運行車+運行車以外) | 3名 |
以降、30台増えるごとに1名追加
※被牽引車とは…トレーラーの引っ張られる部分で、運転席がなく切り離すことができる車両のことです。
※運行車とは…運行車も運行車以外も法律的な分類では一般貨物自動車です。運行車は特別積み合わせ運送事業を営業内容とする自動車で、おもな業務は集配車でエリア内の集荷を行い、大型トラックでエリアとエリアを結ぶ幹線輸送。ヤマト運輸や佐川急便などの荷物の流れが特別積み合わせ運送事業に該当しますので、運行車以外とは、引っ越し業者のトラックや必要なときに必要な所に荷物を運ぶ貸切のトラックのことを言います。
事業用自動車 旅客(貸切旅客以外)の必要選任数
乗り合いバスの場合、保有台数1台から39台まで | 1名 |
以降40台毎に1名追加
タクシーの場合
保有台数5台から39台まで | 1名 |
以降40台毎に1名追加
事業用自動車 貸切旅客
貸切バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業者の場合、営業所ごとの運行管理者の必要選任数は、最低2名になります。
事業用自動車の台数が1台~39台 | 2名 |
事業用自動車の台数が40台~59台 | 3名 |
事業用自動車の台数が60台~79台 | 4名 |
事業用自動車の台数が80台から99台 | 5名 |
保有台数100台以上の場合、当該営業所の保有台数から100を引いた数を30で割り、その数に6を加えた数が必要選任数になります。
例) 保有台数170台の場合 (170-100)÷30=2.33 2人+6人=8人必要
一般貸切旅客自動車運送事業者で、運行管理者の必要選任数を1名とする営業所の特例は、当該営業所が運行を管理する事業用自動車の数が4台以下で、次のいずれかに該当する場合です。
■霊柩車等、会葬者の輸送を許可条件に付されている事業者の営業所
■一般的に需要の少ないと認められている離島(橋による通行が出来ない島)
■車いすでの乗降装置及び車いす固定設備等特殊な装備のある自動車を使用した輸送を許可条件に運行する事業者の営業所
つまり、葬祭業者、離島の営業所、介護タクシー専門の営業所で保有台数が4台までの営業所であれば一般貸切旅客自動車運送事業者であっても、運行管理者の必要選任数は1名で問題ありません。
運行管理者の選任と解任に必要な届出
運行管理者を選任したら、営業所の管轄にある運輸局や各自動車検査登録事務所に書類を提出します。提出時に必要なものは、以下の三点です。
・運行管理者 選任・解任 届出用紙(青色)・・・2枚
・運行管理者資格者証(写)
・ゴム印(会社)・横
提出すべき書類は2部となりますので、ご注意ください。なお、運行管理者が新たに追加された場合も届出が必要です。記載に必須の項目は、以下の5つ。解任に当たっては理由を記載します。
(1)氏名または、名称および住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
(2)貨物自動車運送事業の種類
(3)運行管理者の氏名および生年月日
(4)交付を受けている運行管理者資格者証の番号および交付年月日
(5)選任の場合、運行管理者がその業務を行う営業所の名称および所在地並びに、その者の兼職の有無(兼職がある場合は、その職名および職務内容)
(6)運行管理者でなくなった場合はその理由
無料でダウンロードできるテンプレート
国土交通省の運輸局で提供している書式は、運行管理者・整備管理者のどちらも対応する書式となっており、使い勝手も優れています。
・国土交通省 関東運輸局
・国土交通省 東北運輸局
ワードでアレンジしやすい形式です。
・トラック運送事業経営のための行政手続き 総合サイト 運行管理者選任(解任)届出書(Word)
福岡県トラック協会のフォーマットは、記載方法について非常に丁寧に解説がなされているので、記入漏れの心配もありません。
・福岡県トラック協会 整備管理者選任・解任証
整備管理者とは
整備管理者は使用者に代わって事業用自動車等の車両管理を行うことにより、点検や整備に関する管理および責任体制を明確にし、自動車の安全確保、環境保全を図ることが主な業務です。一定台数以上のバス、大型トラックなど事業用自動車を使用する自動車の使用者は、使用の本拠(営業所があればその営業所や支店)ごとに、使用している自動車を確実に整備・管理できるように整備管理者を選任しなければなりません。
整備管理者の選任・解任について
