この記事を読むと
- マイカー通勤の許可基準や必須ルールを把握できる
- 事故時に企業責任が問われるケースを理解できる
- リスク低減に向けた管理や教育の要点がわかる

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「マイカー通勤を認めているけれど、会社としてどこまで管理すべき?」「マイカー通勤中に事故が起きたら、会社にも賠償責任が発生するの?」
マイカー通勤を認める企業が増える一方で、このような不安や疑問を抱える総務・人事・安全運転管理者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マイカー通勤が増えている背景から、そのメリット・デメリット、会社がどこまで管理すべきか、通勤中の事故と企業の責任、そして管理を効率化するポイントまでを、できるだけ平易な言葉で解説します。
マイカー通勤が企業で広がる背景
近年、「マイカー通勤」を認める企業は確実に増えています。特に、以下のような環境変化が大きなきっかけとなっています。
- 新型コロナウイルス感染症の流行により、満員電車や混雑したバスを避けたいニーズが高まった
- 働き方改革の影響で、勤務時間や勤務場所が柔軟になり、通勤手段の選択肢も広がった
- 地方の工場・物流拠点など、公共交通機関の便が悪く、マイカー通勤がほぼ唯一の通勤手段であるケースが多い
また企業側にとっても、
- 通勤時間の短縮による従業員の疲労軽減・生産性向上
- マイカー通勤を認めることで採用の間口が広がり、人材確保につながる
といったメリットがあり、「マイカー通勤をどう活用し、どう管理するか」は多くの企業にとって重要なテーマになっています。
マイカー通勤のメリットとデメリット
マイカー通勤には、従業員にとっての利便性だけでなく、企業側にとってのリスクも存在します。ここでは、主なポイントを整理しておきます。
マイカー通勤のメリット
- 通勤時間の短縮
自宅から職場まで直接移動できるため、乗り換えや遅延の影響を受けにくく、通勤時間を短縮できます。 - ストレスの軽減
混雑した電車・バスを避けられ、自分のペースで音楽やラジオを聴きながら通勤できます。 - 柔軟な対応力
残業や早朝出勤、家族の送迎など、ライフスタイルに合わせた柔軟な対応がしやすくなります。 - 感染症対策
不特定多数との接触が減るため、感染症リスクを低減できます。
マイカー通勤のデメリット(企業側の視点も含む)
- 事故リスクの増加
通勤時の自動車事故が増える可能性があり、場合によっては企業の管理責任や賠償責任が問われることがあります。 - 通勤費・手当管理の煩雑化
ガソリン代や距離に応じた通勤手当、駐車場代の精算など、マイカー通勤ならではの事務作業が発生します。 - 環境負荷の増大
自家用車での通勤が増えるとCO₂排出量が増え、企業としての環境負荷が高まります。 - 駐車場の確保・管理
従業員用駐車場の確保、区画管理、近隣トラブル防止といった新たな課題が生じます。
会社はマイカー通勤をどこまで管理すべきか?
「マイカー通勤は従業員の私的な移動だから、会社は関係ない」と考えてしまうと、思わぬリスクを見落としてしまう可能性があります。
実際には、マイカー通勤を認める以上、企業には一定の「マイカー通勤管理」の責任が生じると考えられています。
マイカー通勤管理で押さえるべき基本
企業としては、少なくとも次のような点を整理し、ルール化しておくことが重要です。
- マイカー通勤の許可制
誰でも自由にマイカー通勤できるのではなく、事前申請・許可制にして条件を明確にします。 - 使用車両の条件設定
車検切れがないこと、任意保険(対人・対物無制限など)の加入条件、スタッドレスタイヤ装着時期などを定めます。 - 通勤経路の確認
通勤に使用する経路・距離を事前に申告させ、通勤手当の計算やリスク把握に活用します。 - マイカー通勤規程の整備
「マイカー通勤規程」や「通勤交通費規程」といった社内規程で、禁止事項・事故時の対応・報告義務などを明文化しておきます。
管理が不十分な場合のリスク
マイカー通勤管理が甘いと、次のようなリスクが高まります。
- 任意保険未加入・車検切れの車で通勤していたことが発覚し、企業の管理責任が問われる
- 過度な長距離通勤による疲労が原因で事故が発生し、「安全配慮義務違反」と指摘される
- 事故発生後の社内対応がバラバラで、被害者対応・社内外への説明に支障が出る
「どこまで管理するか」は企業ごとに判断が分かれますが、少なくとも車両の安全性・保険の加入状況・通勤経路といった基本情報は、会社として把握・管理しておくことが望ましいと言えます。
マイカー通勤中の事故と会社の賠償責任の考え方
次に、多くの担当者が気にされる「マイカー通勤中の事故で、会社に賠償責任が発生するのか?」という点について、一般的な考え方を整理します。
