この記事を読むと
- 物流統括管理者(CLO)を正しく理解できる
- CLOの業務内容を理解できる

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2026年4月1日、「物流効率化法」の規制的措置が始まりました。一定規模以上の荷主企業とフランチャイズチェーン本部は、「物流統括管理者(CLO)」を選任する義務を新たに負います。「CLO という役職を置かなければならないのはわかった。でも、誰を選べばいいのか、何をさせればいいのか、選ばなかったらどうなるのか」——そうした疑問を抱える物流・総務担当者向けに、実務に直結する情報を整理します。
物流統括管理者(CLO)とは
物流統括管理者(CLO)は、2024年5月に改正・公布された物流効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)に基づき、
2026年4月1日から選任が義務付けられた役職です。
CLO は「Chief Logistics Officer」の略称です。
企業全体の物流効率化を経営の視点から統括する責任者として位置づけられています。
背景にあるのは、物流の2024年問題です。
2024年4月から、トラックドライバーに年960時間の時間外労働上限規制が適用されました。
荷待ち時間や非効率な荷役が横行したまま事業を続けると、運送会社にドライバーの稼働余力がなくなり、
必要な物流サービスが確保できなくなります。
CLO という役職を経営幹部レベルで設けることで、
部門間の壁を超えた物流改革を推進させることが、この制度の狙いです。
CLO 選任が必要な事業者の範囲
CLO の選任が義務付けられるのは、物流効率化法上の「特定事業者」のうち、
特定荷主と特定連鎖化事業者に該当する企業です。
特定荷主・特定連鎖化事業者の判断基準
| 区分 | 判断基準 |
|---|---|
| 特定荷主(主に発荷主・着荷主) | 前年度の取扱貨物重量が 9万トン以上 |
| 特定連鎖化事業者(FC チェーンの本部等) | 前年度の取扱貨物重量が 9万トン以上 |
国土交通省・経済産業省の推計では、全国で約3,200社が特定事業者に該当するとされています。
なお、特定貨物自動車運送事業者(保有車両150台以上)および特定倉庫業者(年度内入庫量70万トン以上)には、CLO 選任義務はありません。
中長期計画の提出や定期報告は必要ですが、CLO 設置の対象から外れていますので注意してください。
自社が対象かどうか判断するポイント
「前年度の取扱貨物重量」は、発送・着荷の両方の貨物量を合算して判断します。
判断に迷う場合は、国土交通省のポータルサイトに判断基準の詳細が公開されています。
CLO の選任要件:経営幹部から選ぶ理由
CLO には、次の要件が法律で定められています。
「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」
(重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要があります)
——物流効率化法(国交省CLOポータル)
つまり、物流部門の担当者や課長クラスではなく、
役員・執行役員・上席管理職(CxO クラス)から選任することが求められます。
この要件には明確な意図があります。
CLO の業務は、調達・生産・販売・物流といった複数の社内部門にまたがります。
部門横断的な意思決定を動かすには、経営全体の判断に関与できる立場の人物である必要があるためです。
CLO が担う8つの業務内容
CLO が統括管理すべき業務は、物流効率化法に次のとおり規定されています。
| 番号 | 業務 |
|---|---|
| ① | 中長期計画の作成(物流効率化の目標・施策の策定) |
| ② | トラックドライバーの負荷低減に向けた事業運営方針の作成と社内体制の整備 |
| ③ | 定期報告の作成(国への報告書類の作成) |
| ④ | 社内関係部門(開発・調達・生産・販売・在庫・物流等)間の連携体制の構築 |
| ⑤ | 物流効率化のための設備投資・デジタル化・物流標準化に向けた事業計画の作成・実施・評価 |
| ⑥ | 物流効率化に関する社内研修・従業員の意識向上活動の実施 |
| ⑦ | 調達先・納品先の物流統括管理者や物流事業者との連携・調整 |
| ⑧ | その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に必要な業務 |
注目すべきは④です。
CLO には、物流部門だけでなく、開発・調達・販売といった他部門と連携して
