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今さら聞けない「DX」とは?

近年、目や耳にしない日が無いほど話題となっている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。
最近では経済ニュースや業界紙だけではなく、情報番組や週刊誌にも登場するほど浸透してきましたが、IT化やデジタル化と混同して捉えている方も多いようです。本記事では、そもそもDXとは?という素朴な疑問を解消すべく、その概念と本質を解説します。

今さら聞けない「DX」とは?

「DX」とはデジタル技術を利用した「変革」である

DXという概念が誕生したのは2004年のこと。スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と提唱したことが発端です。

ご存知かもしれませんが、「X=トランスフォーメーション」とは「変化・ 変質・ 変換」を意味する言葉、つまりDXとはデジタル技術を利用した変革を指しますが、従来までアナログで行っていた業務のデジタル化(IT化)をすれば、DXを実行したと思っている方も少なくはないようです。しかし、企業が推進すべきDXとは、デジタル技術による新ビジネス開発やアナログとの融合による生産性UP、コスト削減やスピード向上による既存スタイルや組織の変革であり、実のところIT化はDXという目的を実現する手段でしかありません。

そして、ストルターマン教授の提言と呼応するようにいち早くDXを推進したのが、Amazon・アップル・マイクロソフト・Facebookなどで、それを中国企業であるアリババやテンセントですが、いずれも現在では株式時価総額で世界トップ10にランクインしています。

そう、今世界経済の覇権は米国GEやエクソンモービルに代表されるような巨大製造・エネルギー企業、あるいはGM・VW・トヨタなどの自動車メーカーを離れ、DX推進を実現したデジタルテクノロジー企業に握られているのです。

政府や経産省がDXを推進する理由

前項で触れた世界の株式時価総額ランキングによると、2020年11月時点で日本企業トップは「トヨタ自動車」で全体の49位、その金額は約1862億ドルで第1位のアップル(2兆149億ドル)と比較するとその差は歴然としています。しかし、過去にさかのぼると1989年の同ランキングでは三菱銀行や住友銀行と東京電力が、1999年にはNTTドコモとNTTがトップ10内にランクインしていたことを考えると、DXという概念が世に現れてからというもの、国内のビジネスはやや乗り遅れていることが分かります。

遅れながらも経済産業省は2018年12月、DX推進のための経営のあり方・仕組みとDXを実現する上で基盤となるITシステムの構築を柱とした、「DX推進ガイドライン」という指標を打ち出しました。この中で経産省は国内各企業に対し、DXの推進でグローバルな競争力を高めるためには、単に製品やサービスを変革するだけでなく、企業の組織や業界の文化までを変え取り組む覚悟が必要であることを示しているのです。

国内におけるDXの推進事例

前述したように、経産省がDX推進に関するガイドラインを示したのがわずか4年前ですから、DX推進において日本が米国や中国より、スタートの時点で大きく出遅れていることは明らかだと言えるでしょう。しかし、企業として歴史の浅いAmazonやFacebookが、現在世界のトップに君臨していることでもわかる通り、DXを推進すれば企業規模の大小や出遅れを短期間で取り戻すことも可能です。

この項では、DXの推進によって市場での競争力や企業パワーがUPし、顧客数やユーザー満足度が増加に転じている、国内企業の具体的事例をいくつかご紹介します。

ユーザーの意見を収集・分析して反映「三井住友銀行」

国内メガバンクの一角である三井住友銀行は、顧客満足度(CS)向上を目指し、年間3万5千件を超えるとされるカスタマーボイスをITによって見える化・分析し、それを現場へフィードバック・即時反映させるソリューション・システムを導入しました。

これまで、カスタマーボイスを分析する際、内容別に分類する作業に膨大な労力がかかっていたところ、NECとの連携で導入したITシステムの活用により、意見・要望など時系列による推移や細かな課題まで把握し、より価値あるサービス提供が可能になったそう。

「お客さまの声分析ソリューション」と名付けられたこのDX推進により、社内において提言すべきテーマの的確かつ迅速な情報把握が容易になったほか、業務・サービスの改善に向けたPDCAサイクルがスピーディーに回り、労力とコストカットにもつながっています。