※ここではあくまで一般的な解説であり、最終的な判断は個別の事情や裁判所の判断によります。具体的な案件については弁護士など専門家への相談が必要です。
原則:通勤中は従業員の「私的行為」とされることが多い
通常、通勤は「会社の業務」そのものではなく、従業員が自宅と職場を行き来するための私的な行為と捉えられることが多いです。
そのため、一般論としては、
- マイカー通勤中の事故は、まずは本人や本人が加入している自動車保険で対応する
- ただちに自動的に会社に賠償責任が発生するわけではない
と考えられています。
例外:企業の関与が強い場合には責任が問われる可能性も
一方で、通勤の態様や企業側の関与の度合いによっては、企業の責任が問題になる場合もあります。例えば、次のようなケースです。
- 会社の指示により、特定のルート・経由地・送迎を義務付けていた
- 実態として「通勤」というより「業務の一部」に近い形でマイカーが使われていた
- 任意保険未加入・車検切れなど、安全確保の基本が守られていないことを会社が把握しながら放置していた
こうした場合には、「会社が運行を事実上支配・管理していた」「安全配慮義務を怠った」などとして、企業側の責任(使用者責任など)が争点となり得ます。
だからこそ「マイカー通勤管理」が重要
マイカー通勤中の事故で、企業の責任が問われるかどうかはケースバイケースですが、
- 事故発生時に「会社として、どこまで安全を確認し、どのようなルールを設けていたか」
- 管理体制や教育を「きちんと行っていた」と説明できるか
が重要なポイントになります。
その意味で、「マイカー通勤を認めるなら、一定のルールのもとで適切に管理する」ことが、企業を守るうえでも、従業員を守るうえでも欠かせないと言えます。
マイカー通勤管理を効率化するための具体的なポイント
ここからは、実務として「マイカー通勤 管理」をどう進めていくか、その具体的なポイントを整理します。
デジタルツールによる一元管理
紙やExcelでの管理は、次のような課題を生みがちです。
- 車検期限や保険満了日の管理漏れ
- 通勤距離や通勤手当の計算ミス
- 更新書類の回収漏れ・確認漏れ
そこで、クラウド型のマイカー通勤管理ツールなどを活用し、
- 通勤経路・距離・手当額の自動計算
- 車検・自賠責・任意保険の期限アラート
- 申請〜承認フローのオンライン化
といった仕組みを整えることで、担当者の負担を大幅に減らし、ヒューマンエラーを防ぐことができます。
従業員への定期的な教育と意識向上
マイカー通勤の安全性は、従業員一人ひとりの運転意識に大きく依存します。企業としては次のような取り組みが有効です。
- 年に1回以上の安全運転講習やeラーニングの実施
- 雪道・夜間運転・長距離通勤など、マイカー通勤特有のリスクを踏まえた教育
- 事故やヒヤリハット事例の共有と、再発防止策の周知
「事故を起こさないことが自分自身と家族を守ることにつながる」という意識を持ってもらうことが大切です。
運転状況のモニタリングとフィードバック
可能であれば、テレマティクスやドライブレコーダーなどを活用し、以下のようなデータをもとにした指導も検討できます。
- 急ブレーキ・急加速の多さ
- 制限速度を大きく超える運転がないか
- 深夜帯の連続運転など、リスクの高い運転パターン
こうしたデータに基づき、必要な従業員に個別フィードバックを行うことで、マイカー通勤時の事故リスクを継続的に下げていくことが可能です。
個人情報の安全な取り扱い
マイカー通勤管理では、次のような個人情報を扱うことになります。
- 自家用車の車両情報(ナンバー、車種など)
- 自宅住所・通勤経路
- 自動車保険証券の情報
これらを安全に管理するために、
- アクセス権限を必要最小限に絞る
- パスワード・アクセスログなどのセキュリティ対策を徹底する
- 廃棄時にデータを確実に削除する
といった体制整備も、「マイカー通勤 管理」の重要な要素です。
まとめ:マイカー通勤はリスクがたくさん。「どう管理するか」が重要なポイント。
- マイカー通勤は、従業員にとって大きなメリットがある一方で、企業にとっても事故リスクや管理業務の負担というデメリットがあります。
- 一般的には、マイカー通勤中の事故は従業員の私的行為として扱われることが多いものの、企業の関与の度合いや管理の状況によっては、企業側の責任が問題になる可能性もあります。
- だからこそ、マイカー通勤を認める企業には、ルールづくり・管理体制の整備・デジタルツールの活用・教育と意識向上といった「マイカー通勤管理」が求められます。
自社の現状を振り返りながら、「どこまで管理できているか」「どこにリスクやムダがあるか」を見直すきっかけとして、ぜひ本記事をお役立てください。