義務化が進むデジタコ、もし不備があったらどうなる?
長距離トラックの事故多発傾向になかなか歯止めがかかっておらず、とりわけ7トン以上8トン未満のトラックの死亡事故率・重傷事故率が高いことから、国土交通省は事業者に運行管理の徹底を求めています。
そこで平成29年4月以降、車両総重量7トンクラスでも運行記録計の装着が義務化されました。ドライバーが法定速度を守っているか、休憩を適切に取っているか、危険な運転をしていないかなどを記録することでドライバーの安全を守るためです。
では、義務化に反してデジタコやアナタコなどの運行記録計が装着されていない場合、原則としてどんな違反にあたるのでしょうか。
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運行記録計の不備があった場合
最近では短期的に貸切バス、路線バス、トラック、ハイヤー・タクシー、事業用自動車等の車両に運行管理計の装着義務が広まっています。運行記録計とは運行時間中の走行速度などの変化をグラフ化することでその車両の稼動状況を把握するというもの。ドライバーの安全や健康の管理、そして業務効率化を実現するためにも、運行記録計で計測された各種のデータは非常に重要視されています。
宮城県トラック協会によると、毎月行っている巡回指導において、装着対象車両の有無および装着と記録の調査を2017年の4月から7月まで行ったところ、巡回指導件数が227件、うち運行記録計未装着の事業者数は12。対象車両台数が834台であるのに対し、未装着の車両台数は30台でした。もし指定されている事業用の車両に運行記録計を装着していなかった場合、または故障したままにするなど不備があった場合、どのような法令違反にあたるのでしょうか。
なお、アナタコであればチャート紙、デジタコであればSDカードが装填されていなかったり、時計が狂っていた場合などは「運行記録計不備」という違反とされ、運転者や運行管理責任者は処罰の対象となります。
交通違反の区分:一般違反行為(白キップ)
根拠法律:道路交通法第63条の2の1項~2項、道路運送車両の保安基準第48条の2
一定の条件を超える車両が通行記録計を常備せずに運転する行為です。
【行政処分】行政処分はありません。
【反則通告制度】大型車・中型車6,000円、普通自動車4,000円、※警視庁反則金一覧表参照
道路交通法第63条の2
自動車の使用者その他自動車の装置の整備について責任を有する者又は運転者は、道路運送車両法第3章又はこれに基づく命令の規定により運行記録計を備えなければならないこととされている自動車で、これらの規定により定められた運行記録計を備えていないか、又は当該運行記録計についての調整がされていないためこれらの規定により定められた事項を記録することができないものを運転させ、又は運転してはならない。
前項の運行記録計を備えなければならないこととされている自動車の使用者は、運行記録計により記録された当該自動車に係る記録を、内閣府令で定めるところにより1年間保存しなければならない。
道路運送車両の保安基準第48条の2
次の各号に掲げる自動車(緊急自動車及び被牽引自動車を除く。)には、運行記録計を備えなければならない。
①貨物の運送の用に供する普通自動車であって、車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上のもの
②前号の自動車に該当する被牽引自動車を牽引する牽引自動車
前項各号に掲げる自動車に備える運行記録計は、24時間以上の継続した時間内における当該自動車の瞬間速度及び2時刻間の走行距離を自動的に記録することができ、かつ、平坦な舗装路面での走行時において、著しい誤差がないものとして、記録性能、精度等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
運行記録計は法律違反も見える化する
ほぼデジタルに移行されつつある運行管理や運行記録計。リアルタイムかつ、正確な情報に計測された情報によって荷待ち時間や休憩時間、運行中のデータが明確になるため乗務時間などをごまかすことが難しく、今後は監査などでの処分も厳しくなることが予想されています。