リードタイムの確保や発注・発送量の適正化を進める役割が明記されています。
物流コスト削減を「物流部門だけの課題」として閉じてはならない、という国の強いメッセージが込められています。
選任しなかった場合の罰則
CLO 選任義務に違反した場合、以下の罰則が適用されます。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| CLO の未選任(特定荷主・特定連鎖化事業者) | 100万円以下の罰金 |
| CLO の選任・解任の届出義務違反 | 20万円以下の過料 |
| 中長期計画の提出義務違反 | 50万円以下の罰金 |
| 定期報告の不提出・虚偽報告 | 50万円以下の罰金 |
罰金に加えて、取り組みが不十分と判断された場合は国から勧告・命令が下される場合があります。
勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性もあります。
サプライチェーン上の取引先に波及するリスクも念頭に置く必要があります。

CLO 選任の実務スケジュール
2026年4月1日に施行が始まったものの、届出手続きには準備期間が設けられています。
担当者が今すぐ進めるべきステップをまとめます。
ステップ1:自社が特定事業者に該当するか確認する
前年度の取扱貨物重量を集計し、9万トン以上かどうかを確認します。
判断が難しい場合は、国土交通省のポータルサイトの判断基準を参照してください。
ステップ2:CLO 候補者を選定する(2026年4〜5月)
「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」を候補として挙げます。
物流部門の管理職だけでなく、経営意思決定に関与できる役員クラスを含めて検討してください。
ステップ3:届出を完了する(指定通知受領後、個別の指定通知の指定期限内)
CLO が決まったら、所管の地方整備局等に届出を行います。
届出後は CLO のもとで中長期計画の策定を開始してください。
ステップ4:中長期計画を作成・提出する(2026年10月31日が初回提出期限)
取り組み目標・実施施策・進捗管理の仕組みを整備します。
CLO が主体となり、社内各部門を巻き込んで策定を進めてください。
よくある質問
Q. グループ企業・子会社はそれぞれ CLO を選任しなければなりませんか?
原則として、法人格ごとに特定事業者の指定を受けるかどうかが判断されます。
子会社が独立した法人として年間9万トン以上の貨物を取り扱う場合は、別途 CLO の選任が必要です。
グループ全体での貨物量が9万トンを超えていても、各社の個別貨物量が9万トン未満であれば原則対象外です。
Q. 現在の物流部長を CLO に充てても問題ありませんか?
要件は「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」です。
物流部長が役員相当の意思決定権限を持っていれば要件を満たす可能性がありますが、
実質的に経営判断に関与できない場合は要件を満たさないと判断されるリスクがあります。
役員・執行役員クラスの選任を推奨します。
Q. CLO と安全運転管理者は別に置かなければなりませんか?
CLO は物流効率化法上の役職、安全運転管理者は道路交通法上の役職です。
両者は法的根拠・役割・選任要件がすべて異なります。
同一人物が兼任することは制度上禁止されていませんが、実務上の業務範囲の広さを考慮した上で判断してください。
Q. 特定事業者に指定された場合、誰から通知が来ますか?
国(国土交通省・経済産業省)から特定事業者の指定通知が届きます。
指定通知を受け取ってから一定期間内に CLO の選任・届出を行う必要があります。
指定通知を待たずに自社で該当可否を確認し、準備を進めておくことを推奨します。
まとめ
物流統括管理者(CLO)の選任義務は、2026年4月1日から施行された新たな義務です。
実務担当者がすぐに取り組むべきことは3点です。
- 自社の貨物取扱量を確認する:前年度の取扱貨物重量が9万トン以上であれば選任義務が生じます
- 経営幹部クラスの CLO 候補者を選定する:物流部門の担当者ではなく、役員・執行役員クラスを候補にします
- 初回中長期計画の提出期限(2026年10月31日)に向けて動き出す:CLO 選任後すぐに計画策定に着手する必要があります
罰則は最大100万円の罰金ですが、勧告・企業名公表・取引先への影響といった副次的なリスクも伴います。
早期の対応で、コンプライアンスリスクを確実に回避してください。
参考資料
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