大型自動車等の使用者は、整備管理者を選任した時には、その日から15日以内に地方運輸局長にその旨を届け出なければなりません。また、変更した際も同様です。(道路運送車両法 第52条)
地方運輸局長は、整備管理者がこの法律もしくは、この法律に基づく命令またはこれらに基づく処分に違反した時は、大型自動車等の使用者に対して、整備管理者の解任を命じることができます。(道路運送車両法 第53条)
整備管理者の選任が必要な自動車使用者 (道路運送車両法施行規則 第31条の3)
整備管理者の選任が必要な条件と事業用自動車の使用の本拠ごとの台数については以下の通りです。
事業用自動車(貨物軽自動車運送事業用自動車を除く)
乗車定員11人以上の自動車(バス)が1台以上、乗車定員10人以下の自動車(タクシー・トラック)を5台以上保有する場合。
事業用自動車は、乗車定員11人以上のバスが1台あれば整備管理者の選任が必要です。タクシーを1台しか利用していない個人タクシー事業者やトラックの保有台数が4台の事業者は、整備管理者の選任は不要です。
自家用自動車
乗車定員30人以上のバスを1台以上、または、乗車定員29人以下のマイクロバス等を2台以上か、車両総重量8トン以上の大型トラック等を5台以上保有する場合。
自家用で使用する自動車でも整備管理者の選任が必要な場合があります。上記を参考に必要に応じて届出を出しましょう。
レンタカー事業者
乗車定員11人以上の自動車(バス)が1台以上、または車両総重量8トン以上の大型トラック等が5台以上、普通車を含むその他の自動車が10台以上保有する場合。
普通車が9台までであれば整備管理者の選任は不要ですが、1台でも乗車定員11人以上の自動車があれば整備管理者の選任が必要です。
貨物軽自動車運送事業用自動車
軽自動車または、小型二輪自動車を10台以上を保有する場合。
軽トラックで運送事業を行っている個人事業者、事業用トラック3台と貨物軽自動車4台を使用している営業所は整備管理者が不要です。
整備管理者の資格要件 (道路運送車両法施行規則 第31条の4)
整備管理者は、1級、2級、3級の自動車整備士技能検定に合格した者であること、または、整備の管理を行う自動車と同種類の自動車の点検もしくは、整備又は、整備の管理に関する2年以上の実務経験があり、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者が選定の条件です。つまり、自動車整備士技能検定3級以上、または2年以上の実務経験が必要とされます。
整備の管理を行う自動車と同種類の自動車とは、二輪車か二輪車以外の2区分で、トラックやバスの区分はありません。整備工場等で整備要員として点検や整備業務を行った経験が整備の実務経験に該当し、整備管理者の補助者として、車両管理業務を行った経験や、整備責任者として車両管理業務を行った経験が整備の管理経験に該当します。また、地方運輸局長が行う研修とは、運輸支局ごとに実施している「整備管理者選任前研修」を受講・修了した方です。
整備管理者の選任と解任に必要な届出
先述した条件に当てはまり、整備管理者を選任したら、届出に必要事項を記入し、管轄下にある地方運輸局に提出をしましょう。提出にあたっては選任・解任書類(二枚綴り)と会社のゴム印が必要です。また、資格要件で必要な書類として、各要件によって以下の書類も用意しなくてはなりません。
資格要件が2年以上の実務経験の場合
・実務経験証明書(2年以上の実務経験がある事業所の証明書であり、事業場の押印が必要です)
証明書はこちらからダウンロードしてご利用できます。ただし、整備管理者届出書の事業主の確認書欄に記入押印がある場合は不要です。
・選任前研修修了書:実務経験2年以上であれば整備管理者選任研修を受講のうえ、受講者に交付される証明書の写しを選任時に添付します。
資格要件が自動車整備管理士技能検定3級以上である場合
・技能検定の合格証、または手帳の写し
無料でダウンロードできるテンプレート
先ほどご紹介した国土交通省のほか、利用しやすいフォーマットのテンプレートを以下に紹介します。
エクセルで記入できるフォーマットです。
・福岡県トラック協会 整備管理者選任・解任届
PDFでダウンロード、手書きで記入できるフォーマット。
・長野県トラック協会 整備管理者選任届
まとめ
スタッフと車両を安全かつ健康に保ち、業務をスムーズに遂行するために、重要な役割を担っているのが運行管理者と整備管理者です。適切な選定を行い、必要に応じで届出を提出し、無事故無違反を目指しましょう。