コロナ禍による新しい生活様式に適合「家庭教師のトライ」

「家庭教師のトライ」をはじめとして、教育事業を幅広く手がけているトライグループは、スマホやタブレット端末で好きな時間に、好きな場所で必要な授業を自由に視聴できる、映像授業サービス「Try IT」を開発・提供しています。

従来のアナログな対面式授業をデジタライズして配信する新スタイルは、おりしもコロナ蔓延防止対策に苦慮する国内の教育事情に合致。リリース後、公式の会員登録者数は100万人を超え、学校や塾のサポート的役割に留まらず、映像授業のみを取り扱った塾が設立されるなど、教育ビジネスの面でも普及の兆しを見せています。

トライの取り組みが国内企業における「DXの成功例」とされているゆえんは、莫大な資金を投じて目新しいデジタル技術を導入したことではなく、あくまでパソコン・タブレット・スマホなど、一般に普及しているデバイスと、デジタル環境を活かしたところにあります。

4,000本以上の中学・高校の映像授業を無料で見放題にしたり、隙間時間で学習練度を上げられたりできるよう、1回の授業を15分にする、有料ではあるが生徒からの質問にオンライン対応するなど、教育の地域・経済格差の是正につながる工夫を加え、通常授業さながらの良質なコンテンツを作成しました。

ECビジネスをBtoCからCtoCへ転換「メルカリ」

メルカリは、スマホから誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリマアプリであり、クレジットカード・キャリア決済・​コンビニ・銀行ATMなど、様々な方法での決済可能な利便性が人気を博し、累計出品数が2020年12月時点で20億品を突破しました。

海外ならAmazon、国内なら楽天などのECサイトは、あくまで商品やサービスを提供する企業(もしくは個人業者)と消費者をネットでつなぐビジネスですが、メルカリは各家庭で不要になった物品などを、不特定多数の個人同士で売買するサービス。

言ってみれば、自治会などが行っているガレージセールのようなもので、Yahoo!Japanが運営しているヤフオクも同じCtoCビジネスですが、従来のネットオークションサイトと異なり、「スマホ完結型サービス」に特化したことで広く普及しました。

つまり、メルカリは、個人間での物品売買を仲介しマージンを得る既存のネットオークションビジネスに、スマホ完結・非接触・匿名性などの付加価値を付けることで、全く新しいビジネスモデルを作り上げたのです。そして、そのためにメルカリがしたことと言えば最新ITの導入ではなく、決済システムの整備や出品・配送プロセスの簡略化程度、資金をかけず「発想の転換」で既存サービスより大きく利便性が向上。その結果、顧客獲得につながったDX推進の代表的事例と言えるでしょう。

DX推進の波に乗り遅れたらどうなる?

ビジネス界の趨勢については、世界的トレンドや政治情勢に左右されるため予想しづらいものですが、デジタル技術がここまで広くそして深く浸透した現在、旧態依然の態勢を良しとし、DXを取り入れない企業は成長が止まってしまうと考えられます。

現在、世界経済はコロナウィルスまん延に伴う消費活動の冷え込みなどで、未曽有の危機的状況にありますが、ワクチンの普及などによってコロナが無事終息した暁には、必ず経済の世界的V字回復がやってきます。そして、そのV字回復のビックウェーブに乗るための鍵となるのがDXです。いつコロナが終息するか、いつ経済が回復に向かうのかはまだ明確に見えないとことがありますが、DX推進に邁進しなければ、コロナ後、企業が大きく成長を遂げることは難しいでしょう。

DXの良いところは少ない投資で大きな効果を得られるところです。巷に企業のDX推進をサポートするソリューション・システムやサービスが数多くリリースされていますので、自社にとって有効なDX推進システムはどれか見極め、活用していきましょう。ただし、こうしたツールやシステムはDXを進める道具にしか過ぎません。自社がどのような変革を起こしたいのか、どのような目的を成し遂げたいかを定めるところから始めませんか。

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