テレマティクス保険
テレマティクスという仕組みを自動車保険の分野に活用したのがテレマティクス保険である。 これまで正確に取得することが困難であったドライバーの運転データを取得・分析することによって、運転の状況に合わせて保険料率を決めることができるという仕組み。 保険とITを組み合わせた「インシュアテック」の一種でもある。
●テレマティクス保険の発祥:
テレマティクス保険は1990年代に入ってから欧米で注目を集めるようになった。そのきっかけとなったのが米国の保険会社Progressive。1992年から他社に先駆けテレマティクス保険の研究や実証実験に着手し、この新たな自動車保険の普及に大きく貢献した。走行距離と交通事故のリスクに相関関係があることを明らかにし、PAYD(走行距離連動型)という走行距離によって保険料が変わるタイプの商品を生みだしたのも同社である。
●テレマティクス保険の2タイプ「PAYD」と「PHYD」:
テレマティクス保険には、PAYD(走行距離連動型)とPHYD(運転行動連動型) の2種類があり、それぞれ保険料を算出する際の基準となる指標が異なる。
PAYD(走行距離連動型):
走行距離が指標。距離が短い場合はその分事故を起こす可能性が相対的に低いと想定して保険料が安くなり、逆に距離が長い場合にはその分事故を起こす可能性が高まるということから、保険料も高くなるという仕組みとなっている。週末ドライバーなど、たまにしか運転しないような方に特にお得な保険となっている。
PHYD(運転行動連動型):
速度やアクセル・ブレーキの頻度、強さなどの運転行動が指標。速度超過や急激な速度変化がないような安全運転の場合に、事故リスクが低いと判断され保険料が安くなり、逆に荒い運転が多い場合に事故リスクが高いと判定されて保険料が上がる仕組みとなっている。安全に気をつけて運転することが苦にならない方にとってお得な保険となっている。
●保険料の算定時に使われるデータ:
「以下のようなデータが対象となります。(* 保険会社ごとに異なる部分あり)
- 運転日時、運転総時間、頻度
- 運転距離
- 運転場所
- 最高速度、平均速度
- アクセルやブレーキの強さ、頻度
- 車線変更の速度、頻度
●テレマティクス保険のメリット
・保険会社のメリット:
新規の顧客(特に若年層)を開拓するチャンスになる。
テレマティクス保険を通じてドライバーが安全運転を心がけるようになれば事故が減少し保険金の支払い額を減らせる可能性もある。
・ドライバーのメリット:
安全運転を心がけることで保険料を安く押さえることができる。
自らの運転行動を把握することで自分の運転を改善したり、交通事故に繋がる危険な運転を減らすことができる。
社会的にも安全な運転を心がけるようなドライバーが増えれば交通事故を減らすことにも繋がる可能性もあり、欧米だけでなく日本でも注目が高まっている。