2015年1月28日、改善基準告示を繰り返し違反していた札幌市に本社を置く運送事業者に対し、初めて「30日間」の事業停止処分という重たい行政処分が科せられました(北海道運輸局)。この処分の原因は、過去に労働基準監督署に長時間の拘束時間を改善するように指導されていたにも関わらず、これを軽視して乗務時間の基準に著しく違反していた(※)、つまり改善基準告示違反を繰り返していたことが大きな理由です。また、札幌の運送事業者だけでなく、業務を依頼していた元請け(京都の大手運送会社)にも強化された荷主勧告制度に基づき警告書を即時発行している点が注目されました。
今後は、警察の交通事故捜査や運輸支局の監査が実施される際には、運行記録計や労働時間の調査が厳しく行われ、長時間運転・長時間労働に対するペナルティはより厳格に科されていくと考えられるでしょう。
※「乗務時間の基準に著しく違反」の具体的根拠事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準(改善基準告示/平成13年国土交通省告示第1365号)の未遵守が1か月間で計31件以上あった運転者が3名以上確認され、かつ、過半数の運転者について告示に規定する拘束時間の未遵守が確認された場合をいう。
見えない乗務時間を「見える化」するのがデジタコ
長距離運行を行う運送業者の場合、拘束時間や休息期間の改善を考えている会社も少なくはありません。ドライバーの長時間労働は乗務基準違反に当たります。
ドライバーの時間管理は、事業者側が次の手順で行うことを求められます。
- 運行管理者が、改善基準告示に基づき勤務時間(拘束時間)及び乗務時間(運転時間)を定めること
- 労働時間等の管理を実施すること
- 諸帳票類で実施状況を確認すること
- 問題があれば改善していくこと
ドライバーでなければ、実際の時間管理がわからないのでは…。しかし、最近ではデジタル式のタコグラフ、デジタコやデバイスによる車両およびドライバーのリアルタイム管理が可能になっています。
法律上、現時点では装着義務化されたデジタコやアナタコの代用にというわけにはいきませんが(義務化されている車両でも、プラスαとしてお使いいただくことはもちろん可能です)、本メディアの運営会社であるスマートドライブが提供している「SmartDrive Fleet」でも、GPS機能を搭載したリアルタイム動態管理機能から運転日報を自動で作成する機能、ドライバーの運転特性を把握して事故削減をサポートする運転診断機能を備えています。
デジタコ製品などに比べるとずいぶん安価で、かつ設置工事も必要ないので業務を止めることなく気軽に導入できます(ドライバー自身が手で差し込めば設置完了です)。クラウド上に集計されていくデータをもとに業務の効率化やドライバーの勤怠・安全を管理し、会社全体のリスク管理と生産性の向上をサポートするツールとなっています。
車両管理・アルコールチェックの課題解決をSmartDrive Fleetがサポートいたします。以下から気軽にご相談ください。
完全なる義務化は目前?
ヤマト運輸は2018年11月よりドライブレコーダーとデジタルタコグラフを一体化した通信機能搭載の新たな車載端末を全集配車両約36,000台に順次搭載すると発表しました。この施策と合わせて日立製作所と連携し、運行データを幅広く効率的に収集・分析して安全運転教育の高度化を図ると言います。
新たに搭載する車載端末は従来デジタルタコグラフで収集していた速度や駐車位置情報などに加え、ドライブレコーダーで収集する走行映像やGPSアンテナから得た情報で作成する走行軌跡などの運行データをクラウド形態の情報基盤へ、通信回線を通じて自動でリアルタイムに転送・蓄積。ヒヤリハット体験箇所の登録を自動化したり、運転開始・終了設定の省力化や無線対応による車載端末のソフトウェア更新を自動化し、ドライバーがより安全運転に注力できるよう業務支援するというもの。
将来的には、車両の故障予兆診断による整備計画の効率化、自治体や外部企業などとデータを連携し、収集した道路状況のデータを利活用するなど、新たな高付加価値ビジネスの創出などを幅広く検討するとしています。
運行記録計装着の義務化が拡大していますが、今後は車両の重量によらず、車両を使用するすべての事業者における何らかの運転記録装置の装着が当たり前になって行くのかもしれません。