2025年から施行!社用車を使う企業が押さえるべき法令・制度改正ポイントとは
より適正な方法で、より効率的に、より安全な社会を実現するために、毎年、さまざまな法令や制度の改正が行われています。本記事では、業務で車両を使用する企業の総務担当者が押さえておくべき、2025年より施行される法令・制度改正の概要とポイントをまとめてご紹介します。
SmartDrive Fleet 利用プランまるわかりガイド
SmartDrive Fleetでご利用いただける機能の違いや料金体系、無料付帯サービスについてご紹介しています。ご検討の参考や稟議資料としてご活用ください。
目次
2025年の法令・制度改正まとめ
本記事でご紹介する法令・制度改正の項目は次の6点です。
- 高速道路の深夜割引の見直し(7月ごろ〜)
- ガソリン補助金の縮小(1月16日〜)
- 貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講の義務付け(4月1日〜)
- マイナ免許証(3月24日〜)
- 車検の受検可能の期間拡大(4月1日〜)
- 自動車保険の値上げ(1月1日〜)
1月からすでに施行されているものもありますので、以下より詳しく解説していきます。
高速道路の深夜割引の見直し(7月ごろ〜)
改正の概要
割引適用時間帯が「22:00〜翌朝5:00」に拡大
現在の適用時間帯は0:00〜翌朝4:00ですが、前後合わせて3時間延長となり、22:00〜翌朝5:00になりました。
割引適用時間帯の走行分のみが割引される
現在は、適用時間帯に走行することで全走行分が割引されていますが、見直し後は適用時間帯に走行した分のみの割引対象です。なお、見直し後の割引は「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」へ後日還元されます。
上限距離の新設
速度超過など、割引対象距離を増やすための無謀な運転を抑止し、安全・安心な走行ができるよう、割引適用距離に上限が新設されます。
軽自動車等・普通車・中型車・乗合型自動車 | 上限は利用時間1時間あたり105km |
大型車・特大車(乗合型自動車以外) | 上限は利用時間1時間あたり90km |
見直しに伴う影響を低減するために、激変緩和措置を実施
深夜割引の見直しによる長距離利用の運行料金負担増加や交通集中を抑制するために、運用開始から5年ほどは激変緩和措置が行われます。
- 深夜割引適用車両のうち1,000km以上走行した場合、1,000kmを超える部分を割引対象走行分として追加します。
- 22時台に高速道路を流出した車両は、22時台に走行した分の還元率が最大20%となります。
背景
現行の割引制度は、割引を受けるために高速道路の出口手前で滞留する車両が問題になっています。国土交通省が行った2021年3月の調査では、東名高速の東京本線料金所で0時前に最大500メートルの滞留車が確認され、トラックドライバーの労働環境悪化につながっているとされていました。
近年、物流業界におけるドライバー不足が顕在化しているうえ、2024年度はトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用されたことで、人手不足による輸送量低下が懸念されています。国が深夜割の見直しを進めるのは、ドライバーの負担軽減と労働環境の改善をすることでドライバー不足を解消するという狙いがあるためです。
ポイント
- 深夜割引の対象路線は変更ありません。
- 後日還元型の割引制度になる理由は、車両ごとの通信記録を収集し、そのデータをもとにした割引対象距離から深夜割引の割引相当額が算出されます。その処理に一定の時間を要するため、割引適用方法を変更し、現行の平日朝夕割引と同様に、「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」に変更するためです。つまり、今までは割引額が一括で請求されていましたが、見直し後は後日還元となるため、経費精算処理が煩雑になる可能性があります。
ガソリン補助金の縮小(1月16日〜)
改正の概要
ガソリン補助金とは、正式名称「燃料油価格激変緩和補助金」のことで、原油価格高騰が与える生活や経済活動の影響を最小化する目的で設けられた措置のことです。全国平均ガソリン価格が一定価格以上になった場合、燃料油元売りに補助金が支給されます。
経済産業省はこれまで、レギュラーガソリンの販売価格が全国平均で1ℓあたり175円前後になるよう調整してきましたが、政府が2024年12月より段階的に縮小していくことを公表。2024年12月19日からガソリンの全国平均小売価格が5円程度上昇、2025年1月16日からはさらに5円程度上昇し、合計10円程度上昇になります。
背景
資源エネルギー庁が公表した「給油所小売価格調査」では、2024年12月のレギュラーガソリン1ℓあたりの全国平均価格が180.6円と上昇し、2023年9月以来、1年3ヵ月ぶりに180円を超えました。原油高と円安でガソリン価格は高止まりしていますが、これはガソリン補助金により価格が抑えられているためです。
石破政権が2024年11月に公表した政府の総合経済対策で「燃料油価格の激変緩和事業については、12月から出口に向けて段階的に対応する」と公表したことで、政府は2024年12月中旬よりガソリン補助金について、補助率を段階的に縮小することを決めました。
ポイント
- 燃料費が高騰するため、可能な限り、無駄な移動を削減したり、エコドライブを推進したりしましょう。
貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講の義務付け(4月1日〜)
改正の概要
