
この記事を読むと
- 手当の支給方法(km単価・定額)に応じた税務処理の違いの把握
- 実費精算の根拠となる走行記録の保存と単価算定ルールの明確化
- 事故時の使用者責任リスクに備えた利用条件や運用ルールの整備
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「従業員の自家用車を業務で使ってもらいたいが、車両手当はいくら支給すればよいのだろうか。」
「業務中に事故が起きた場合、会社にはどこまで責任があるのだろうか。」
このような悩みを抱える総務・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
自家用車の業務利用(借り上げ制度)は、社用車を保有するコストを抑えられる一方で、手当の決め方や税務処理、事故発生時の責任範囲など、事前に制度を整理しておくことが重要です。
この記事では、車両手当の相場から税務上の注意点、会社が自家用車の業務利用をはじめる上で押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
自家用車の業務利用(借り上げ制度)とは
従業員の自家用車を会社に関係する移動で利用する主な場面には、「マイカー通勤」と「自家用車の業務利用」の2つがあります。
| 制度 | 利用目的 |
| マイカー通勤 | 自宅と会社の通勤 |
| 自家用車の業務利用(借り上げ制度) | 営業・顧客訪問・現場移動など業務で利用 |
この記事で解説するのは、従業員の私有車を会社の業務で利用する「マイカー業務利用(借り上げ制度)」です。
自家用車の業務利用手当の相場
車両手当の金額について法令上の基準はありません。ただし実務では、従業員のマイカーを業務で利用する場合、多くの企業では次のいずれかの方法で手当を支給しています。
- 走行距離に応じて支給する「km単価方式」
- 毎月一定額を支給する「車両手当」
それぞれ特徴が異なるため、自社の運用方法に合わせて選択しましょう。
走行距離に応じて支給する(km単価方式)
業務で走行した距離に応じて手当を支給する方法です。
1kmあたりの単価は、ガソリン代に加え、オイル交換やタイヤなどの消耗品費を考慮して各企業が設定します。
例えば、ガソリン代のみを補填する場合は、資源エネルギー庁が公表している全国平均のガソリン価格と、自社で想定する平均燃費を基に算出できます。
- ガソリン価格:180円/L
- 燃費:15km/L
- 180円 ÷ 15km = 約12円/km
さらに、車検費用やタイヤ交換、オイル交換などの維持費も補填したい場合は、それらを加味して1kmあたりの単価を設定します。ガソリン価格は変動するため、半年〜1年ごとに単価を見直す企業もあります。

毎月一定額を支給する(車両手当方式)
走行距離にかかわらず、毎月一定額を支給する方法です。
車検費用や自動車税、任意保険料、タイヤ交換など、車両の維持費の一部を補填する目的で採用されます。ただし、定額で支給する車両手当は、税務上は給与として扱われるケースが一般的です。
通勤手当・業務利用手当・車両手当は税務上の扱いが異なる
自家用車に関する手当は、支給目的によって税務上の取り扱いが異なります。
特に混同しやすいのが、「通勤手当」「業務利用手当」「車両手当」の違いです。
| 支給内容 | 支給目的 | 税務上の取り扱い |
| 通勤手当 | 自宅から会社への通勤 | 一定額まで非課税 |
| 業務利用手当(実費精算) | 業務で利用した費用の補填 | 実費弁償として処理されることが多い |
| 車両手当(定額支給) | 車両維持費の補助 | 原則として給与(課税) |
適切な税務処理を行うためにも、それぞれの違いを理解しておきましょう。
自家用車の通勤手当には非課税限度額がある
自家用車の通勤手当は、一定の条件を満たす範囲で所得税が非課税となります。
非課税限度額は、国税庁が片道の通勤距離ごとに定めています。
| 片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
| 2キロメートル未満 | (全額課税) |
| 2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
| 10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,300円 |
| 15キロメートル以上25キロメートル未満 | 13,500円 |
| 25キロメートル以上35キロメートル未満 | 19,700円 |
| 35キロメートル以上45キロメートル未満 | 25,900円 |
| 45キロメートル以上55キロメートル未満 | 32,300円 |
| 55キロメートル以上65キロメートル未満 | 38,700円 |
| 65キロメートル以上75キロメートル未満 | 45,700円 |
| 75キロメートル以上85キロメートル未満 | 52,700円 |
| 85キロメートル以上95キロメートル未満 | 59,600円 |
| 95キロメートル以上 | 66,400円 |
この限度額を超えて支給した金額は、給与所得として課税対象になります。
また、一定の要件を満たす場合は、有料道路料金や駐車場代なども非課税として取り扱われるケースがあります。一方で、営業活動や顧客訪問など、業務で利用した走行距離を精算する「業務利用手当」には、この非課税限度額は適用されません。
業務利用手当を実費精算として運用するポイント
業務利用手当を実費精算として運用する場合は、支給額の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。
走行記録を残す
業務で利用した実績を証明できるよう、運行日報や走行記録を残しましょう。
最低でも、次の内容を記録しておくことをおすすめします。
- 利用日
- 訪問先
- 利用目的
- 走行距離
実費精算として適切に運用していることを説明できる体制を整えておくことが重要です。
単価の算定根拠を明確にする
km単価方式を採用する場合は、どのような考え方で単価を決めたのかを社内で整理しておきましょう。
例えば、
- ガソリン価格
- 想定燃費
- オイル交換やタイヤなどの維持費
を基に算出しておくことで、従業員にも説明しやすくなります。
また、ガソリン価格は変動するため、定期的に見直すルールを設けておくと、より公平な制度運用につながります。
定額の車両手当を支給する場合の注意点
毎月一定額の車両手当を支給する場合は、実際の走行距離や利用実績に関係なく支払われるため、一般的には給与として取り扱われます。
そのため、
- 所得税
- 社会保険料
- 労働基準法上の賃金としての取り扱い
なども踏まえて制度を設計する必要があります。
制度を導入する際は、給与として支給するのか、実費精算として運用するのかをあらかじめ整理しておくことが重要です。
自家用車の業務利用で会社が負うリスク
従業員の自家用車であっても、会社が業務利用を認めている場合は、事故が発生した際に会社も責任を問われる可能性があります。
民法第715条(使用者責任)では、従業員が業務中に第三者へ損害を与えた場合、会社が損害賠償責任を負うケースがあるためです。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
引用:民法 | e-Gov 法令検索
また、勤務時間中に社用車として管理している自家用車は、道路交通法上の管理対象となる場合があり、一定台数以上では安全運転管理者の選任やアルコールチェックなどの対応も必要になります。
こうしたリスクを踏まえ、自家用車の業務利用を認める際は、利用条件や手当の支給方法を明確にし、必要な書類や運用ルールを整備しておくことが重要です。
まとめ
自家用車業務利用(借り上げ制度)を導入する際は、手当の金額だけでなく、税務処理や保険、事故時の対応まで含めて制度設計することが重要です。特に、「通勤手当」「業務利用手当」「車両手当」は税務上の取り扱いが異なるため、それぞれの違いを理解したうえで、自社に合った支給方法を選びましょう。