2024年5月に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(改正物流法)」にもとづき、2025年4月1日より軽貨物運送事業の安全管理者制度が新設されます。義務化となるのは次の5項目です。
・貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講の義務付け
・業務記録の作成・保存の義務付け
・自己記録の作成・保存の義務付け
・国土交通大臣への事故報告の義務付け
・特定の運転者への指導・監督及び適正診断の義務付け
※詳細については「貨物軽自動車安全管理者とは?わかりやすく罰則や講習について解説」をご参照ください。
背景
近年、EC市場の拡大や配送需要の増加により、ラストワンマイル配送を担う、軽貨物車両を使用した運送業が急速に拡大しました。特に2020年以降は届け荷の急増に伴い、軽貨物車両による配送業務の負担が増え、死亡・重症事故件数が増加しています。
ラストワンマイル配送の市場は個人事業者や小規模事業者が多い性質上、法令遵守や安全対策が十分に行われていないケースが散見されます。これらの課題に対し、安全で持続可能な運送事業を確立するために、2025年4月1日より新制度が施行されます。
※ラストワンマイル配送とは、商品や荷物が最終的な目的地(顧客の自宅や店舗)に届くまでの「最後の1マイル」の配送部分を指す物流の用語です。
ポイント
- コンプライアンスの観点では、黒ナンバー事業者へ貨物運送を依頼している企業(荷主)も認識を合わせ、安全対策や過労防止対策に取り組んでいくことが重要です。
マイナ免許証(3月24日〜)
改正の概要
運転免許証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ免許証」が3月24日から導入されます。マイナ免許証のメリットは、運転免許証更新の講習をオンラインで受講することができるほか、住所変更手続きなどがワンストップで対応可能になります。
背景
マイナ免許証を導入する目的は、利便性向上と行政手続きの効率化が目的です。マイナンバーカードと各種証明書の一体化により、管理がしやすくなり、住所や氏名などの変更手続きが効率化できるようになります。
ポイント
- 免許更新の際、優良運転者と一般運転者はオンラインで講習が受講できるようになるため、ドライバーのリソース担保や業務効率化につなげることができます。
- 違反者講習は今まで通りのため、手間が変わりません。安全運転の啓蒙や違反ゼロに取り組みましょう。
車検の受験期間が拡大(4月1日〜)
改正の概要
4月1日より、車検証の有効期間満了日の2ヵ月前から車検を受けられます。
改正前:
車検証の有効期限前1ヵ月前以内に受検すると、新車検証の有効期限を旧車検証の有効期限から2年間とすることができる。
改正後:
車検証の有効期限前2ヵ月前以内に受検すると、新車検証の有効期限を旧車検証の有効期限から2年間とすることができる。
背景
現在、車検証の有効期間満了日の1ヵ月前から満了日までの間に車検を受けると、残存する旧車検証の有効期間を失うことなく、新車検証に更新できる仕組みになっています。
現在は車検需要が年度末に集中しており、自動車ユーザーが整備や車検の予約を取りづらい、自動車整備士も残業・休日出勤に追われるといった問題がありました。これらの問題を解決するために関係省令が改正されたのです。
なお、車両の使用本拠地が離島にある場合は、これまで通り車検証の有効期間満了日の「2ヵ月前」から車検を受けることができます。
ポイント
- 車検の申込予約がしやすくなりますが、余裕を持って予約・受験をしましょう。
- 車検の申込等の自社管理において、多少の変更が生まれます。更新日の期限が、1ヵ月以内から2ヵ月以内に拡張し、更新タイミングが一定ではなくなるため、Excelなどで関数を組んで管理をしている場合、変更する必要があります。
自動車保険の値上げ(1月1日〜)
改正の概要
国内大手損害保険会社各社が、2025年1月より自動車保険料を平均3.5〜5%程度値上げすることを発表しました。
自動車保険料改定を公表した会社
損保ジャパン・東京海上日動・三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保・イーデザイン損保・ソニー損保・チューリッヒ・セコム損保・楽天損保
以下より、各社の自動車保険料改定の発表資料をご確認いただけます。
軽自動車の型式別料率クラスの区分拡大
始期日が2025年1月1日以降の契約に関して、軽自動車(自家用軽四輪乗用車)の保険料計算時における重要な要素「型式別料率クラス(※)」が、3区分から7区分へと拡大されます。「型式別料率クラス」は、車の型式ごとにおける事故実績などにもとづき、損害保険料率算出機構が保険料を算出するものです。
該当する型式の直近の事故発生状況を反映し、より適正かつ公平な保険料にすることを目的に、事故の少ない型式は低いクラスへ、事故の多い型式は高いクラスへ変更する見直しが毎年1回行われています。
背景
自動車保険の値上がりは、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、交通量が増えたこととで交通事故件数が増加したこと、物価高騰の影響による修理費用や人件費増加などが関係しています。
また、軽自動車の型式別料率クラスの区分拡大については、軽自動車が広く普及したことによるユーザー層の多様化、衝突被害軽減ブレーキの搭載など自動車ごとの安全性能の高度化が進んだことで、型式ごとのリスク実態に差がひらくようになったためです。
ポイント
- フリート契約をしている場合は、事故の発生率に引き続きの意識を向け、可能な限りの割引率向上を目指し、コスト削減を行いましょう。